イギリス積とは

イギリス積は、長手だけの段と小口だけの段を交互に積む煉瓦の積み方である。長手は煉瓦の長い面、小口は短い端面を指す。小口の段では煉瓦が壁の厚み方向を貫くため、壁が一体となって強度を得る。

壁体に広く用いられる。北海道の柳田家住宅旧りんご蔵は大正後期の建築で、「街路に北面して建つ桁行7.2メートル梁間5.5メートル煉瓦造二階建、切妻造桟瓦葺で…外壁はイギリス積で軒蛇腹は歯飾りとする。草創期の煉瓦造りんご貯蔵庫」と解説されている。

厚い壁を要する建物では特に効く。北海道の博物館網走監獄煉瓦造独居房は明治45年の建築で、「煉瓦造平屋建、切妻造桟瓦葺、桁行3.74メートル梁間2.83メートル。壁は厚さ0.4メートルのイギリス積とし、正背面に出入口を開ける」と解説されている。

愛知県の旧堀田廣之家住宅煉瓦塀は明治45年の建築で、「延長19メートル、高さ2.4メートル、煉瓦造で、イギリス積とする。2メートル毎に、敷地内側へ柱型を突出させて控えとし、上部には蛇腹状に煉瓦を迫り出して装飾とする」と解説されている。

フランス積・長手積との違い

同じ壁でも積み方が変わることがある。北海道の高龍寺防火塀は明治43年の築造で、「境内の東面及び北面西側を画す煉瓦塀。北面西側塀はフランス積とし、延長約104メートル、高さ約3メートル。東面塀は延長約50メートル、高さ約7メートル、イギリス積とする。延焼を防止するため設けられた、大火が頻発した近代函館を象徴する遺構である」と解説されている。一つの塀で二つの積み方を使い分けている。

フランス積は一段のなかに長手と小口を交互に並べる積み方で、段ごとに分けるイギリス積とは見え方が違う。熊本県の佐敷隧道は明治36年の築造で、「両端坑門の壁面をフランス積、楯状迫石、笠石、帯石、ピラスターを江戸切仕上げの石材で積む」と解説されている。

曲面には長手積が向く。隧道の覆工アーチのように曲率に追従させる必要がある部分では、長手だけを見せる積み方が選ばれる。平らな壁体にはイギリス積、曲面には長手積という使い分けになる。

現地では煉瓦の見え方を段ごとに数えるとよい。長い面ばかりの段と短い面ばかりの段が交互に現れればイギリス積、一段のなかで長短が交互に並べばフランス積、長い面だけが続けば長手積である。

参考文献

文化庁 文化財の紹介 登録有形文化財(建造物)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/toroku_yukei.html
国指定文化財等データベース(文化庁)柳田家住宅旧りんご蔵/外壁はイギリス積で軒蛇腹は歯飾りとする
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00009249
国指定文化財等データベース(文化庁)博物館網走監獄煉瓦造独居房/壁は厚さ0.4メートルのイギリス積とする
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00009251
国指定文化財等データベース(文化庁)旧堀田廣之家住宅煉瓦塀/延長19メートル、煉瓦造でイギリス積とする
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00011321
国指定文化財等データベース(文化庁)高龍寺防火塀/北面西側塀はフランス積、東面塀はイギリス積とする
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00009104
国指定文化財等データベース(文化庁)佐敷隧道/坑門の迫石、笠石、帯石、ピラスターを江戸切仕上げの石材で積む
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003016

最終更新: 2026.09.11