日本最北の城に残る唯一の遺構

福山城(松前城)本丸御門は、北海道松前郡松前町字松城にある江戸時代末期の櫓門で、嘉永6年(1853年)の建造とされ、昭和16年(1941年)5月8日に旧国宝、昭和25年(1950年)8月29日に国の重要文化財に指定された。日本式城郭としては最後に築かれた城の、現存する唯一の建造物である。

この城は国内の戦いに備えたものではない。津軽海峡に外国船が現れるようになり、嘉永2年(1849年)、幕府は松前家十七世藩主・崇広に北方警備の強化を命じ、あわせて城主大名に取り立てた。着工は嘉永3年(1850年)、完成は安政元年(1854年)である。設計を任されたのは高崎藩の兵学者・市川一学。一学は海防上、福山では無理があるとして箱館後方の桔梗野付近への築城を上申したが、藩士たちが移転を望まなかったため、既存の福山館を拡大して築くことになった。

できあがったのは風変わりな城だった。本丸に三重の天守、二の丸に二重櫓を3基、そして海に面した三の丸には7座の砲台(台場)が配された。伝統的な城郭建築と海岸砲台を一つの縄張りに同居させている。本州以南の城と松前が決定的に異なるのはこの点である。

御門だけが残った経緯

明治8年(1875年)までに、城内は開拓使の命によって大部分が取り壊された。残されたのは三層天守と本丸御門、そして東塀の三つで、昭和16年(1941年)にいずれも国宝に指定された。

昭和24年(1949年)6月5日、役場火災の飛火が城内に及んだ。天守と東塀は焼失し、大手門とも呼ばれる本丸御門だけが焼け残った。翌年の昭和25年8月29日、この御門は重要文化財に指定されている。なお国指定文化財等データベースは指定年月日を昭和16年5月8日と記録するが、これは旧国宝としての指定日を継承したもので、戦後の再指定日を掲げる松前町の記載とはよって立つ法律が異なるだけである。どちらも誤りではない。

現在の天守は昭和35年(1960年)に竣工した鉄筋コンクリート造の復興天守で、設計は横浜国立大学工学部の大岡實。全道規模の再建運動を受けて建てられた。翌年に付帯施設が竣工し、内部は松前城資料館として活用されている。城全体が復元だと思って訪れる人も少なくないが、そこへ向かう途中でくぐる御門だけは違う。

御門そのものを読む

形式は櫓門。通路の上に櫓を載せた門で、三間一戸両脇戸付きという構成をとる。正面の柱間が三間、中央に一つの通路を開き、その左右に脇戸を備える形である。屋根は切妻造で銅板葺。南を向いて建ち、東方の三重櫓(天守)との間には塀が取り付けられている。

見上げる前に足元を見たい。石垣は凝灰岩を方形に加工し、隙間なくすり合わせて積まれている。通路の両脇、御門の基部で目地の通り方を確かめると、加工の精度がよく分かる。その上に載る櫓は装飾に乏しい。1850年代に幕命で築かれた海防のための施設であって、藩主の格式を誇示する建物ではなかったことが、そのまま形に出ている。

御門は松前公園の中に屋外で建っているため、時間を問わず見学でき、見るのもくぐるのも無料である。復興天守に入る場合は別扱いになる。松前城資料館の開館期間は4月10日から12月10日、開館時間は午前9時から午後5時(入館受付は午後4時30分まで)で、12月11日から4月9日までは冬期閉館。入館料は大人(高校生以上)360円、小人(小・中学生)240円、10名以上は団体料金が適用される。松前藩屋敷との共通入館券は大人620円、小人420円。幼児は無料である。

訪問が集中するのは春だ。松前公園には約250品種、およそ1万本の桜が植えられ、「さくらの名所100選」に選ばれている。早咲き・中咲き・遅咲きを意図的に植え分けているため、4月下旬からおよそ1か月にわたって開花が続く。昭和40年(1965年)に開園した桜見本園には品種を集めて保存する区画もある。この時期の御門は人であふれる。逆に10月に訪れれば、津軽海峡を背にした石垣をほとんど独り占めできる。

バスは函館バスの松城バス停下車、徒歩10分。車ならJR木古内駅から約80分で、松前公園寺町内に史跡見学者・参拝者用の無料駐車場が約40台分用意されている。資料館までは徒歩約5分だが、駐車場内は未舗装である。

Q&A

Q福山城(松前城)本丸御門は当時の建物ですか、復元ですか?
A当時の建物です。明治初期の取り壊しと昭和24年(1949年)の火災をくぐり抜けて残った、福山城で唯一の現存遺構にあたります。現在建っている天守は昭和35年に建てられた鉄筋コンクリート造の復興天守で、御門とは別の建物です。
Q福山城(松前城)本丸御門は無料で見学できますか。時間の制限は?
A見学は無料で、時間の制限もありません。御門は松前公園内に屋外で建っており、通り抜けることもできます。復興天守内部の松前城資料館に入る場合のみ入館料が必要です。
Q松前城資料館の開館期間と入館料を教えてください。
A開館期間は4月10日から12月10日、午前9時から午後5時(入館受付は午後4時30分まで)です。12月11日から4月9日は冬期閉館となります。入館料は大人(高校生以上)360円、小人(小・中学生)240円、10名以上は団体料金。松前藩屋敷との共通券は大人620円、小人420円で、幼児は無料です。
Q福山城(松前城)本丸御門へのアクセスは?
A函館バスの松城バス停で下車し徒歩10分です。車の場合はJR木古内駅から約80分。松前公園寺町内に史跡見学者・参拝者用の無料駐車場(約40台)があり、資料館までは徒歩約5分ですが、駐車場内は未舗装のためご注意ください。
Q福山城(松前城)を訪れるのに良い時期はいつですか?
A桜が目当てなら4月下旬から5月です。松前公園には約250品種、およそ1万本の桜が早咲き・中咲き・遅咲きと植え分けられ、約1か月にわたって開花が続きます。静かに石垣や津軽海峡の眺めを味わうなら、資料館が冬期閉館に入る12月10日より前の秋がおすすめです。
Q福山城(松前城)はなぜ幕末という遅い時期に築かれたのですか?
A海防のための築城だったからです。津軽海峡に外国船が現れるようになり、嘉永2年(1849年)に幕府が松前藩へ防備強化を命じました。安政元年(1854年)に完成した城は、天守や櫓といった伝統的な構成に、海側の三の丸へ配した7座の砲台を組み合わせています。日本式城郭としては最後の築城例にあたります。

基本データ

名称福山城(松前城)本丸御門(ふくやまじょう(まつまえじょう)ほんまるごもん)
所在地北海道松前郡松前町大字松城
指定区分重要文化財(近世以前/城郭)
指定年昭和16年(1941年)5月8日(国指定文化財等データベース/旧国宝)。松前町は重要文化財指定を昭和25年(1950年)8月29日と記録
員数1棟
寸法櫓門、三間一戸両脇戸付、切妻造、銅板葺/嘉永6年(1853年)
所有者松前町
公開状況松前公園内に屋外で建ち、外観は通年無料で見学可。復興天守内の松前城資料館は4月10日~12月10日、9:00~17:00(受付16:30まで)、大人360円・小人240円

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)/福山城(松前城)本丸御門
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/25
文化遺産オンライン/福山城(松前城)本丸御門
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/154565
まつまえの文化財(松前町教育委員会)/福山城(松前城)本丸御門
https://www.town.matsumae.hokkaido.jp/bunkazai/detail/00001632.html
松前町/松前城資料館 料金・営業時間
https://www.town.matsumae.hokkaido.jp/bunkazai/detail/00001504.html

最終更新日: 2026.08.27