両端を斜路とした石造ホームと、切妻の待合所

群馬県みどり市の沢入駅、上り線のプラットホームは、延長79メートルの石造構造物で、両端を斜路状に築いて、路面が段差ではなく傾斜で軌道敷へ落ち込むように造られている。線路側の擁壁は練積で、軌道敷から高さ69センチメートル。ホームは築造当初の姿を保つ。ここは沢入駅の東側にあたり、線路を挟んで、より長い下り線ホームと対をなす。

中央には小さな待合所が立つ。桁行5.5メートル、梁間1.8メートルの木造平屋建で、切妻造の屋根をセメント瓦で葺く。建築面積は9.9平方メートルほど。数人の待ち客に見合う寸法で建てられた田舎駅の建築で、控えめながら、一世紀近くにわたってホーム中央の位置を保ってきた。

二つの年代と、登録の背景

ホームは大正元年(1912年)にさかのぼる。私鉄の足尾鉄道が、足尾銅山の鉱石を渡良瀬渓谷から運び下ろすため、この区間を開通させた年である。待合所は昭和4年(1929年)の建築。鉄道は大正7年(1918年)に国有化されて国鉄足尾線となり、昭和48年(1973年)の閉山を経て、平成元年(1989年)に第三セクターのわたらせ渓谷鐵道へ引き継がれた。今もここに列車が停車する。

上り線プラットホーム及び待合所は、平成21年(2009年)11月2日に一件の登録有形文化財として登録され、告示は同月19日。路線に沿う約37件の構造物が一括登録された際の一件である。登録有形文化財は、指定文化財の下位に置かれる緩やかな保護の枠組みで、おおむね建設後50年を経た建造物を、供用しながら守る制度だ。登録は、このホームが「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である点、すなわち走り続ける初期の山あいの鉄道の景観への寄与を認めたものである。

位置と、対のホームとの比較

上り線ホームは、この谷の稜線を貫く数多い隧道の一つ、名越トンネルの約1050メートル南西に位置する。沢入は無人ながら現役の駅で、近傍のトンネルや橋梁と違い、このホームは路線を旅する誰にでも開かれている。列車を降り、斜路状の石の上を歩き、切妻の待合所を間近に眺められる。

線路を挟んで向かい合う相方と並べると、上り線ホームは延長79メートルで、下り線の99メートルより短く、昭和4年の待合所は対岸のものより2年新しい。両端の斜路と低い練積の壁が、このホーム固有の特徴である。沢入の周辺には花桃が植えられ、4月下旬に線路沿いを彩る。春は列車で出かけて、二つのホームに順に立つのに好い季節となる。

Q&A

Qこのホームに立てますか。
A立てます。沢入は現役の無人駅で、ホームはわたらせ渓谷線の利用者に開かれています。
Q下り線ホームとの違いは。
Aこちらの上り線側は延長79メートルで、下り線の99メートルより短く、両端が斜路状に築かれ、待合所は昭和4年(1929年)です。下り線の待合所は昭和2年(1927年)です。
Q待合所の寸法は。
A桁行約5.5メートル、梁間約1.8メートルの木造平屋建で、切妻造のセメント瓦葺、建築面積は9.9平方メートルほどです。
Q路線の近くには何がありますか。
A名越トンネルが約1050メートル北東にあり、沢入周辺に植えられた花桃が春に人を集めます。

基本情報

名称わたらせ渓谷鐵道沢入駅上り線プラットホーム及び待合所
所在地群馬県みどり市東町沢入甲965-2他
指定区分登録有形文化財(登録 平成21年11月2日/告示 平成21年11月19日)
登録番号10-0280
員数1棟
年代プラットホーム 大正元年(1912年)/待合所 昭和4年(1929年)
構造及び形式プラットホーム 石造、延長79メートル/待合所 木造平屋建、切妻造セメント瓦葺、建築面積9.9平方メートル
公開状況無人駅・沢入駅の現役ホームとして利用者に開放

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁) — わたらせ渓谷鐵道沢入駅上り線プラットホーム及び待合所
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00007853
わたらせ渓谷鐵道株式会社 — 沿革・歴史
https://www.watetsu.com/company/history.php
わたらせ渓谷鐵道わたらせ渓谷線(ウィキペディア)
https://ja.wikipedia.org/wiki/わたらせ渓谷鐵道わたらせ渓谷線

最終更新日: 2026.07.02