川上の渓流に築かれた石積みの堰堤

二ヶ滝第一砂防堰堤は、岐阜県中津川市川上地内の渓流に築かれた昭和24年(1949年)の石造堰堤で、平成18年(2006年)に国の登録有形文化財に登録された。位置は市の南部を流れる中津川支川・正ヶ根谷の右支、二ヶ滝である。

砂防堰堤は、水をためる施設ではない。せき止めるのは土砂である。急峻な斜面と風化した花崗岩、そして夏の集中豪雨。この三つがそろう渓流では、雨のたびに礫や巨石が谷を駆け下る。堰堤の背後に土砂が満ちれば上流側の河床勾配はゆるみ、流れが谷を削る力そのものが落ちる。満砂した堰堤は失敗ではなく、機能している状態を指す。

登録の理由は「積み方」にある

規模は大きくない。堤長26メートル、堤高5メートル。自重で土砂圧に抗する重力式で、上流側の法勾配は五分、下流側は四分とする。

注目すべきは石の積み方だ。表面は谷積、すなわち切石を斜めに据えて目地が斜格子を描く積み方で仕上げられている。さらに珍しいのは、その切石が空積であることだ。目地にモルタルを入れていない。水は石と石のすきまを抜けていき、構造体は摩擦と石の噛み合いだけで立っている。

切石の空積による砂防堰堤は、全国的にも類例が少ない。登録基準に「再現することが容易でないもの」が適用されたのは、この一点に尽きる。設計図があれば再現できる種類の技術ではなく、一石ごとに据えた石工の手の記憶に属する技術だからである。

着工を昭和17年(1942年)、完成を昭和24年とする資料もある。事実であれば工事は戦中戦後をまたいだことになるが、文化庁のデータベースは年代を昭和24年と記すのみで、着工年は記載していない。ここでは参考情報として扱う。

訪ねる前に知っておきたいこと

見学施設ではない。所有は国(国土交通省)で、堰堤は現在も土砂災害を防ぐ現役の施設として機能している。入場料も受付も解説板も、堰堤に付属する駐車場もない。訪ねるつもりなら、観光ではなく山歩きとして準備したほうがよい。林道と、水の流れている渓流沿いの不整地を歩くことになる。

川上地区は標高およそ700メートル。中央自動車道の中津川インターチェンジから車で約35分、公共交通ならJR中央線の坂下駅から北恵那交通の夕森線バスで向かう。この一帯を訪れる人の多くは、竜神の滝を含む夕森渓谷を目当てにしている。こちらは遊歩道が整備され、道標もある。堰堤まで足を延ばす場合は、中津川市の観光担当窓口などで林道の通行状況を事前に確認しておきたい。大雨のあとや積雪期には通行止めになる。

屋外の公共構造物であるため、撮影に制限はない。狙うなら晩秋である。夕森の紅葉は10月下旬から11月中旬が見頃で、濡れた落葉の下に沈む灰色の切石は、夏の直射光の下で見るよりずっと表情がある。

砂防そのものを学びたい人には、県の西端にあたる海津市の「さぼう遊学館」もある。重要文化財の羽根谷砂防堰堤2基に隣接する施設で、入場無料、事前予約をすれば専門家の解説を聞くこともできる。

Q&A

Q二ヶ滝第一砂防堰堤はどこにありますか。
A二ヶ滝第一砂防堰堤は岐阜県中津川市川上地内にあります。中津川支川である正ヶ根谷の右支・二ヶ滝に位置し、中央自動車道の中津川インターチェンジから車でおよそ35分の山間部です。
Q二ヶ滝第一砂防堰堤は見学できますか。入場料は必要ですか。
A二ヶ滝第一砂防堰堤は現役の砂防施設で、観光用の施設ではありません。入場料や受付はありませんが、遊歩道も案内標識も駐車場も整備されていません。林道や渓流沿いの不整地を歩く必要があり、大雨のあとや冬季は通行できないことがあります。
Q二ヶ滝第一砂防堰堤のどこが技術的に珍しいのですか。
A二ヶ滝第一砂防堰堤は切石を空積、つまり目地にモルタルを用いずに積み上げた石造堰堤で、表面は谷積で仕上げられています。この構造形式は砂防堰堤としては全国的に類例が少なく、登録の直接の理由になりました。
Q二ヶ滝第一砂防堰堤の規模はどのくらいですか。
A二ヶ滝第一砂防堰堤は堤長26メートル、堤高5.0メートルです。自重で土砂圧を支える重力式で、上流側の法勾配は五分、下流側は四分となっています。
Q二ヶ滝第一砂防堰堤はいつ造られ、いつ登録されたのですか。
A文化庁のデータベースは二ヶ滝第一砂防堰堤の年代を昭和24年(1949年)としています。登録有形文化財への登録は平成18年(2006年)10月18日で、登録番号は21-0104です。着工を昭和17年とする二次資料もあります。

基本情報

名称二ヶ滝第一砂防堰堤(にがたきだいいちさぼうえんてい)
所在地岐阜県中津川市川上地内
指定区分登録有形文化財(建造物) 登録番号21-0104
指定年平成18年(2006年)10月18日登録
員数1基
寸法重力式石造堰堤、堤長26メートル、堤高5.0メートル(年代・昭和24年)
所有者国(国土交通省)
公開状況現役の砂防施設。見学施設・入場料はなく、林道からの接近となる

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「二ヶ滝第一砂防堰堤」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005864
文化遺産オンライン「二ヶ滝第一砂防堰堤」
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/190590
岐阜県 砂防課「登録有形文化財」
https://www.pref.gifu.lg.jp/shakai-kiban/kasen/sabo/11653/bunkazai.html
中津川市「川上地区観光情報」
https://www.city.nakatsugawa.lg.jp/soshikikarasagasu/kawaue/kanko/1333.html

最終更新日: 2026.08.06