明光寺とは
明光寺(みょうこうじ)は、福岡県福岡市博多区吉塚三丁目にある曹洞宗の寺院で、境内に建つ江戸後期の禅堂と、大正13年(1924年)・大正15年(1926年)に鉄筋コンクリート造で建てられた本堂と霊屋の3棟が、令和3年(2021年)10月14日に登録有形文化財となった。
場所は博多駅の北東、直線でおよそ1.2キロのところにある。周囲は住宅が建て込む市街地で、明光寺は墓地を持つ檀家寺として今も法要が営まれている。寺の中には曹洞宗の九州管区教化センターも置かれている。教化センターは全国9か所にあり、管区ごとに布教の推進や教化の研究、資料の収集を担う機関である。
3棟がそろって登録されたことの面白さは、建てられた時代と材料の取り合わせにある。木造の禅堂は江戸時代にさかのぼり、本堂と霊屋は大正末に鉄筋コンクリートで、しかも寺院の伝統的な姿を写して建てられた。明光寺では、寺院建築が木からコンクリートへ移る境目を、ひとつの境内で見比べることができる。
明光寺の境内の配置
文化審議会の答申は、明光寺の境内を本堂を中心に説明している。
- 本堂は境内の中央に建ち、正面を南西に向ける。建築面積263平方メートルで、3棟のうちもっとも大きい。
- 霊屋は本堂の北西に並んで建つ。文化庁は位牌堂と説明している。
- 禅堂は本堂の西にあり、正面を南東に向ける。3棟のうち唯一の木造である。
データベースの座標で測ると、本堂から霊屋まではおよそ19メートル、本堂から禅堂まではおよそ27メートルで、3棟は互いに近い距離にまとまっている。本堂の正面に立ってから左手(北西)へ回り込むと、霊屋、禅堂の順に見ていける。
本堂と禅堂は向きが違う。本堂が南西を向くのに対し、禅堂は南東を向く。それぞれの正面を見るには、立つ位置を変える必要がある。
明光寺の移転と再建
明光寺は幕末には博多の町にあった寺で、勤王歌人として知られる野村望東尼(のむらぼうとうに)とも縁が深い。福岡市の紹介によると、望東尼は54歳で夫を亡くしたのち、博多の明光寺の住持、元亮巨導(げんりょうきょどう)禅師のもとで剃髪し、尼となった。
文化庁のデータベースは、禅堂を明治43年(1910年)に移築したと記している。福岡市も禅堂を明治末頃の移築としており、明光寺が現在の吉塚に境内を移したのもこの頃とみられる。江戸後期の禅堂は、移転後の明光寺でもっとも古い建物である。禅堂にはその後、大正5年(1916年)と昭和34年(1959年)頃に手が入っている。
その後、明光寺は火災に見舞われ、本堂と霊屋を失った。福岡市の文化財広報誌は、2棟が焼失後に火に強い建物として鉄筋コンクリート造で再建されたと伝えている。禅堂はこの火災を免れた。木造で残った禅堂と、コンクリートで建て直された2棟という今の明光寺の組み合わせは、この火災から生まれたものである。
明光寺の3件の登録
明光寺の本堂・霊屋・禅堂は、令和3年(2021年)7月16日の文化審議会答申を経て、同年10月14日の第100回登録で登録有形文化財となった。登録番号は本堂が40-0192、霊屋が40-0193、禅堂が40-0194の連番である。
登録基準は2つに分かれる。本堂と霊屋は「造形の規範となっているもの」で、伝統的な寺院の形を鉄筋コンクリートで再現した初期の例として評価された。文化庁の解説は本堂を、細部まで施工の精度が高い初期の鉄筋コンクリート造と書き、霊屋も本堂とともに初期コンクリート造のありさまを伝えるとしている。禅堂は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」で、境内に残る江戸後期の禅堂として貴重とされた。
本堂は平成22年(2010年)、霊屋は昭和37年(1962年)頃に改修を受けている。3棟とも明光寺の所有で、寺の日々の営みのなかで使われ続けている。
明光寺の見学と行き方
明光寺は観光寺院ではなく、拝観時間や拝観料は公表されていない。3棟の外観は境内から見ることができるが、墓参の人が行き来し、法要も営まれる場なので、静かに見て回りたい。堂内の公開についての案内は見当たらず、撮影の可否も示されていないため、堂内の見学や撮影を望む場合は事前に寺(電話092-621-2698)へ問い合わせるとよい。
電車で行く場合は、JR鹿児島本線の吉塚駅で降りる。地図サービスの案内では、吉塚駅東口から明光寺まで歩いて12分ほどである。博多駅からは北東へおよそ1.2キロ(直線距離)で、歩いても行ける。
駐車場の有無は案内によって記載が異なるため、車で訪れる場合は寺に確かめておきたい。
参考文献
- 国指定文化財等データベース 明光寺本堂(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00014114
- 国指定文化財等データベース 明光寺霊屋(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00014115
- 国指定文化財等データベース 明光寺禅堂(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00014116
- 文化遺産オンライン 明光寺本堂
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/520264
- 文化遺産オンライン 明光寺霊屋
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/553995
- 文化遺産オンライン 明光寺禅堂
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/583606
- 文化庁 文化審議会答申(令和3年7月16日)登録有形文化財(建造物)
- https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/pdf/93246101_01.pdf
- 福岡市の文化財 歴史の風 Vol.34(2021年8月)明光寺本堂・霊屋・禅堂
- https://bunkazai.city.fukuoka.lg.jp/files/NewsBlocks/d4646735-8d4f-46ce-95d4-140cf916f3bc/value01/NewsParagraph832fileja.pdf
- 福岡市の文化財 平尾山荘
- https://bunkazai.city.fukuoka.lg.jp/cultural_properties/detail/443
- 曹洞宗公式サイト 管区教化センター
- https://www.sotozen-net.or.jp/soto/system/kyokacenter
- 曹洞禅ナビ 明光寺
- https://sotozen-navi.com/detail/index_400001.html
最終更新日: 2026.10.05
基本情報
| 名称 | 明光寺 |
|---|---|
| 所在地 | 福岡県福岡市博多区吉塚三丁目347-2他 |
| 所有者 | 明光寺 |
| 指定 | 登録有形文化財 3件 |
| 座標 | 33.59944, 130.42767 |