開拓使が建てた洋風ホテル
豊平館は、北海道札幌市中央区の中島公園内に建つ明治13年(1880年)竣工の木造二階建洋風建築で、昭和39年(1964年)5月26日に国の重要文化財に指定された。北海道の開拓を統括した開拓使が、直営の洋風ホテルとして建てたものである。
近づくとまず色が目に入る。白い下見板張りの壁に、窓枠と扉まわりだけが濃い青で縁取られている。この青はウルトラマリンブルーと呼ばれ、かつては宝石のラピスラズリを砕いて作られた顔料である。開府からまだ十年ほどの街に、開拓使はその色を持ち込んだ。
工事は明治12年(1879年)の初春に起工し、翌13年(1880年)11月に竣工した。設計は開拓使工業局営繕課が担当し、施工は大岡助右衛門が請け負っている。文化庁の解説によれば、設計に際してはジョサイア・コンドルの意見も求められた。
開館は明治14年(1881年)8月30日。明治天皇の北海道行幸に合わせた日で、豊平館は行在所として使われた。
外観を読む
建物は南を向く。中央の棟に翼屋が付き、その両端がわずかに前後へ突き出て、正面と背面に切妻を見せる構成である。基礎は腰石積、壁は下見板張りで、隅には定規柱が立つ。二階の床の高さに胴蛇腹が水平に回り、建物全体を締めている。
正面中央には半円形の車寄せが張り出す。コリント式オーダーの柱を吹寄せに立てて支え、その上を手摺付きのバルコニーとする。両側面の中央にも長方形のバルコニーが設けられ、三方から外気に開く形になっている。
玄関の上、屋根には櫛形のペディメントが載り、頂部に星の飾りが付く。開拓使の徽章である。この五稜星は時計台にも、地元のビールのラベルにも現れるが、豊平館のそれは建築に用いられた最初期の例にあたる。
窓はすべて上げ下げ窓。屋根はもともと柾葺で、その上から鉄板を葺いている。国の記録は屋根を亜鉛銅板葺と記す。建築面積は528.8平方メートル。明治期の公共建築としては大きな数字ではなく、間近に立つと記念碑というより、よく釣り合いのとれた邸宅という印象に近い。
内部と、移築で残ったもの
一階も二階も、中央にホールを置く。その西側に広間と食堂、東側は中廊下を挟んで客室が並ぶ。壁と天井はいずれも漆喰塗で、小屋組は和小屋ではなく洋小屋である。
見上げてほしいのは天井の中心飾りだ。漆喰で作られた円形の装飾に、紅葉や牡丹といった日本の意匠が浮き彫りにされている。構成は完全に西洋のものでありながら、そこに置かれたモチーフは左官職人の手になじんだものだった。どちらの様式にも収まりきらない、この建物らしい部分である。
玄関ホールから上がる階段は、途中で折れて二階へ届く。曲線の取り方や手摺の仕上げは、平面計画から想像するより丁寧である。建設当初のものが残されている。
豊平館は最初から中島公園にあったわけではない。当初の建設地は北1条西1丁目、現在のさっぽろテレビ塔に近い場所だった。行幸の後は宮内省の接待所として、のちには公会堂を付して札幌の文化活動の拠点として使われ、明治天皇聖蹟に指定されたが、昭和23年(1948年)にその指定は解除された。市の公民館として社会教育の場となったのち、新しい市民会館の建設を機に中島公園への移築が決まる。文化庁のデータベースは移築を昭和32年とし、豊平館の公式サイトは1958年(昭和33年)と記す。工事が年をまたいだためで、同じ経過の別の時点を指している。
移築にあたっては、活用のために間仕切りの一部が変更され、暖炉は撤去または改造され、便所が新設された。総地下だったものは中央部分のみを鉄筋コンクリートで設ける形に縮小されている。それでも建具、天井中心飾、照明器具、階段は当初のものがよく残った。平成23年度までは市営の結婚式場として使われており、札幌の市民にとっては式場として記憶されている建物でもある。
訪問の実際
観覧時間は9時から17時まで、入館は16時30分まで。毎月第4金曜日などの夜間開館日は20時まで延長され、入館は19時30分までとなる。休館日は毎月第2火曜日で、その日が祝休日にあたる場合は直後の平日に振り替わる。年末年始は12月29日から1月3日まで休館する。
観覧料は一般350円、20人以上の団体は300円、高校生・大学生は150円。中学生以下は無料で、年間パスポートは700円である。クレジットカード、交通系IC、QRコード決済などのキャッシュレス決済に対応しており、WEBチケットの事前購入もできる。
館内での個人的な記念撮影は通常可能である。ただし取材や商業目的の撮影、写真の提供を伴う利用については申請の手続きが定められており、公式サイトに案内がある。スナップ以上の撮影を予定しているなら、事前に相談しておきたい。
所在地は札幌市中央区中島公園1番20号。地下鉄南北線「中島公園」駅3番出口から徒歩5分、「幌平橋」駅1番出口から徒歩10分、市電「中島公園通」から徒歩5分である。一般用の駐車場はなく、身障者用が2台分あるのみなので、公共交通機関で向かうのが現実的だ。
館内の一部の部屋は17時から22時にかけて貸室として利用でき、開館中に貸し出される部屋もある。訪問日によっては入れない部屋が出ることを頭に置いておくとよい。館内にはカフェもある。中島公園は季節ごとに表情が変わり、菖蒲池の対岸や樹々のあいだから建物を望める位置がいくつかある。中へ入る前に、外から角度を探して歩く時間を取りたい。
Q&A
- 豊平館の観覧時間と観覧料を教えてください。
- 観覧時間は9時から17時(入館は16時30分まで)で、毎月第4金曜日などの夜間開館日は20時まで(入館19時30分まで)延長されます。観覧料は一般350円、高校生・大学生150円、中学生以下は無料、年間パスポートは700円です。
- 豊平館の休館日はいつですか。
- 毎月第2火曜日が休館日で、その日が祝休日の場合は直後の平日に振り替わります。加えて、年末年始の12月29日から1月3日まで休館します。
- 豊平館へのアクセス方法と駐車場はどうなっていますか。
- 地下鉄南北線「中島公園」駅3番出口から徒歩5分、「幌平橋」駅1番出口から徒歩10分、市電「中島公園通」から徒歩5分です。一般用の駐車場はなく、身障者用が2台分のみのため、公共交通機関の利用が推奨されています。
- 豊平館の館内で写真を撮ることはできますか。
- 個人の記念撮影は通常可能です。取材や商業目的の撮影、写真提供を伴う利用は申請手続きが必要で、公式サイトに案内があります。貸室として使用中の部屋には入れない場合があります。
- 豊平館はなぜ建てられ、なぜ重要文化財に指定されたのですか。
- 開拓使が直営の洋風ホテルとして明治13年(1880年)に建て、翌14年8月に明治天皇の行在所として開館しました。開拓使の手による本格的な洋風建築の遺構であり、北海道における明治時代洋風建築の代表作と評価され、昭和39年(1964年)5月26日に重要文化財に指定されています。
基本データ
| 名称 | 豊平館(ほうへいかん) |
|---|---|
| 所在地 | 北海道札幌市中央区中島公園1番20号(南一一条西四丁目 中島公園内) |
| 指定区分 | 重要文化財(近代/官公庁舎) 指定番号 01580 |
| 指定年 | 昭和39年(1964年)5月26日 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 木造、建築面積528.8平方メートル、二階建、亜鉛銅板葺 |
| 所有者 | 札幌市 |
| 公開状況 | 観覧9時〜17時(入館16時30分まで)/第2火曜・年末年始休館/一般350円 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁)— 豊平館
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/2
- 文化遺産オンライン — 豊平館
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/173242
- 豊平館 公式サイト — 利用案内
- https://www.s-hoheikan.jp/
- 豊平館 公式サイト — 豊平館の歴史
- https://www.s-hoheikan.jp/history/
- 豊平館 公式サイト — みどころ
- https://www.s-hoheikan.jp/highlight/
最終更新日: 2026.08.27