瀧口家住宅の概要 ― 診療所を構えた医家の屋敷

瀧口家住宅は、広島県庄原市春田町にある明治35年(1902年)ごろ開業の診療所を核とした医家の屋敷で、主屋や長屋門及び診療所など9件の建物と工作物が平成30年(2018年)3月27日に登録有形文化財に登録された。

屋敷は山陰と山陽を結ぶ道が交わる交通の要衝に構えられ、敷地の背後を本村川が流れる。登録されたのは主屋、長屋門及び診療所、客殿及び渡廊下、納戸、土蔵、納屋、木小屋、中門及び袖塀、裏門及び土塀の9件で、登録番号は34-246から34-254までの連番になっている。文化審議会の答申は平成29年(2017年)11月17日に出された。

9件の年代は四半世紀ほどの幅に収まる。いちばん古いのは明治後期の納戸で、長屋門及び診療所と裏門及び土塀が明治35年ごろ、主屋と中門及び袖塀が大正2年(1913年)ごろ、土蔵・納屋・木小屋が大正期、最も新しい客殿及び渡廊下が大正15年(1926年)ごろとされる。診療所の開業を起点に、住まい、客を迎える棟、農作業や貯蔵の棟が順に加わっていった経過が、瀧口家住宅の年表からたどれる。

瀧口家住宅の成り立ち ― 村が医師を迎えた

瀧口家住宅の由来を語る記録として、文化庁のデータベースは土塀の造成に触れている。医師を迎えるため、村の人々が夫役として労力を出し合って築いたという。長屋門は明治35年の診療所開業にあわせて建てられ、院長の居室と入院のための部屋を備えた。診療室や分娩室を収めた平屋の診療所が長屋門に連なり、この2棟がひとつの登録件名にまとめられている。

医院であると同時に、瀧口家住宅は農山村の暮らしの場でもあった。納屋の1階には往診用の馬車に使う馬の厩と、もとは養蚕の作業所があり、2階は飼料置き場だった。木小屋は薪炭置き場と漬物小屋を兼ね、2階では蚕を飼った。雪の多い土地で冬を越すための備えが、付属屋の間取りにそのまま残っている。

文化審議会は、主屋を大工の技量が発揮された住宅として評価し、長屋門及び診療所については明治後期の地方病院の形式をよく伝えると述べている。主屋は「造形の規範となっているもの」、残る8件は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」という基準で登録された。個々の建物の評価は、それぞれのページで詳しく扱う。

瀧口家住宅の配置 ― 土塀が囲む屋敷構え

瀧口家住宅の敷地は、総延長115メートルに及ぶ土塀と門で囲まれている。土塀は亀甲積(きっこうづみ)の石垣の上に建ち、敷地の境界を一周するように巡る。答申はこの土塀と門の構えを、壮大な屋敷構えを形づくるものとしている。

北面に長屋門及び診療所が建ち、その内側、敷地の中央に主屋がある。主屋の西には渡廊下でつながる客殿が、南側の角屋からは縁を介して納戸が続く。東面には土蔵と納屋が並び、納屋に直交して建つ木小屋が土塀とともに敷地の南東の隅を区切る。南面には裏門が開く。主屋から長屋門へ向かって南北に延びる中門及び袖塀は、玄関前の空間と、座敷や客殿に面した庭とを分けている。

外から瀧口家住宅を眺めるなら、土蔵が土塀と一体になって見える東側の道路沿いと、木小屋が角を固める南東の隅が分かりやすい。白い漆喰の壁と瓦の線が、石垣の上で長く続く。

瀧口家住宅の見学とアクセス

瀧口家住宅は現在も個人の住宅である。文化庁のデータベースや庄原市の文化財ページには公開日や見学受付の案内が見当たらず、建物の内部と敷地内は公開されていないものとして扱ってほしい。見学は公道から外観を眺める範囲にとどめ、門をくぐったり塀越しにのぞき込んだりしないこと。写真も道路からの外観に限り、住人や出入りする人が写り込まないよう配慮したい。

最寄りの停留所は備北交通の路線バス「赤川」で、そこから歩いて1〜2分ほどの距離にある。庄原市街から路線バスで向かう場合は、便数が限られるため、経由する路線と時刻を備北交通の時刻表で事前に確かめておくと安心である。周辺の道は幅が狭く、見学者用の駐車場の案内も確認できなかった。車で訪れる場合は、屋敷の前に停めないようにしたい。

瀧口家住宅を含む庄原市内の文化財については、庄原市教育委員会の生涯学習課文化振興係(電話0824-73-1189)が窓口になっている。

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「瀧口家住宅主屋」
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00012237
文化庁 国指定文化財等データベース「瀧口家住宅長屋門及び診療所」
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00012245
文化庁 国指定文化財等データベース「瀧口家住宅裏門及び土塀」
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00012244
文化庁 国指定文化財等データベース「瀧口家住宅納屋」
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00012241
文化庁 国指定文化財等データベース「瀧口家住宅木小屋」
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00012242
文化遺産オンライン「瀧口家住宅主屋」
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/365127
文化庁「平成29年11月17日 登録有形文化財(建造物)の登録について」
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/pdf/r1392281_21.pdf
庄原市「登録文化財」
https://www.city.shobara.hiroshima.jp/main/education/shogaigakushu/cat02/02/post_192.html
備北交通「路線図」
https://bihoku.co.jp/about/rosen/
Yahoo!マップ「瀧口家住宅主屋」
https://map.yahoo.co.jp/v3/place/LiuPczzqULw

最終更新日: 2026.09.25

基本情報

名称瀧口家住宅
所在地広島県庄原市春田町字岩見1-1
指定登録有形文化財 9件
座標34.81597, 133.04534