鳳鳴酒造とは ― 城下町呉服町の造り酒屋に残る9件
鳳鳴酒造は、兵庫県丹波篠山市呉服町にある寛政9年(1797年)創業の造り酒屋で、江戸時代後期から明治時代末期に建てられた主屋・蔵・作業棟など9件が、平成15年(2003年)9月19日に国の登録有形文化財に登録された。登録番号は28-0127から28-0135までの連番で、文化庁のデータベースでは9件とも「鳳鳴酒造」の名を冠している。
敷地は篠山城跡の北東、城下の商店街に面した呉服町にある。北側の通りに主屋が店を構え、そこから南へ、土蔵・釜場・仕込蔵・槽場と酒造りの棟が奥へ奥へと続き、敷地の南端は別の道路に接している。通りから見れば一軒の商家だが、奥行きの深い敷地の中に酒造りの工程がひと筋に並んでいるのが鳳鳴酒造の屋敷構えである。
清酒の仕込みはいま、JR篠山口駅近くの味間蔵(あじまぐら)で行われている。呉服町の建物は酒蔵見学施設「ほろ酔い城下蔵」と直営店として公開され、登録された9件のうち主屋と酒造りの棟を、無料でたどることができる。
鳳鳴酒造の9件と建てられた時期
文化庁の解説文は各棟の位置を互いを基準に書いているので、つなぎ合わせると鳳鳴酒造の配置が北から南へ読み取れる。
- 主屋(文化元年・1804年):北側の通りに面した平入のつし二階で、店を兼ねる
- 事務室一(明治初期):主屋の西に建つ一室だけの小さな木造平屋
- 土蔵一(江戸末期):敷地の北西隅に建ち、主屋・事務室一と通りの立面を連ねる
- 離れ(明治中期):土蔵一の背後、敷地の西側に建ち、東で主屋とつながる住まいの棟
- 土蔵二(江戸末期):主屋の背後、敷地の東側に建つ2階建の土蔵
- 釜場及び洗米場(江戸末期):土蔵二の南にあり、米を洗い蒸した作業棟
- 仕込蔵(江戸末期):釜場及び洗米場の南に東西に長く建つ、敷地で最大の蔵
- 槽場及び麹室(江戸末期):仕込蔵の南に接し、南端に麹室を設ける
- 事務室二(明治末期):仕込蔵の南西、南側道路からの入口近くに建つ事務所
米を洗って蒸し、仕込み、搾るという順序が、北から南への建物の並びとほぼ重なる。登録基準は、主屋・事務室一・土蔵一・仕込蔵・槽場及び麹室・事務室二の6件が「国土の歴史的景観に寄与しているもの」、離れ・土蔵二・釜場及び洗米場の3件が「造形の規範となっているもの」である。各棟の造りと見どころは、それぞれのページで紹介している。
鳳鳴酒造の歩み
公式サイトの会社概要によると、鳳鳴酒造の始まりは寛政9年(1797年)に創業した西尾酒造である。昭和20年(1945年)には現在の丹波篠山市域の地酒蔵13蔵が合併して多紀酒造有限会社となり、平成8年(1996年)に鳳鳴酒造株式会社へ社名と組織を改めた。見学施設の玄関口となっている主屋は、蔵元である西尾家の邸宅だった建物である。
丹波篠山市の公式観光サイトは、呉服町で酒造りが続いたのは昭和50年(1975年)までで、この年に清酒の製造を味間蔵に集約したと伝える。使われなくなった蔵は平成13年(2001年)に見学施設「ほろ酔い城下蔵」として整えられ、2年後に9件そろって登録有形文化財となった。
銘柄の「鳳鳴」について、公式サイトは中国の「鳳鳴朝陽」の語に由来すると説明する。鳳凰が初日の出に一声鳴いて災いを払うという言い伝えにちなむ言葉である。平成27年(2015年)には、デカンショ節を軸にした日本遺産「丹波篠山デカンショ節」の構成文化財に「鳳鳴酒造(主屋他8件)」が選ばれた。日本遺産ポータルサイトは、「酒は呑め呑め」と歌われる酒を造り続けてきた蔵の一つとして鳳鳴酒造を紹介している。
鳳鳴酒造の建築年代をめぐる二つの説明
鳳鳴酒造の公式サイトと丹波篠山市の観光サイトは、酒蔵と住居を創業時の寛政9年(1797年)に建てられたものと説明している。一方、文化庁のデータベースは主屋を文化元年(1804年)とし、土蔵一・土蔵二・釜場及び洗米場・仕込蔵・槽場及び麹室の5件を江戸末期、事務室一・離れ・事務室二の3件を明治期としている。
このサイトでは各棟の年代を文化庁のデータベースに従って書いている。創業の年と主屋の建築年は7年しか離れておらず、創業当初の建物が一部に含まれる可能性まで否定するものではないが、9件すべてを寛政9年の建築とする根拠は確認できた資料には見当たらなかった。
鳳鳴酒造を訪ねるには
鳳鳴酒造の「ほろ酔い城下蔵」は、JR福知山線の篠山口駅からウイング神姫のバスで城下町まで約15分、「春日神社前」バス停の近くにある。通りを挟んだ斜め向かいが丹波篠山市立歴史美術館なので、それを目印にすると迷わない。
開館は午前9時30分から午後5時までで、火曜日と年末年始が休み。見学は無料で、個人や少人数ならいつでも入れる。団体は予約をすると係員が館内を案内してくれる(2026年9月確認)。臨時休業もあるので、出かける前に公式の案内を確かめておきたい。
見学は主屋の店内から入り、米蔵、釜場、仕込み蔵、槽場、麹室と進んで、パネル展示と仕込み蔵の音楽振動装置を見て店内へ戻る順路である。見学後は店内で鳳鳴酒造の酒をほぼ全種類試飲できる。離れ・事務室一・事務室二は見学コースに含まれておらず、外から眺める建物である。
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース「鳳鳴酒造主屋」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003575
- 文化庁 国指定文化財等データベース「鳳鳴酒造事務室一」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003576
- 文化庁 国指定文化財等データベース「鳳鳴酒造土蔵一」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003577
- 文化庁 国指定文化財等データベース「鳳鳴酒造離れ」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003578
- 文化庁 国指定文化財等データベース「鳳鳴酒造土蔵二」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003579
- 文化庁 国指定文化財等データベース「鳳鳴酒造釜場及び洗米場」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003580
- 文化庁 国指定文化財等データベース「鳳鳴酒造仕込蔵」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003581
- 文化庁 国指定文化財等データベース「鳳鳴酒造槽場及び麹室」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003582
- 文化庁 国指定文化財等データベース「鳳鳴酒造事務室二」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003583
- 日本遺産ポータルサイト(文化庁)「鳳鳴酒造(主屋他8件)」
- https://japan-heritage.bunka.go.jp/ja/culturalproperties/result/884/
- 日本遺産ポータルサイト(文化庁)「丹波篠山デカンショ節」
- https://japan-heritage.bunka.go.jp/ja/stories/story010/
- 鳳鳴酒造 公式サイト「会社概要」
- https://houmei.wixsite.com/houmeisyuzou/about-8
- 鳳鳴酒造 公式サイト「城下蔵・見学コース」
- https://houmei.wixsite.com/houmeisyuzou/projects-3
- 鳳鳴酒造 公式サイト「城下蔵/味間蔵」
- https://houmei.wixsite.com/houmeisyuzou/kura
- 鳳鳴酒造 公式サイト「雑学」(「鳳鳴」の由来)
- https://houmei.wixsite.com/houmeisyuzou/untitled-c8i
- 丹波篠山市公式観光サイト「鳳鳴酒造 ほろ酔い城下蔵」
- https://tourism.sasayama.jp/houmeisyuzou/
- 丹波篠山市公式観光サイト「日本遺産の町 丹波篠山」
- https://tourism.sasayama.jp/japanheritage/
- ぶらり丹波路(丹波地域公式観光ポータル)「鳳鳴酒造 ほろ酔い城下蔵」
- https://www.burari-tambaji.com/spot/181
- ウイズささやま「歴史美術館」(交通案内)
- https://withsasayama.jp/history-museum/
最終更新日: 2026.09.30
基本情報
| 名称 | 鳳鳴酒造 |
|---|---|
| 所在地 | 兵庫県篠山市呉服町46他 |
| 所有者 | 鳳鳴酒造株式会社 |
| 指定 | 登録有形文化財 9件 |
| 座標 | 35.07666, 135.22033 |