赤城山麓に移された質蔵
赤城山の南麓、木立に囲まれた一角に、白漆喰の小さな蔵が北を向いて建つ。江原本家質庫、もとは前橋市朝日町にあった質蔵である。明治前期、1868年から1882年ごろに建てられ、平成13年(2001年)に江原家の敷地へ移築、令和6年(2024年)に改修された。
建築面積はわずか35平方メートル。それでも寄棟造の桟瓦葺屋根の下に二階を備える。外壁は白漆喰塗で水切を二段に廻し、腰は黒漆喰で仕上げる。雨を土台から遠ざける実用の工夫である。
登録の理由
令和7年(2025年)3月、この蔵は国の登録有形文化財となった。登録基準は「造形の規範となっているもの」。評価されたのは規模ではなく、丁寧なつくりの一点にある。
内部の一階には腰に中敷居を入れ、小屋組は二重梁の和小屋として、地棟に束が立ち並ぶ。窓は少なく閉鎖的で、大切な品を守る蔵らしい構えである。掛子塗の扉は層を重ねて塗り上げられ、金庫の蓋のように閉じる。
訪ねる
質蔵としての役目は終えた。いまは江原家の敷地に建つ文化ホテル「清芳山荘」の客室として使われている。外の音を遮ってきた厚い土壁が、いまは音を室内に留める働きに転じ、宿泊者は蔵の中で映画の音に包まれる。
前橋市街から赤城道路を車で約30分、敷地を示す長屋門をくぐった広い庭園の中に建つ。庭は秋に紅葉で赤や金に染まる。
Q&A
- 質庫とはどんな建物ですか。
- 質屋が担保として預かった品を保管した蔵です。火災や盗難から品を守るため、厚い土壁と頑丈な扉が求められました。
- 中を見学できますか。
- 現在は敷地内の宿泊施設「清芳山荘」の客室で、内部は宿泊者向けに公開されています。見学には予約が必要で、室数にも限りがあります。
- いつごろの建物ですか。
- 明治前期(1868〜1882年)の建築です。二度の移築を経て令和6年に改修されており、当初の形を保ちつつ一部が新しくされています。
- もとはどこにありましたか。
- 前橋市中心部の朝日町にありました。醤油醸造にかかわる建物群の一角にあったのち、赤城山へ移されました。
基本情報
| 名称 | 江原本家質庫(旧朝日町質庫) |
|---|---|
| 所在地 | 群馬県前橋市富士見町赤城山字竜ノ口1825-47他 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) 登録番号10-0355 |
| 登録年月日 | 令和7年(2025年)3月13日 |
| 構造・形式 | 土蔵造2階建、瓦葺、建築面積35㎡ |
| 年代 | 明治前期(1868〜1882年)/平成13年移築・令和6年改修 |
| 所有 | 江原本家(私有) |
| 公開 | 宿泊施設「清芳山荘」の客室として宿泊者に公開(要予約) |
参考文献
- 国指定文化財等データベース — 江原本家質庫(旧朝日町質庫)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00015281
- 群馬県 文化遺産課 — 群馬の文化財
- https://www.pref.gunma.jp/page/5190.html
- 赤城宿 清芳山荘 — 施設案内
- https://akagi-shuku.com/hotels/seiho-sanso/
最終更新日: 2026.07.03