札幌軟石で築かれた四番蔵

北海道栗山町、小林酒造の蔵の列を西へ進むと、壁の素材が表情を変える。四番蔵は東側の煉瓦蔵より古く、明治33年(1900年)の建築で、つくり方も異なる。木の骨組みに石を張った木骨石造で、北海道の建築に重みとあたたかみを与えてきた淡色の凝灰岩、札幌軟石が用いられている。

建物は南北に長く、桁行はおよそ24.5メートル、梁間はおよそ8メートル。2階建てで建築面積は263平方メートルである。並びの蔵で唯一、屋根を鉄板ではなく桟瓦で葺いており、遠目にも見分けがつく。西側には煉瓦造の下屋が付く。案内を受けて内部に入ると、その構えに目を奪われる。1階にも2階にも、独立した柱が一本も立っていないのだ。

小林酒造は明治11年(1878年)に札幌で始まり、夕張川の水を求めて明治34年(1901年)に栗山へ移った。移転の前年に建った四番蔵は、この敷地で最も早い時期の建物層に属している。

登録有形文化財に登録された理由

四番蔵は平成18年(2006年)10月18日、国の登録有形文化財に登録された。日本でいう「登録」は「指定」とは性格が違う。国宝・重要文化財が最も希少な作品を選び出すのに対し、登録はおおむね築50年以上を経て、その土地の歴史的な趣を強める建物をゆるやかに守る。ここで記録された基準も「国土の歴史的景観に寄与しているもの」だった。

この石蔵は、その景観の核を担う。敷地で2006年にまとめて登録された13棟の一群に属し、そのなかでは大正の煉瓦蔵に先立つ、より早い石造の段階を代表している。二つの素材の対比を列の上で読むと、酒蔵の成長の一世代の間に建築の手法がどう移り変わったかが見えてくる。

技は石積みに凝らされている。石材は段をずらして積む片馬踏み目地とし、軒蛇腹も妻側の螻羽(けらば)も木や漆喰ではなく石で積み上げる。そのため外観は重厚で意図のはっきりした構えとなり、軽やかな煉瓦蔵とは異なる手ざわりを見せる。

訪れたときに見たいところ

桟瓦の屋根は、遠くから列のなかの四番蔵を見分ける手がかりになる。近づいたら、石の塊が段をずらして積まれている様子と、軒も螻羽も同じ石で築かれている点を見てほしい。外殻の全体が、ひと続きの石の塊として読めてくる。西側の煉瓦の下屋は、必要に応じて一つの素材に別の素材を継いでいった酒蔵の手当ての跡である。

敷地内の外観は自由に見ることができる。昭和19年(1944年)築の旧事務所を活用した「蔵元北の錦記念館」では、酒造りの道具など約5千点を展示し、売店と試飲を備える。蔵の内部は10名以上の団体が予約のうえで見学でき、案内付き見学や4月の酒蔵まつりで足を踏み入れられれば、柱のないこの蔵の内部は記憶に残る空間の一つになる。

Q&A

Q四番蔵は何でできていますか。
A木の骨組みに石を張る木骨石造で、北海道に多い淡色の凝灰岩・札幌軟石を用いています。建築は明治33年(1900年)で、屋根は桟瓦葺です。
Q近くの煉瓦蔵とどう違いますか。
Aより古く、煉瓦ではなく石で築かれ、屋根も鉄板ではなく桟瓦です。内部には独立した柱がなく、軒蛇腹も螻羽も石で積み上げられています。
Q札幌軟石とは何ですか。
A札幌周辺で切り出された、軽く加工しやすい凝灰岩です。明治以降、北海道各地で蔵などの建物に広く使われてきました。
Q内部を見られますか。
A外観は敷地から見学できます。内部は10名以上の団体・要予約の案内付き見学、および毎年4月の酒蔵まつりで入ることができます。
Q場所はどこですか。
A北海道夕張郡栗山町錦3-109です。空知地方にあり、札幌から車でおよそ1時間です。

基本情報

名称小林酒造四番蔵(こばやししゅぞうよんばんぐら)
所在地北海道夕張郡栗山町錦3-109
指定区分登録有形文化財(建造物)/平成18年(2006年)10月18日登録
登録番号01-0084
建築年明治33年(1900年)
構造形式木骨石造2階建、桟瓦葺、建築面積263平方メートル、1棟
所有者小林酒造株式会社
公開状況敷地・外観は見学可。蔵内部は10名以上の団体・要予約のガイド付き見学

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「小林酒造四番蔵」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005723
栗山町公式ホームページ「小林酒造・北の錦記念館」
https://www.town.kuriyama.hokkaido.jp/soshiki/53/64.html
北海道公式観光サイト HOKKAIDO LOVE!「小林酒造建造物群」
https://www.visit-hokkaido.jp/spot/detail_12193.html

最終更新日: 2026.06.25