耐火の校舎の隣に建つ、木の体育館

星槎大学(旧頼城小学校)体育館は、北海道芦別市緑泉町にある昭和29年(1954年)建築の木造平屋建の体育館で、平成20年(2008年)3月7日に国の登録有形文化財に登録された。

位置は校舎の職員室棟の北側。両者は渡り廊下でつながっている。同じ年に、同じ資金で、同じ子どもたちのために建てられた二棟が、違う材料でできている。

この対比が面白い。昭和28年(1953年)の火災で木造校舎が全焼したあと、再建費用を全額負担した三井鉱山芦別鉱業所は、教室棟を煉瓦造とした。二度と焼けないように、という選択である。ところが体育館は木造で建てられた。外壁は下見板とモルタル、屋根は切妻造の鉄板葺。

理由には実務的な筋が通っている。体育館は、真ん中に何も立っていない一室が要る建物だ。昭和29年の北海道でその空間を架け渡すなら、木造トラスが現実的な解だった。煉瓦の柱では床の邪魔になる。建築面積は757平方メートル、そのほぼ全体が一つの大空間である。

小屋組の構造美と登録の理由

登録年月日は平成20年3月7日、告示は同月19日。第58回の登録で、登録番号は01-0096。登録基準は「再現することが容易でないもの」。文化庁の解説文が真っ先に挙げているのは、2ヒンジ・トラスによる木造小屋組の構造美である。

2ヒンジ・トラスとは、両脚部をピン接合とし、剛に固定しない形式のトラスを指す。わずかな変形を骨組が吸収するため、壁体に無理な力がかかりにくい。この方式の空間で天井を見上げると、三角形が規則正しく反復する。部材の太さは受け持つ力に応じて決まっており、装飾のかわりに幾何が働いている。天井板で隠していないから、その仕組みがそのまま見える。日本遺産の解説も、屋根を支える木骨トラスの幾何学的な形状を体育館の特徴として挙げている。

外壁も読みどころだ。腰は鎧下見板張、上部はモルタル塗。鎧下見板は北海道の木造建築が積み重ねてきた納まりで、雨と雪を流すための仕掛けである。窓は上下2段に開く。高い位置からの採光が床まで届き、しかもボールの当たらない高さに硝子がある。

内部は東端にステージと器具庫、西端に物入を設ける。このステージが重要だ。炭鉱の企業城下町において、学校の体育館は地域の集会所でもあった。式典が行われ、演目が上演され、頼城の住民が集まる場所だった。頼城小学校は昭和33年(1958年)に41学級・児童2,214名を数えている。石炭が最も勢いのあった時期のことである。

見学について

体育館は隣接する校舎とともに通常施錠されており、内部の自由見学はできない。ここははっきり書いておきたい。見どころである小屋組が、内部にあるからだ。見る場合は事前の問い合わせが必要で、近年はイベント時に公開された例もある。外観は周囲の道路からいつでも、許可なく眺められる。

外から見るなら、二棟の関係に注目したい。南に赤煉瓦、北に板張りの木造、その間を渡り廊下がつなぐ。昭和29年の同じ要求に対する二つの答えが並んで建っている。

アクセス。芦別市街から空知交通の頼城線バスに乗り「頼城学校前」下車、徒歩2〜3分。鉄道はJR根室本線の芦別駅が最寄りで、車なら芦別市街から15分ほど。外観の見学に料金はかからず、撮影の制限もないが、施設として使われている敷地であることは意識したい。

頼城小学校は平成14年(2002年)に閉校した。平成16年(2004年)から神奈川県を本拠とする通信制の星槎大学が芦別キャンパスとして使用し、その後大学は本部を箱根へ移している。現在の利用は限定的とされる。令和元年度(2019年度)には校舎とあわせて日本遺産「炭鉄港」の構成文化財となった。空知の炭鉱、室蘭の製鉄、小樽の港湾を一つの物語で結ぶ枠組みである。

Q&A

Q星槎大学(旧頼城小学校)体育館の内部は見学できますか?
A事前の手配なしには見学できません。体育館は通常施錠されており、内部を見る場合は問い合わせが必要です。近年はイベント時に公開された例もあります。外観は周囲の道路からいつでも見られます。
Q星槎大学(旧頼城小学校)体育館の2ヒンジ・トラスとは何ですか?
A両脚部をピン接合とし、剛に固定しない形式の小屋組トラスです。わずかな変形を骨組が吸収するため壁体に無理がかかりません。昭和29年当時、柱を立てずに体育館の床を架け渡す現実的な方法が木造トラスであり、この露出した骨組の構造美を文化庁の解説文が挙げています。
Q星槎大学(旧頼城小学校)体育館はなぜ木造なのですか?隣の校舎は煉瓦造ですが。
A教室棟は昭和28年(1953年)の火災を受けて耐火性を優先し煉瓦造で再建されました。一方、体育館は柱のない一室が必要で、当時それを実現しやすかったのが木造トラスです。そのため木造とし、外壁を下見板とモルタルで仕上げています。
Q星槎大学(旧頼城小学校)体育館はいつ登録有形文化財になりましたか?
A平成20年(2008年)3月7日に登録され、同月19日に告示されました。第58回の登録で登録番号は01-0096です。隣接する校舎も同日に登録番号01-0095として登録されています。
Q星槎大学(旧頼城小学校)体育館へのアクセス方法は?
A最寄りのバス停は「頼城学校前」で、空知交通の頼城線が芦別市街から通じています。停留所から体育館までは徒歩2〜3分。鉄道を使う場合はJR根室本線の芦別駅で降り、そこからバスか車になります。

基本情報

名称星槎大学(旧頼城小学校)体育館
所在地北海道芦別市緑泉町5-14他
指定区分登録有形文化財(建造物) 登録番号 01-0096
指定年平成20年(2008年)3月7日登録/同年3月19日告示(第58回)
員数1棟
寸法木造平屋建、鉄板葺(切妻造)、建築面積757㎡
所有者国指定文化財等データベースに記載なし
公開状況外観は常時見学可。内部は通常施錠、事前問い合わせが必要

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)— 星槎大学(旧頼城小学校)体育館
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00006770
文化遺産オンライン — 星槎大学(旧頼城小学校)体育館
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/111947
日本遺産ポータルサイト — 旧頼城小学校(星槎大学)校舎及び体育館
https://japan-heritage.bunka.go.jp/ja/culturalproperties/result/4090/
北海道空知総合振興局 — そらち炭鉱の記憶をめぐる 旧頼城小学校(星槎大学)
https://www.sorachi.pref.hokkaido.lg.jp/ts/tss/yama/resource/as_011.html
炭鉄港ポータルサイト — 芦別市
https://3city.net/access/ashibetsu/

最終更新日: 2026.08.27