犬矢来とは

犬矢来は、町家の外壁や塀の足元に、道路側へゆるく湾曲させて立て掛ける柵である。割竹や細い竹を並べて曲げたものが多く、木でつくるものもある。雨の跳ね返りや泥はねから壁の裾を守り、人や動物が壁に触れて傷めるのを防ぐとされる。名前は、犬が近寄ったり小便をかけたりするのを防ぐことに由来するといわれる。

京都をはじめ、町家の並ぶ町で多く見られ、足元に連なる曲線が通りに陰影をつくる。近い部材に駒寄せがあり、こちらは出格子や壁の前に垂直の柱や格子を立てて囲う低い柵を指すことが多い。犬矢来は壁に沿って湾曲させる点で区別される。

記録と実物で見分ける手がかり

記録では、塀や建物の足元の構えとして書かれる。大阪府泉大津市の田中家住宅(助松本陣)の築地塀は、表門の東北隅から旧紀州街道沿いに延長51メートルに及ぶ塀で、足元には街道沿いの全面にわたって犬矢来を設置して景観を整えると記録される。塀そのものだけでなく、足元の犬矢来も街道の景観の一部として評価されている。

犬矢来は傷みやすく、取り替えられていることが多い。現地では、壁の裾に沿って曲線を描く竹や木の柵があるかを見る。材料が新しくても、同じ形が保たれていれば、表構えの意匠が受け継がれていると考えてよい。

参考文献

田中家住宅築地塀|国指定文化財等データベース(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00006688

最終更新: 2026.09.27