旧樋口病院入院棟とは

旧樋口病院入院棟は、茨城県久慈郡大子町にある昭和30年(1955年)建設の木造2階建の病院建築で、平成28年(2016年)に登録有形文化財となった。JR水郡線の大子駅から東へ延びる通りに南面して建つ。

間口に対して奥行が深い。建築面積は215平方メートル、屋根は瓦葺である。正面玄関の脇には旧車庫が付属する。自動車で運ばれてくる患者を受け入れる前提が、平面にそのまま形として残っている。

内部は中廊下を軸に部屋が並ぶ。一階に診察室や手術室、二階に病室。町の診療機能と入院設備が一棟に収まる構成である。平成26年(2014年)には改修が行われている。

登録有形文化財としての価値

旧樋口病院入院棟が登録有形文化財となった根拠は、登録基準のうち「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。個々の意匠の突出ではなく、通りの姿を形づくる一員としての役割が評価された。

戦後の地方の町には、こうした木造の病院が数多くあった。鉄筋コンクリート造の医療施設に建て替えられていく過程で、その大半が姿を消している。旧樋口病院入院棟が残ったのは、医院としての役目を終えたあとも建物が使われ続けたからである。

もう一点、この建物には設計上の意識が見える。木造でありながら、正面の妻側では柱形を見せて垂直方向を強調する。同じ日には、通りを東へ進んだ先に建つ明治の見世蔵、旧外池呉服店店舗も登録されており、大子町の中心部には年代の異なる建築が並んで残ることになった。

見どころ

通りに立って旧樋口病院入院棟の正面を見上げてほしい。妻側の壁面には柱形が浮き出るように処理されており、視線が上へ引き上げられる。木造の建物としては珍しい見え方で、当時の設計者が病院という用途にふさわしい構えを探した跡と読める。

その壁面に十字形の換気口が配されている。機能としては空気を抜くための穴だが、位置と形が明らかに意匠として選ばれている。医療施設であることを外から示す記号にもなっていて、通りを歩いていて足を止める人が多いのはこの部分である。

窓の割り付けも見落とせない。ガラス窓は縦桟によって細長く分割されており、開口部が縦に伸びて見える。柱形と換気口、そして窓の縦線がそろって上へ向かう。昭和30年代の木造建築が、限られた材料でどこまで表情を作れるかを試した結果と言ってよい。

玄関脇の旧車庫は、地方の病院で自動車が使われはじめた時期を示す部分である。建物の年代を考えれば、ここに車を入れることが特別な設備だった。

見学方法とアクセス

旧樋口病院入院棟は個人の所有で、現在は大子産の漆の保全に取り組むNPO法人の拠点として使われている。内部は常時公開されておらず、見学は通りからの外観に限られる。中廊下や病室の様子を見たい場合は、大子町教育委員会事務局生涯学習担当に事前に相談するとよい。

公道から外観を撮影することに制限はない。ただし敷地に立ち入っての撮影や、活動している関係者が写り込む撮影は控えたい。個人の持ち物であり、日常的に使われている建物である。

アクセスはJR水郡線の大子駅から東へ徒歩約4分。駅前から東へ延びる通りをそのまま進むと、南を向いた奥行の長い木造建築が右手に見えてくる。同じ通りをさらに約150メートル進めば旧外池呉服店店舗があり、その途中には大正6年(1917年)築の旧大子銀行本店も建つ。歩いて回れる範囲に登録有形文化財がまとまっている。

建物を使うNPO法人が扱う大子漆は、茨城県が岩手県に次ぐ全国第2位の産地であることを支えている。透明度が高く、輪島塗や春慶塗の仕上げに用いられてきた。旧樋口病院入院棟が漆の拠点になっていることには、この土地の産業の背景がある。

Q&A

Q旧樋口病院入院棟の内部は見学できますか。
A内部は常時公開されていません。個人所有の建物で、現在はNPO法人の活動拠点として使われています。見学できるのは通りからの外観です。内部の見学を希望する場合は、大子町教育委員会事務局生涯学習担当へ事前に問い合わせてください。
Q旧樋口病院入院棟へのアクセスは。最寄り駅からどのくらいかかりますか。
AJR水郡線の大子駅から東へ徒歩約4分です。駅前から東に延びる通りに南面して建っており、道なりに進めば右手に見えます。水戸方面からは水郡線で大子駅へ向かうのが一般的です。
Q旧樋口病院入院棟はいつ建てられ、いつ登録有形文化財になりましたか。
A昭和30年(1955年)の建設です。平成26年(2014年)に改修が行われ、平成28年(2016年)2月25日に登録有形文化財として登録されました。員数は1棟です。
Q旧樋口病院入院棟の写真撮影はできますか。
A公道から外観を撮影することはできます。敷地内への立ち入りや、活動中の関係者が写り込む撮影は避けてください。三脚を使う場合は通行の妨げにならない位置を選んでください。
Q旧樋口病院入院棟の建築で特に注目すべき点はどこですか。
A正面の妻側です。壁面に柱形を見せて垂直性を強調し、十字形の換気口を意匠として配しています。ガラス窓を縦桟で細長く割り付けている点も同じ意図によるもので、木造でありながら上へ伸びる表情を作り出しています。

基本データ

名称旧樋口病院入院棟
所在地茨城県久慈郡大子町大字大子字泉町北側705
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成28年(2016年)登録
員数1棟
寸法建築面積215平方メートル、木造2階建、瓦葺
所有者個人
公開状況外観のみ見学可、内部非公開

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース 旧樋口病院入院棟
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00010909
文化遺産オンライン 旧樋口病院入院棟
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/292620
大子町 旧樋口病院入院棟
https://www.town.daigo.ibaraki.jp/page/page008101.html
茨城県教育委員会 いばらきの文化財 旧樋口病院入院棟
https://kyoiku.pref.ibaraki.jp/bunkazai/bunkazai-registered-5980/
大子町 大子漆(だいごうるし)の紹介
https://www.town.daigo.ibaraki.jp/page/page006809.html

最終更新日: 2026.09.08