戸袋とは
戸袋は、雨戸を引き込んで納める箱状の部分である。開口の端に設け、戸を重ねて収める。昼間は戸をすべて戸袋に納め、正面を開け放つことができる。
見世蔵の正面に用いられる。茨城県の中村家住宅見世蔵は大正2年の建築で、「正面は下屋庇を設け、西端に戸袋を設けただけの開放的な構えとし、2階は観音扉付の窓をつけ、漆喰塗の外壁を簓子下見板張で覆う」と解説されている。
この記述で注目したいのは、戸袋が「設けただけ」と書かれている点である。正面のうち戸袋の占める部分を除けば全面が開くという意味で、戸袋こそが開放性を成り立たせている。
近代の店舗にも受け継がれる。茨城県の小林商店店舗は昭和3年の建築で、「帳場とL字型土間からなる店構えを含め、伝統的な形式を継承し、ガラス戸や戸袋などに昭和初期の意匠が伺える」と解説されている。建具がガラス戸に変わっても戸袋は残る。
見る位置
正面の端を見るとよい。開口の並びの端に、戸一枚分より少し厚い板張りの箱があれば戸袋である。妻側や側面に回ると、戸を出し入れするための開きが見える。
外観の意匠として扱われることもある。板張り、漆喰塗、鏡板を張ったものなど仕上げに幅があり、町家では正面の一部として意匠が整えられる。
戸袋がない開口では、雨戸を別の場所に保管するか、建具を引き違いのまま残すことになる。蔀戸のように上へ跳ね上げる建具や、舞良戸のように引き違いにする建具は、戸袋を必要としない。
参考文献
- 文化庁 文化財の紹介 登録有形文化財(建造物)
- https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/toroku_yukei.html
- 国指定文化財等データベース(文化庁)中村家住宅見世蔵/木造2階建、切妻造、平入、桟瓦葺、西端に戸袋を設けただけの開放的な構え
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003372
- 国指定文化財等データベース(文化庁)小林商店店舗/帳場とL字型土間からなる店構え、ガラス戸や戸袋などに昭和初期の意匠
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003378
- 国指定文化財等データベース(文化庁)中村家住宅主屋/見世蔵背面に連続して建ち、店舗と居室の空間構成をよく伝える
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003373
最終更新: 2026.09.10