札幌の街区を画す七七メートルの石塀

黒田家住宅石塀は、北海道札幌市中央区南13条西7丁目にある大正15年(1926年)築の石造塀で、平成22年(2010年)9月10日に国の登録有形文化財に登録された。

総延長は77メートル。敷地の南北の境界に沿って延びる。二つの塀は高さが違う。北塀は六段積みで2.1メートル、南塀は八段積みで2.7メートル。いずれも上部に薄いブロック石を挟み、その上へ笠石を載せる。敷地の内側には4メートルおきに控柱が立ち、長い石積みを背後から支えている。

市電の走る通りを歩いていると、塀は一枚の灰色の面として目に入る。足を止めて近づくと、面は一つひとつの石に分かれる。それぞれの表に細い縁取りが刻まれ、その内側だけがわずかに粗い。

登録の理由と、四件がそろう意味

登録有形文化財の制度は平成8年(1996年)に始まった。国宝や重要文化財の指定制度に比べて規制がゆるやかで、建てられておおむね50年を経た建造物を、使いながら守ることを前提としている。黒田家住宅石塀は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」という基準で登録され、登録番号は第01-0107号にあたる。

この石塀だけが選ばれたわけではない。平成22年(2010年)9月10日、黒田家住宅の主屋(大正13年/1924年)、蔵、表門(大正15年/1926年)、そして石塀の四件が同時に登録されている。四件がそろうことで、大正末期の札幌における上層住宅の屋敷構えが、門・塀・主屋・蔵という単位のまま残った。豊平川の南側に整然とした街区が形づくられていった時期の姿である。

石材は軟石、いわゆる札幌軟石とみられる。札幌市南区石山一帯で採掘された溶結凝灰岩で、火に強く、熱を通しにくい。木造家屋が密集し、暖房の火を絶やせない北の都市にとって、この二つの性質は決定的だった。札幌軟石は平成30年(2018年)に北海道遺産へ選定されている。

通りから見る見どころ

表面の仕上げは江戸切と呼ばれる。石工が露出面の四周に細く平らな縁を刻み、その内側を粗いまま残す技法である。冬の低い日差しが横から当たると、縁の部分だけが明るく光り、内側は影に沈む。塀全体に細かな格子状の陰影が浮かぶのは、この仕上げによる。

南北二つの塀を見比べてほしい。南塀は北塀より二段多く、高さで50センチ以上まさる。敷地の地盤が傾いていることへの対応である。控柱がすべて敷地側を向いているため、通りに面した側は途切れることなく一続きの面として見える。

敷地西端の蔵は、一見すると軟石造に見える。実際にはコンクリートブロック造で、軟石の風合いに似せて造られたものだという。本物の石積みは、この塀の側にある。

黒田家住宅は現在も居住されている個人の住宅で、内部の公開はない。見学は公道からの外観のみとなる。撮影も公道からであれば差し支えないが、門の前に長く立ち止まったり、塀越しにレンズを向けたりすることは避けたい。最寄りは札幌市電の行啓通停留場で、西7丁目の電車通りを北へ徒歩3分ほど。滞在時間は10分もあれば足りる。二駅先の中島公園と組み合わせると歩きやすい。

Q&A

Q黒田家住宅石塀は見学できますか。内部の公開はありますか。
A黒田家住宅は現役の個人住宅で、屋敷内および建物内部の公開はありません。石塀、表門、主屋の屋根はいずれも公道から見ることができ、通常はその形で見学されています。
Q黒田家住宅石塀へのアクセスと最寄りの停留場を教えてください。
A札幌市電の行啓通停留場から電車通り沿いに徒歩3分ほどです。所在地は札幌市中央区南13条西7丁目1050。地下鉄南北線の中島公園駅からも歩ける距離にあります。
Q黒田家住宅石塀にはどのような石が使われていますか。
A軟石で、札幌市南区石山周辺で採れた札幌軟石とみられます。明治期以降の北海道で、防火を要する塀や蔵、基礎に広く用いられた溶結凝灰岩です。
Q黒田家住宅石塀の「江戸切」とはどのような仕上げですか。
A石の見える面の四周に細い平らな縁取りを刻み、内側を粗いまま残す仕上げです。石一つひとつが薄い枠を持つように見え、日差しが斜めから当たるときにもっとも際立ちます。
Q黒田家住宅で登録有形文化財になっているのは石塀だけですか。
A主屋(大正13年)、蔵、表門(大正15年)も石塀と同じ平成22年9月10日に登録されており、一つの敷地に四件の登録有形文化財がそろっています。

基本情報

名称黒田家住宅石塀(くろだけじゅうたくいしべい)
所在地北海道札幌市中央区南13条西7丁目1050
指定区分登録有形文化財(建造物) 登録番号 第01-0107号
指定年平成22年(2010年)9月10日 登録
員数1基
寸法石造、総延長77メートル。北塀は六段積で高さ2.1メートル、南塀は八段積で高さ2.7メートル
所有者黒田合資会社
公開状況個人住宅のため内部非公開。外観は公道からいつでも見学可能

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)「黒田家住宅石塀」
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00008229
文化遺産オンライン「黒田家住宅石塀」
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/170151
文化遺産オンライン「黒田家住宅表門」
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/217610
札幌市「札幌市内の登録文化財」
https://www.city.sapporo.jp/shimin/bunkazai/pdf/touroku.html

最終更新日: 2026.08.27