鉱滓煉瓦とは
鉱滓煉瓦は、製鉄の過程で出る鉱滓(スラグ)を主な原料にした煉瓦である。粘土を窯で焼いてつくる普通の赤煉瓦と違い、焼成しない煉瓦で、科学研究費の研究課題の概要は、石炭灰を主原料とする炭滓煉瓦とともに、明治・大正・昭和の日本で普及した無焼成煉瓦と位置づけている。同じ研究では、官営八幡製鐵所や釜石製鐵所での製造技術の調査が進められている。
色は赤煉瓦と大きく異なる。福岡県大川市の旧吉原家住宅の煉瓦塀(大正末期)は、文化庁の解説で「灰褐色の鉱滓煉瓦積」と記されている。灰色がかった落ち着いた色が見分けの第一の手がかりになる。
北九州市門司区の旧サッポロビール九州工場事務所棟(大正2年)について、北九州市は今日では現存例の少ない鉱滓レンガを使用した建築と紹介し、文化庁も鉱滓煉瓦の使用を特色に挙げている。
記録での書かれ方と見るときの手がかり
構造欄には「煉瓦造」とだけあり、鉱滓煉瓦であることは解説文で示されることが多い。大分県中津市の久恒家住宅給水塔(大正13年)は構造欄が「煉瓦造、高さ7.6m」で、解説文に「壁体は鉱滓煉瓦の1枚積」とある。記事で鉱滓煉瓦と書くときは、解説文など根拠のある記述に拠る。
使われ方は、事務所や倉庫の壁体、屋敷の塀、給水塔など幅広い。長崎県川棚町の旧佐世保海軍工廠川棚魚雷遠距離発射場機械室及び水雷調整室では、下部の石造の上に昭和14年の増築で鉱滓煉瓦の壁を積み上げている。
現地では、色に加えて表面の質感を見るとよい。焼いた赤煉瓦の均一な赤に対し、鉱滓煉瓦は灰色から灰褐色で、骨材の粒が見えることがある。積み方は普通の煉瓦と同じく、イギリス積など煉瓦造の用語で記録される。
参考文献
- KAKEN 科学研究費助成事業 研究課題 23K26249(炭滓・鉱滓煉瓦の製造技術の復元)
- https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-23K26249
- 国指定文化財等データベース(文化庁)旧サッポロビール九州工場事務所棟
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00006284
- 北九州市 旧サッポロビール九州工場 事務所棟
- https://www.city.kitakyushu.lg.jp/contents/02100275.html
- 国指定文化財等データベース(文化庁)旧吉原家住宅通用門及び煉瓦塀
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00011586
- 国指定文化財等データベース(文化庁)久恒家住宅給水塔
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002337
- 国指定文化財等データベース(文化庁)旧佐世保海軍工廠川棚魚雷遠距離発射場機械室及び水雷調整室
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00015108
最終更新: 2026.10.04