郷士とは
郷士は、江戸時代に、城下町ではなく農村に住みながら武士の身分を認められた者をいう。江戸時代の武士は城下町に住むのが原則だったが、それとは別に、農村に住んで農業を営みつつ武士としての身分や役目をもつ者が各地にいた。その成り立ちや待遇は藩によって大きく異なり、土佐藩や薩摩藩の郷士がよく知られる。
郷士は、正規の武士より一段低い身分とされることが多い一方で、農民より上位にあり、村の支配の要となることもあった。その住宅は、農家としての土間や作業の場をもちながら、座敷や式台など武家らしい接客の構えを備えることが多い。
記録と実物で見分ける手がかり
記録では「郷士住宅」「郷士の屋敷」のように、家の由緒を示す語として書かれる。高知県安芸市の岩村家住宅(旧黒岩家住宅)主屋は、用水が廻る前島集落の中央部に建つ旧家の主屋で、南面の下屋中央を玄関とし、東西に内縁を付け、玄関の東の六畳座敷に床構えを設けるなどの構成をもつ。記録はこの建物を、近世末期の郷士住宅の佇まいを伝えるものとしている。
記事で「郷士」と書くときは、どの藩の制度のもとでの郷士か、また記録や家の資料がどのように由緒を伝えているかを確かめたい。郷士の身分の内容は藩ごとに異なり、一般化しにくい。
参考文献
- 岩村家住宅(旧黒岩家住宅)主屋|国指定文化財等データベース(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00015095
最終更新: 2026.09.26