鉄筋コンクリートの家と、その背後の土蔵
旧熊倉家住宅は、福島県伊達市梁川町にある個人住宅の建物で、江戸末期(1830年から1868年)と昭和前期(1926年から1945年)に建てられた2棟が令和元年(2019年)12月5日に登録有形文化財となった。現在の所有は伊達市である。
読みは「きゅうくまくらけじゅうたく」。登録されたのは主屋と土蔵造の2棟で、登録番号は07-0225と07-0226。伊達市にとっては市内で初めての国の登録有形文化財(建造物)にあたる。
建つのは梁川町の中心部である。主屋が表に立ち、その東の背面に土蔵が建つ。同じ屋敷のなかに、100年近く年代の離れた2棟が並んでいる。
地方に届いた洋風意匠
主屋は鉄筋コンクリート造の2階建で、一部が3階建になる。建築面積は120平方メートル。3階には展望室を備える。昭和前期に、東京や大阪ではなく地方の町の個人住宅が鉄筋コンクリートで建てられたこと自体が珍しい。
外観はドイツ壁仕上で、装飾は抑えられている。洋風の意匠が使われるのは玄関とベランダに限られ、それ以外は簡素なままである。内部は和室を基本とし、玄関回りにだけ洋室を配する。外も内も、洋風が入るのは人を迎える部分に限られている。
この主屋が登録された基準は「再現することが容易でないもの」である。3つある登録基準のうち、地方における洋風意匠の展開を示す例として、この一点が選ばれている。
土蔵の基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」で、主屋とは異なる。1つの屋敷のなかで、建物ごとに違う理由で登録されている点は、この住宅の性格をよく表している。
鉢巻を二段に廻す土蔵
旧熊倉家住宅の土蔵は江戸末期のもので、主屋より90年ほど古い。土蔵造2階建、東西棟の切妻造桟瓦葺で、西の正面に下屋を付す。建築面積は45平方メートル。
外壁は漆喰塗で、鉢巻を二段に廻す。垂木まで塗り込めた丁寧なつくりで、手を抜いていない蔵であることが外から分かる。2階西面の開口部まわりは黒漆喰塗として、白い壁面のなかで一箇所だけ引き締めている。
この土蔵があることで、主屋の見え方も変わる。鉄筋コンクリートの新しい家が、江戸時代からの屋敷地の上に建て替えられたものだと分かるからである。文化庁は土蔵について、地方有力者の屋敷地の構えを引き立てる、と記す。
見学と行き方
旧熊倉家住宅は伊達市が所有している。令和元年(2019年)の文化審議会の答申資料では、市の所有となり今後公開に向けて整備する予定と記されていた。その後の公開の状況は資料で確認できていないため、見学を希望する場合は伊達市に問い合わせてほしい。
外観は梁川町の中心部の街路から見える。主屋の玄関とベランダに入る洋風の意匠、その背後に見える土蔵の屋根が、通りから確かめられる部分である。撮影は公道からであれば制限はない。
所在地は福島県伊達市梁川町字右城町48。JR東北本線の福島駅方面から阿武隈急行で梁川駅へ向かうのが分かりやすい。
この情報は2026年9月17日に確認した。
参考文献
- 国指定文化財等データベース 旧熊倉家住宅主屋(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00013032
- 国指定文化財等データベース 旧熊倉家住宅土蔵(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00013033
- 登録有形文化財(建造物)の登録について 令和元年7月19日(文化庁)
- https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/pdf/91972801_01.pdf
- 旧熊倉家住宅が登録文化財へ(伊達市)
- https://www.city.fukushima-date.lg.jp/soshiki/5/35392.html
最終更新日: 2026.09.17
基本情報
| 名称 | 旧熊倉家住宅 |
|---|---|
| 所在地 | 福島県伊達市梁川町字右城町48 |
| 所有者 | 伊達市 |
| 指定 | 登録有形文化財 2件 |
| 座標 | 37.85701, 140.60803 |