八ツ三館大広間棟:飛騨の匠が生んだ壮麗な百畳の間
岐阜県飛騨市古川町、荒城川のほとりに佇む老舗料亭旅館「八ツ三館」。その一角を成す大広間棟は、昭和10年(1935年)に建てられた木造2階建ての建築物です。2階に設けられた畳廊下を含む100畳もの大広間は、大床・違棚・付書院を備え、飛騨の匠による良質な材と卓越した技が織りなす格調高い空間として知られています。平成19年(2007年)10月2日、国の登録有形文化財(建造物)に登録されました。
歴史的背景
八ツ三館の歴史は江戸時代末期の安政年間に遡ります。越中八尾(現・富山県富山市八尾町)出身の初代三五郎が飛騨古川の地に移り住み、宿を営んだのが始まりです。出身地の「八」と名前の「三」を取って「八ツ三館」と名付けられました。当初は米屋から商人宿として発展し、やがて料亭を併設、現在の料亭旅館としての形へと変遷を遂げてきました。
明治37年(1904年)の古川大火により建物は焼失しましたが、翌明治38年(1905年)に本館が再建されました。その後、昭和10年(1935年)に大広間棟が増築され、宴会や婚礼など大規模な催事にも対応できる施設として整備されました。本館・大広間棟・土蔵の3棟は、いずれも平成19年に国の登録有形文化財に指定されています。
文化財としての価値
大広間棟は、本館の後方に南北棟として建つ入母屋造桟瓦葺の2階建て建築です。荒城川沿いに玄関を設け、1階には応接間や数室の和室を配し、2階に壮大な大広間を設けています。建築面積は283平方メートルに及びます。
特筆すべきは2階の大広間です。畳廊下を含めて100畳という圧倒的な広さを持ち、大床(おおどこ)・違棚(ちがいだな)・付書院(つけしょいん)といった書院造の格式高い意匠を備えています。使用されている材木は良質なものが厳選されており、飛騨の大工たちの高い技術力によって上質な空間が造り出されています。昭和初期の旅館建築として、飛騨地方の伝統的な木造建築技術を今に伝える貴重な存在です。
見どころ
大広間棟の最大の見どころは、やはり2階の百畳大広間です。書院造の格式ある装飾と、飛騨の匠による繊細な木工技術が随所に見られます。床の間の構成、棚の意匠、障子や欄間の細工など、一つひとつに職人の美意識が宿っています。
また、八ツ三館全体として、本館の吹抜けホールや各客室ごとに異なるデザインも大きな魅力です。明治38年築の本館「招月楼」は飛騨の商家造りの粋を集めた建物で、箱階段や飛騨春慶の和箪笥など、当時の調度品が今も大切に使われています。小説『あゝ野麦峠』の舞台としても知られ、歴史の深みを感じることができます。
宿泊と料理
八ツ三館は現在も料亭旅館として営業しており、文化財建築の中での宿泊体験が可能です。客室は招月楼(明治38年造・商家造り)、光月楼(昭和初期造・数寄屋造り)、観月楼(平成9年造・現代和室)の3棟に分かれ、それぞれ異なる趣を楽しめます。全18室の客室はすべて庭に面しています。
夕食は地元飛騨の食材をふんだんに使った月替わりの会席料理。飛騨牛、宮川の川魚、山の幸、日本海直送の海の幸など、四季折々の味覚を個室料亭でいただけます。大浴場には飛騨市内の流葉温泉から運んだアルカリ性単純温泉が注がれ、肌触り滑らかな美肌の湯を堪能できます。
周辺情報
飛騨古川は「高山の奥座敷」と称される静かな城下町です。白壁土蔵の町並みと瀬戸川に泳ぐ鯉の風景は、飛騨地方を代表する景観として親しまれています。八ツ三館から徒歩圏内には、飛騨古川まつり会館、和ろうそくの老舗「三嶋和ろうそく店」、複数の地酒蔵元などがあります。
毎年4月19日・20日に行われる古川祭は、起し太鼓と屋台行列で知られるユネスコ無形文化遺産登録の祭礼です。冬には1月15日の三寺まいりが幻想的な雰囲気を醸し出します。また、映画『君の名は。』の聖地としても注目を集め、国内外から多くのファンが訪れています。
Q&A
- 大広間棟の内部は宿泊しなくても見学できますか?
- 大広間棟は八ツ三館の営業施設の一部です。内部をご覧いただくには宿泊または日帰り夕食プランのご利用をお勧めいたします。外観は荒城川沿いからご覧いただけます。
- 八ツ三館へのアクセス方法を教えてください。
- JR高山本線「飛騨古川駅」より徒歩約6分です。お車の場合は東海北陸自動車道「飛騨清見IC」より卯の花街道経由で約25分です。駅からの送迎サービスもあります。
- 八ツ三館には大広間棟以外にも文化財がありますか?
- はい。大広間棟(昭和10年築)のほか、本館(明治38年築)と土蔵も国の登録有形文化財に登録されており、いずれも平成19年に指定を受けています。
- 飛騨古川を訪れるのに最適な季節はいつですか?
- 四季それぞれに魅力があります。春は桜と古川祭(4月19〜20日)、夏はホタル観賞、秋は紅葉、冬は雪景色と三寺まいり(1月15日)が楽しめます。
- 大広間の「百畳」とはどのくらいの広さですか?
- 100畳は約165平方メートルに相当します。畳廊下を含めた広さで、大規模な宴会や婚礼にも対応できる壮大な空間です。
基本情報
| 名称 | 八ツ三館大広間棟(やつさんかんおおひろまとう) |
|---|---|
| 文化財種別 | 国登録有形文化財(建造物) |
| 建築年 | 昭和10年(1935年) |
| 登録年月日 | 平成19年(2007年)10月2日 |
| 構造 | 木造2階建、瓦葺、建築面積283㎡ |
| 建築様式 | 入母屋造桟瓦葺 |
| 所在地 | 〒509-4241 岐阜県飛騨市古川町向町1-8-33 |
| アクセス | JR高山本線 飛騨古川駅より徒歩約6分 |
| 公式サイト | https://823kan.com/ |
参考文献
- 八ツ三館大広間棟 - 文化遺産オンライン
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/182596
- 八ツ三館本館 - 文化遺産オンライン
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/119254
- 【公式】飛騨古川 八ツ三館
- https://823kan.com/
- 飛騨古川「八ツ三館」宿泊体験記 - 岐阜の旅ガイド
- https://www.kankou-gifu.jp/blog/detail_289.html
- 八ツ三館 - 飛騨市公式観光サイト「飛騨の旅」
- https://www.hida-kankou.jp/reserve/467
最終更新日: 2026.04.10