坂の下に立つ六甲花崗岩
大土神社鳥居は、兵庫県神戸市灘区鶴甲三丁目にある江戸後期の石造鳥居で、平成28年(2016年)8月1日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。文化庁は年代を1751年から1830年の間とし、寸法を高さ5.2メートル、間口4.1メートルと記録する。
六甲川に沿って南北へ細長く延びる敷地の、南端に立つ。ここから上が境内で、以降は登りが続く。
形式は明神鳥居。笠木の両端が緩やかに反り上がり、その下に島木を重ね、貫が柱を貫いて左右に突き出し、笠木と貫のあいだに額束を挟む。直線的で装飾を持たない神明鳥居に対して、部材構成の分化した系統であり、現存する鳥居の大半がこちらに属する。
石材は背後の山から切り出された六甲花崗岩で、表面は磨かず粗面のまま仕上げてある。光は滑らかな面を滑るのではなく、石の粒と工具の痕に引っかかる。高さ5.2メートルという寸法は村社の鳥居としては大きい部類で、文化庁の解説も比較的大規模な鳥居と評している。
絞油と水車、そして鳥居の大きさ
登録番号は28-0649、基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。この鳥居の解説文には、ひとつ変わった記述がある。文化庁が建造物の由来を、地域の産業に直接結びつけているのである。
享保9年(1724年)頃から、六甲川の落差を利用する水車が川沿いに建てられていった。水車業者は菜種や綿実を絞って灯明油をつくり、新在家の浜から船に積んで京阪・江戸へ送った。集落は水車新田と呼ばれ、寛延元年(1748年)、村内の安穏と油の海上輸送の無事を願って当社が創建されたと伝わる。神戸市灘区の資料によれば、天明年間(1781年から1789年)には二十五基の水車が稼働していた。
この規模の鳥居を花崗岩で造ることは、農村にとって小さくない出費である。年代を重ねて読めば、建立は絞油業がもっとも潤っていた時期にあたる。鳥居の大きさは、当時この谷を動いていた金額のひとつの目安と見てよいだろう。
年代については補足が要る。文化庁は江戸後期(1751年から1830年)とするが、地域の紹介記事には江戸中期とするものもある。一次資料である文化庁の記載を採るが、両者の相違は解消されていない。
くぐってから先
バス停から歩いてくると、最初に出会う建造物がこの鳥居である。境内の下手は石垣で囲われ、一部は月極駐車場として使われている。鳥居を抜けると石段が始まり、そこから社殿までは境内の全長にわたって登りが続く。
閉じる門扉はなく、拝観料もかからない。境内は常時立ち入ることができ、撮影の制限もない。常駐の神職はおらず、問い合わせは丹生神社(078-851-2309)が受けている。例祭は4月11日、夏祭は7月27日。
鳥居より上には、昭和4年(1929年)頃の拝殿及び幣殿、その西の蔵、最上部の江戸末期の本殿という三件の登録建造物が並ぶ。平成28年には摂社住吉社本殿・摂社天満社本殿も併せて登録されたが、この二棟は解体され、令和6年(2024年)3月6日付で登録を抹消された。境内には自然石の「かえる石」があり、六甲山へ向かう登山者が無事の帰還を願って撫でていく。背後の樹叢は神戸市の「市民の森」に指定されている。
神戸市バス16系統「六甲ケーブル下」から鳥居までは南へ徒歩3分ほど。阪急六甲駅から歩く場合は北へ約1.8キロメートル、20分前後で、道のりの大半が上り坂である。
Q&A
- 大土神社鳥居の大きさはどれくらいですか。
- 高さ5.2メートル、間口4.1メートルです。文化庁は比較的大規模な鳥居と評しており、水車業と農業を営む村が建てたものとしては目を引く寸法です。
- 大土神社鳥居はどのような石でできていますか。
- 背後の山から採れる六甲花崗岩です。磨き仕上げではなく粗面仕上げとしているため、石の粒や加工の痕跡がそのまま残っています。
- 大土神社鳥居はいつ建てられたのですか。
- 文化庁は江戸後期、1751年から1830年の間としています。地域の資料には江戸中期とするものもありますが、ここでは一次資料の記載を優先し、相違点は未確定として扱います。
- 大土神社鳥居の明神鳥居という形式はどのようなものですか。
- 笠木の両端が反り上がり、その下に島木を重ね、貫が柱を貫通して突き出し、笠木と貫の間に額束を置く形式です。直線的な神明鳥居と対をなす系統で、現存する鳥居の多数派を占めます。
- 大土神社鳥居へのアクセスを教えてください。
- 神戸市バス16系統「六甲ケーブル下」下車、南へ徒歩約3分です。阪急六甲駅からは北へ約1.8キロメートル、徒歩20分ほどで、上り坂が続きます。
基本情報
| 名称 | 大土神社鳥居(おおつちじんじゃとりい) |
|---|---|
| 所在地 | 兵庫県神戸市灘区鶴甲三丁目159他 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) 登録番号 28-0649 |
| 指定年 | 平成28年(2016年)8月1日登録 |
| 員数 | 1基 |
| 寸法 | 石造、高さ5.2メートル、間口4.1メートル。明神鳥居、六甲花崗岩の粗面仕上げ |
| 所有者 | 宗教法人大土神社 |
| 公開状況 | 境内南端に所在。常時見学可・無料 |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース「大土神社鳥居」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00011166
- 文化遺産オンライン「大土神社鳥居」
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/284193
- 兵庫県神社庁 神社検索「大土神社」
- https://www.hyogo-jinjacho.com/data/6301032.html
- 神戸市灘区「灘百選・神社/仏閣」
- https://www.city.kobe.lg.jp/c63604/kuyakusho/nadaku/shokai/miryoku/hyakusen/hyakusennokaizinzyabukkakuu.html
- 文化庁「登録の抹消について」
- https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/massho/index.html
最終更新日: 2026.08.06