戦火を経て復興した社殿

全国に約3500社を数えるえびす社の総本社、西宮神社。地元では「西宮のえべっさん」と呼ばれ、福の神・商売の神であるえびすを祀る信仰の中心地である。

その本殿は、身舎の前に庇を付した春日造を三棟並べ、相の間で連結した独特の構えを持つ。「西宮造り」とも呼ばれる形式で、向かって右の第一殿にえびす大神、中央の第二殿に天照大御神と大国主大神、左の第三殿に須佐之男大神を祀る。

現在の社殿は昭和36年(1961)の再建にあたる。前身は寛文3年(1663)に四代将軍徳川家綱が寄進したもので、戦前は国宝に指定されていたが、昭和20年(1945)の空襲で焼失した。復興の際に屋根は檜皮葺から銅板葺へと改められ、ほかは旧規に倣って建て直された。

登録の理由と価値

令和7年(2025)3月、本殿は登録有形文化財に登録された(登録番号28-0832)。造形の規範となる建築として評価されている。

特徴は三連春日造という構成にある。前に庇を張り出した春日造の社殿を三棟連ね、一連の屋根でまとめた例はほかになく、戦後に復興されたこの本殿は我が国で唯一の三連春日造社殿とされる。

細部の仕事も見どころで、組物は大斗に絵様の肘木を組み、庇は一連に葺き降ろして両端に隅木を納める。銅板は年月を経て古色を帯び、大規模な社殿をえびすの杜になじませている。

訪れて見るなら

本殿は拝殿の奥に位置するため、参拝者は斎庭越しにその姿を仰ぐことになる。人出の少ない平日には杜が静まり、三つの屋根の重なりが木立を背に判然と見える。

最もにぎわうのは正月の十日えびすで、三日間で百万人ほどが訪れる。中でも1月10日早朝の「福男選び」は名高く、午前6時に表大門が開くと、参拝者が本殿まで約230メートルを走り参りし、先着三名がその年の福男となる。

境内は無料で参拝できる。屋根の銅板は令和6年(2024)に葺き替えられ、今は新しい金属の色が、これから再び古色へと移ろっていく。

Q&A

Q春日造とはどのような様式ですか。
A奈良の春日大社に由来する神社建築で、切妻屋根の前面を庇として長く葺き降ろすのが特徴です。西宮神社の本殿はこの春日造を三棟連ねた珍しい構えを取ります。
Q今の本殿は国宝そのものですか。
Aいいえ。寛文3年(1663)の国宝本殿は昭和20年(1945)の空襲で失われました。現在の建物は昭和36年(1961)の再建で、旧規に倣いつつ屋根を檜皮葺から銅板葺に改めています。
Q本殿の内部に入れますか。
A内部は祭祀のための空間で、一般の立ち入りはできません。参拝は正面から行い、社殿は斎庭越しに拝観します。
Qいつが最もにぎわいますか。
A1月上旬の十日えびすで、三日間で百万人ほどが参拝します。10日早朝には表大門を開いて行う「福男選び」があります。

基本情報

名称西宮神社本殿(にしのみやじんじゃほんでん)
所在地兵庫県西宮市社家町11
指定区分登録有形文化財(建造物)
登録年月日令和7年(2025)3月13日/登録番号 28-0832
年代昭和36年(1961)
構造木造平屋建、銅板葺、建築面積約100㎡
所有者宗教法人西宮神社
公開境内は無料で参拝可能。社殿は斎庭越しに拝観

参考文献

国指定文化財等データベース — 西宮神社本殿
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00015340
えびす宮総本社 西宮神社 公式サイト — 本殿
https://nishinomiya-ebisu.com/guide/honden/
えびす宮総本社 西宮神社 公式サイト — 由緒
https://nishinomiya-ebisu.com/history/

最終更新日: 2026.07.03