空積とは

空積は、モルタルなどの接合材を用いず、石を噛み合わせるだけで積む工法である。石の重さと形の噛み合いだけで安定させる。

水を通すため、砂防堰堤や護岸に用いられる。石川県の甚之助谷第二号谷止工は大正4年の築造で、「白山砂防施設の最初期に石川県の直轄事業として施工された谷止工のひとつで、堤長13.3メートル堤高5.5メートルを測り、空積とする。標高2100メートルの高地にあって、現地で採取・加工された石を用いて精緻に積上げる」と解説されている。

高地では資材の運搬が難しく、現地の石を使うほかない。接合材を使わない工法は、そうした条件と結び付いている。

愛媛県の井口四番浜南丸樋は江戸末期の築造で、「花崗岩を用いた延長12メートル、上幅0.9メートルの空積構造物。法勾配をもたせた下部を谷積状に積み、ほぼ垂直に積んだ上部を布積風に築く」と解説されている。

練積との対比

対になるのが練積で、モルタルなどで石を固めて積む工法を指す。強度は高いが水を通さない。

後年の補強で置き換わる例がある。新潟県の万内川三号堰堤は大正11年頃の築造で、「三号堰堤は、当初空積の堤体を昭和初期に練積で補強しており、右岸側堤長を長くとるのが特徴」と解説されている。当初の工法と現在の状態が違うため、記録は両方を書き分けている。

大阪府の天野川砂防堰堤は明治30年頃の築造で、「川の狭窄部を利用して築かれた間知石谷積の石造建造物」と解説されている。間知石は四角錐状に加工した石、谷積は石を斜めに並べる積み方を指す。空積と練積の別は、この加工や配列とは別の軸である。

現地では目地を見るとよい。石と石の間に隙間が見え、奥まで通っていれば空積である。目地がモルタルで埋まっていれば練積にあたる。ただし後年の補修で目地だけ詰められている場合もあるので、記録と併せて判断したい。

参考文献

文化庁 文化財の紹介 登録有形文化財(建造物)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/toroku_yukei.html
国指定文化財等データベース(文化庁)甚之助谷第二号谷止工/堤長13.3メートル堤高5.5メートル、空積とする
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00009145
国指定文化財等データベース(文化庁)井口四番浜南丸樋/空積構造物、下部を谷積状に積み、上部を布積風に築く
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003152
国指定文化財等データベース(文化庁)万内川三号堰堤/当初空積の堤体を昭和初期に練積で補強
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003213
国指定文化財等データベース(文化庁)天野川砂防堰堤/川の狭窄部を利用して築かれた間知石谷積の石造建造物
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003123

最終更新: 2026.09.10