国領川を望む石積みの階段

山根競技場観覧席は、愛媛県新居浜市角野新田町にある石造の階段状観覧席で、昭和3年(1928年)に築かれ、平成21年(2009年)に登録有形文化財となった。競技場の南側に沿って延長約170メートル、最大27段の石段が続き、西端では緩やかに湾曲する。

接着材は使っていない。丸みを帯びた玉石を一つずつ噛み合わせ、石の重さと摩擦だけで積み上げる空石積である。背後は山の斜面が迫っており、観客を支えるこの壁がそのまま斜面を受け止める擁壁を兼ねている。

競技場は国領川に面し、別子銅山の歴史と切り離せない。昭和2年(1927年)に住友別子鉱山の最高責任者となった鷲尾勘解治は、銅山が尽きたあとの新居浜をどうするかを考え、都市計画に着手した。本格的な陸上競技のできるグラウンドはその一環で、工事は住友各社の社員が休日に行う「作務」と呼ばれる奉仕作業でまかなわれた。完成後の秋の運動会には、数万人が集まったという。

山根競技場観覧席が登録された理由

文化庁は平成21年(2009年)8月7日、「国土の歴史的景観に寄与しているもの」という基準で山根競技場観覧席を登録した。登録上は建築物ではなくその他の工作物に分類される1基で、面積は4319平方メートル。昭和62年(1987年)に改修の手が入っている。

ふつうの運動施設と違うのは、誰が何のために築いたかにある。昭和初期の日本で、これだけの規模の福利厚生施設を企業が用意する例は多くない。しかも施工したのは請負業者ではなく鉱山で働く社員自身だった。新居浜には別子銅山の産業遺構が数多く残るが、生産設備や鉄道に比べ、働く人々の余暇の場が原寸のまま残る例は少ない。登録有形文化財は現状を変更する際に届出が必要な制度であり、市が石積みの取り扱いに注意を促しているのもそのためである。

石を見るための視点

山根競技場観覧席の東端に立ち、段の面に沿って視線を送ってみたい。線はまっすぐではなく、向こう端の手前でふくらむように曲がる。その曲がりのおかげで、長い一続きの石段が一望におさまる。近づけば印象は変わる。玉石の大きさはまちまちで、荷重のかかる下段ほど大きな石が置かれ、積んでから経った年月のぶんだけ目地の開いた箇所も見つかる。

踏面は広く、蹴上げは低い。登るためではなく座るための寸法である。上段の背後には草が入り込んでいる。最上段まで上がると、楕円のグラウンド全体と、その向こうに旧別子の山並みが見渡せる。

祭りの日の観覧席

毎年10月、このグラウンドは新居浜太鼓祭りで最大の集合行事の舞台になる。10月17日の午後1時から午後5時にかけて、大人の太鼓台20台と子供太鼓台1台が集まり、山根競技場観覧席は本来の役割どおり見物席として使われる。新居浜市は10月16日午後6時より前の場所取りを禁じており、シートを釘で留めることや、置石として石積みの石を抜き取ることをやめるよう呼びかけている。

山根競技場観覧席の見学方法

山根競技場観覧席は山根公園の中にあり、新居浜市が終日開放している。入場料はかからない。受付も休園日も公開時期の制限もなく、撮影も自由である。グラウンドは地域の運動行事に日常的に使われているので、利用者がいるときは譲りたい。

JR新居浜駅からは、せとうちバスのマイントピア別子行きで約15分、山根市民グランドで降りて徒歩約3分。バスの便は1〜2時間に1本程度なので、出発前に時刻を確認しておきたい。タクシーなら駅から約10分である。

グラウンドのすぐ隣、大山積神社の境内には別子銅山記念館があり、入館は無料。記念館で銅山の歩みを見てから石段まで歩くと、鉱山とこの石積みのつながりが自然に理解できる。

Q&A

Q山根競技場観覧席は見学できますか。料金や公開時間は?
A見学できます。山根公園内にあり、終日開放で入場料は不要です。予約や許可も要りません。
QJR新居浜駅から山根競技場観覧席へはどう行きますか?
Aせとうちバスのマイントピア別子行きに乗り、約15分の山根市民グランドで下車して徒歩約3分です。便数は1〜2時間に1本程度。タクシーでは約10分です。
Q山根競技場観覧席は誰がいつ造ったのですか?
A住友別子鉱山の社員が休日の奉仕作業「作務」として、昭和3年(1928年)に築きました。昭和2年(1927年)に同社の最高責任者となった鷲尾勘解治が進めた事業です。
Q山根競技場観覧席から新居浜太鼓祭りを見られますか?
A見られます。太鼓台が集まる行事は10月17日の午後に行われます。新居浜市は10月16日午後6時より前の場所取りを認めていません。
Q山根競技場観覧席の石段に座ったり、写真を撮ったりしてもよいですか?
A座ることも撮影も問題ありません。ただし石に釘を打つ、シートを固定する、石を抜き取るといった行為は避けてください。接着材を使わない空石積のため、石が一つ動くだけで積み方が崩れます。

基本情報

名称山根競技場観覧席
所在地愛媛県新居浜市角野新田町3-2822-9ほか
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成21年(2009年)登録
員数1基
寸法石造、面積4319平方メートル、延長約170メートル、最大27段
所有者新居浜市
公開状況山根公園内、終日見学可、無料

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「山根競技場観覧席」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00007811
文化遺産オンライン「山根競技場観覧席」
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/173112
新居浜市別子銅山文化遺産課「新たな登録有形文化財(1) 山根競技場観覧席」
https://www.city.niihama.lg.jp/soshiki/dozan/torokuyamanegrand.html
新居浜市観光物産課「守ろう貴重な産業遺産「山根グラウンド観覧席」」
https://www.city.niihama.lg.jp/soshiki/kankou/yamanekanranseki.html
別子銅山記念館「ご利用案内・お問い合わせ」
https://besshidozan-museum.jp/guide/

最終更新日: 2026.09.06