如意寺三重塔

元和5年(1619年)の修理で、塔の頂きを飾る相輪の龍車に、文字が刻まれているのが見つかった。そこには至徳2年、すなわち1385年という年が記されていた。この一つの刻銘によって建立年が確定し、如意寺三重塔は西日本でも古い部類に入る塔であることが裏づけられた。

塔が建つのは、神戸市西区櫨谷町の山あい。高さは約21.3メートル、屋根は本瓦葺きである。天台宗の古刹・如意寺の境内にあり、昭和27年(1952年)に国の重要文化財に指定された。

塔を抱く寺

如意寺は天台宗に属し、比金山と号する。寺に伝わる『如意寺旧記』によれば、開基は法道仙人。天竺から飛来したと伝わる伝説の僧で、大化元年(645年)に櫨の霊木から地蔵菩薩を刻んで祀ったのが起こりとされる。こうした縁起には伝承の要素が強い。確かさが増すのは平安期で、円仁が常行堂と文殊堂を建て、寺はやがて二十四坊を数える規模へ広がった。

三重塔が建ったのは、それよりずっと後である。1385年に塔が組まれた頃、寺はすでに長い歴史を持ち、世は南北朝の争乱のただ中にあった。江戸時代、さらに昭和・平成にも修理の手が入り、直近の解体修理では部材や仕口が細部まで点検された。

なぜ重要文化財なのか

国の指定を受ける理由は、その古さと、建立当初の姿をよく保っている点にある。兵庫県内で如意寺より古い塔は、加西市の一乗寺三重塔(国宝)ただ一基。如意寺の塔はそれに次いで古く、後世の大幅な改造を経ず、室町初期の比例と細部をとどめている。

平面は三間四方で、この規模の塔の標準的な構成にあたる。三層の各階には大日如来・釈迦如来・多宝如来が安置され、密教の修法と法華経の教えを一つに結ぶ。建立した天台宗の教学が、そのまま堂内の構成に表れている。

見どころ

塔の足元に立つと、いくつかの細部が目にとまる。塔は礎石の上に直に建ち、まわりには高欄を持たない縁がめぐる。各面の中央間は板唐戸、両脇間は連子窓。柱の上には、大型の塔に見られる複雑な組物ではなく、簡素な間斗束が三間とも置かれ、軒は繁垂木を二段に重ねている。

装飾は控えめで、線の整った造りである。木立と田畑に囲まれた小高い場所に建ち、歩いてぐるりと回りながら、いくつもの角度から眺められる。

境内と行き方

三重塔は、如意寺に残る中世の三棟のうちの一つで、いずれも重要文化財に指定されている。文殊堂は部材の墨書から享徳2年(1453年)の建立とされ、傾斜地に前面を高床とする掛け造り。堂内には智慧の菩薩、文殊菩薩を安置する。阿弥陀堂(常行堂)はさらに古く、鎌倉時代前期にさかのぼる。伽藍から離れて建つ仁王門には、塑像の金剛力士像が立つ。土で造る塑像は中世には珍しく、その点でも貴重とされる。

本堂は戦後に失われ、いまは礎石を残すのみ。寺とその周辺は、樹林と田畑を含めて文化環境保存区域に指定されている。参道に今も里の風情が残るのは、そのためでもある。

如意寺へは、神戸市営地下鉄の西神中央駅から神姫バス(明石駅行き)に乗り、谷口で下車して徒歩約12分。JR・山陽の明石駅からのバス便もある。訪れる人は多くなく、境内はおおむね静かである。

Q&A

Q三重塔はいつ建てられたのですか。
A至徳2年(1385年)です。元和5年(1619年)の修理の際に相輪で見つかった刻銘によって、建立年が確認されました。
Q塔の内部は見学できますか。
A内部は公開されていません。境内から塔の外観を眺め、写真に収めることができます。
Q公共交通機関での行き方を教えてください。
A神戸市営地下鉄・西神中央駅から神姫バス(明石駅行き)で「谷口」下車、徒歩約12分です。JR・山陽の明石駅からのバス便もあります。
Q三重塔のほかに見るべきものはありますか。
A同じく重要文化財の文殊堂(1453年)と、鎌倉前期の阿弥陀堂があります。仁王門の塑像の金剛力士像も見どころです。
Q拝観料は必要ですか。
A境内は基本的に自由に参拝でき、建物は外から拝観します。設備は多くないので、その点をふまえて訪ねてください。

基本データ

名称如意寺三重塔(にょいじ さんじゅうのとう)
所在地兵庫県神戸市西区櫨谷町谷口
指定区分重要文化財(昭和27年〔1952年〕7月19日指定)
年代至徳2年(1385年)建立、室町時代(南北朝期)
構造三間三重塔婆、本瓦葺、高さ約21.3メートル、1棟
所有如意寺(天台宗)
アクセス神戸市営地下鉄・西神中央駅、またはJR・山陽明石駅から神姫バスで「谷口」下車、徒歩約12分

参考文献

文化遺産オンライン「如意寺三重塔」
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/133588
国指定文化財等データベース「如意寺三重塔」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/2254
ウィキペディア「如意寺 (神戸市)」
https://ja.wikipedia.org/wiki/如意寺_(神戸市)
兵庫県の塔「如意寺三重塔」
https://kawai25.sakura.ne.jp/hyougo-nyoiji.htm

最終更新日: 2026.06.04