中の峠隧道とは:干ばつの村に水を引いた農業用トンネル

中の峠隧道(なかのたおずいどう)は、広島県東広島市西条町郷曽にある昭和5年(1930年)完成の農業用水路のトンネルで、平成12年(2000年)4月28日に登録有形文化財に登録された。

文化庁の記録では、鉄筋コンクリート造のアーチ坑口をもち、全長は327メートル、員数は1基である。所有者は柏原水利組合で、登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。

文化庁の解説によると、中の峠隧道は昭和元年(1926年)の渇水をきっかけに、小田山川と深道池のあいだに建設された農業用水路の一部である。

中の峠隧道の建設:一人の掘削から村の事業へ

農林水産省の紹介によると、干ばつに悩んでいた柏原地区に住む沖田嘉市は、水の少ないため池の深道池に、岩山の向こうを流れる小田山川の水を引くしかないと考えた。昭和2年(1927年)3月、一人で岩山にトンネルを掘り始め、やがて村中の人が手伝うようになって、昭和5年(1930年)頃に完成したという。

文化庁も、設計と施工を地元の沖田嘉市によるものとしている。

中の峠隧道の価値:早くから使われた鉄筋コンクリートの坑口

文化庁によると、当初つくられた南坑口は、径間約0.7メートルの鉄筋コンクリート造の欠円アーチである。昭和18年(1943年)には落盤を防ぐため、長さ約3.8メートルの鉄筋コンクリート造の箱形の坑道が延長された。

農林水産省は、坑口のアーチを石積みや煉瓦積みでつくるのが主流だった当時に、戦後に普及するコンクリート工法を早くから採用した珍しい意匠と評価している。

中の峠隧道の現在と見学方法

中の峠隧道は、農林水産省によると今も深道池へ水を導くトンネルとして使われ、地域の農地を潤している。柏原水利組合が年1回の隧道の清掃と、年2回の管理用道路の草刈りを行って保全している。

現役の農業用水路のため、隧道の内部には入れない。交通は、農林水産省の案内でJR西条駅から車で約30分。見学の際は水利施設の管理を妨げないよう注意したい。

Q&A

Q中の峠隧道はいつ造られたのですか?
A昭和2年(1927年)3月に掘り始め、昭和5年(1930年)頃に完成しました。
Q中の峠隧道は誰が掘ったのですか?
A地元の沖田嘉市が一人で掘り始め、やがて村中の人が手伝いました。設計と施工も沖田嘉市とされています。
Q中の峠隧道の長さは?
A全長327メートルです。
Q中の峠隧道は今も使われていますか?
A深道池へ水を導く農業用水路として現在も使われ、柏原水利組合が管理しています。
Q中の峠隧道の読み方は?
A「なかのたおずいどう」と読みます。

基本情報

名称中の峠隧道(なかのたおずいどう)
所在地広島県東広島市西条町郷曽字柏原中の峠
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成12年(2000年)4月28日登録
員数1基
寸法鉄筋コンクリート造アーチ坑口、全長327メートル
所有者柏原水利組合
公開状況現役の農業用水路。内部には入れない

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「中の峠隧道」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00001646
文化遺産オンライン「中の峠隧道」
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/177866
農林水産省 水土里の文化遺産「中の峠隧道」
https://www.maff.go.jp/j/nousin/sekkei/museum/m_bunka/yuukei12/

最終更新日: 2026.09.27