海を望む丘の八幡社

榊山八幡神社は、広島県東広島市安芸津町三津の瀬戸内海を望む丘にある八幡社で、社伝では長治2年(1105年)に現在地の榊山へ遷されたとされ、境内の社殿と門・塀の6件が令和2年(2020年)4月3日に国の登録有形文化財となった。

地元の案内によれば、この地へ移された当初は亀山神社と呼ばれていた。天文年間(1532年から1555年)に榊山神社と名を改め、のちに八幡神社の名で知られるようになる。所在地の小字も「榊山」で、丘の名と社名と地名が一つに重なっている。

現在の社殿の中心は明治40年(1907年)に建てられた本殿と拝殿及び幣殿である。4月と10月の第1日曜日に例大祭が行われ、境内には八幡社の社殿のほか、学問の神として菅原道真を祀る天満宮、酒造の守り神を祀る松尾神社、戦没者を祀る安芸津護国神社が並ぶ。

登録された6件と、その年代の幅

登録されたのは、本殿・拝殿及び幣殿・神門及び塀・随身門・松尾神社本殿・護国神社本殿の6件で、登録番号は34-0273から34-0278まで続く。6件とも登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。一つひとつの建物の珍しさよりも、丘の斜面に段を重ねて並ぶ社殿群が、町の景観をかたちづくっている点が評価された。

6件の建築年代は170年ほどの幅を持つ。もっとも古いのは参道の中段に立つ随身門で、天明2年(1782年)頃の建築とされ、境内で唯一の江戸時代の建物である。次いで明治40年(1907年)の本殿と拝殿及び幣殿、昭和4年(1929年)頃の松尾神社本殿、昭和15年(1940年)の神門及び塀、そして昭和28年(1953年)頃の護国神社本殿と続く。

年代順に並べると、この境内が一度に整えられたものではないことが分かる。江戸時代後期の門をくぐった先に、明治末の本社殿があり、その脇に昭和の小社が加わっていった。酒造業者が勧請した松尾神社と、村の戦没者を祀る護国神社は、それぞれ町の産業と戦争の記憶を境内に持ち込んでいる。

境内の歩き方

参道は南から北へ上っていく。社殿はすべて南を向いており、登るにつれて時代が新しい層へ入れ替わっていく構成である。

参道の中段に立つのが随身門で、中央の通路は扉のない吹き放ちになっている。門を抜けてさらに進むと、拝殿の手前の参道脇に、東を向いた小さな護国神社本殿がある。6件のなかでこれだけが参道に面して横を向いている。

その先の石段の下に拝殿及び幣殿が構え、石段を上った境内北奥の上段に本殿が建つ。本殿のまわりは神門と塀が四方から囲い、参拝者が本殿に近づけるのは塀の外までとなる。松尾神社本殿は本殿の北東に、南を向いて建つ。

登録された建物のほかにも、奉納物が多い。正徳6年(1716年)に寄進された手水鉢、三津村の商家の屋号を刻んだ25基の石灯籠、明治から大正にかけての酒造家が納めた酒樽などが境内に残る。境内には軟水醸造法を明治中期に編み出し「吟醸酒の父」と呼ばれる三浦仙三郎の銅像も立ち、安芸津が広島の酒造りに果たした役割を伝えている。

参拝とアクセス

境内は終日立ち入ることができ、参拝に料金は案内されていない。社殿の内部は公開されておらず、建物は境内から外観を見ることになる。社務所は境内とは別の安芸津町三津5559にあり、問い合わせは0846-45-0410で受けている。撮影についての公式な案内は見当たらないため、祭典や祈祷の最中に撮影したい場合は社務所に確かめるのが確実である。

電車ではJR呉線の安芸津駅から徒歩約10分。車では東広島呉自動車道の下三永福本インターチェンジから約20分で、駐車場がある。

丘の上の境内からは安芸津の港と瀬戸内海が見渡せる。社殿群は南を向いているため、午前から昼にかけては正面に光が回り、軒下の彫刻の陰影が読み取りやすい。

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)— 榊山八幡神社本殿
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013331
国指定文化財等データベース(文化庁)— 榊山八幡神社拝殿及び幣殿
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013332
国指定文化財等データベース(文化庁)— 榊山八幡神社神門及び塀
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013333
国指定文化財等データベース(文化庁)— 榊山八幡神社松尾神社本殿
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013334
国指定文化財等データベース(文化庁)— 榊山八幡神社護国神社本殿
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013335
国指定文化財等データベース(文化庁)— 榊山八幡神社随身門
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013336
文化庁「令和元年(2019年)11月15日 文化審議会の答申(登録有形文化財(建造物)の登録)について」
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/pdf/91972801_02.pdf
安芸津町観光協会「榊山八幡神社」
https://akitsu-kankou.jp/shrines_and_temples/%E6%A6%8A%E5%B1%B1%E5%85%AB%E5%B9%A1%E7%A5%9E%E7%A4%BE-2/
東広島おでかけ観光サイト「ヒガシル」榊山八幡神社
https://higashihiroshima-kanko.jp/spot/sakakiya-mahachiman/

最終更新日: 2026.09.24

基本情報

名称榊山八幡神社
所在地広島県東広島市安芸津町三津字榊山5513
所有者宗教法人榊山八幡神社
指定登録有形文化財 6件
座標34.31824, 132.81146