水と、酒蔵の名残

井戸屋形は前蔵の北側に建つ。大正11年(1922年)の建立で、東西棟の切妻造銅板葺、桁行の広い吹放ち形式の井戸覆いである。中央東寄りに、煉瓦造で白タイルを張った円筒形の井戸枠を据える。

もう一度見たい細部は銘板である。井戸屋形には「星乃井」の銘板が掲げられている。これは染谷家が造酒屋を営んだ当時の酒銘であり、水を汲むという最も素朴な用のために建てられた建物が、いまは営まない生業を静かに記録している。

指定の理由と価値

井戸屋形は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」として登録され、建築物ではなく工作物に分類される。その価値は、生活空間の全体像を補う点にある。大きな民家は水の供給なしには成り立たず、井戸屋形はその一部として働いた。

軸部は角柱をわずかに内転びに立て、内法貫と桁で固める。井戸の覆いとしては、良材を大ぶりに用いている。

訪ねて見るべきところ

「星乃井」の銘板を探し、屋敷の見え方をあらためたい。染谷家は農業のほか酒造・養蚕・質屋を営み、江戸にも酒屋を構えたと伝わる。その造酒の過去を直接に名指す建物は、この井戸屋形だけである。白タイルを張った煉瓦の井戸枠という大正らしい素材が、伝統的な木の軸部の下に据えられている。

四方が吹放ちなので、井戸のまわりを歩き、内転びの柱と貫が軸部をどう固めているかを間近に見られる。前蔵と並べて見れば、水と米と肥料を扱った屋敷北部の使われ方をたどることができる。

2020年から続いた保存修理を終え、2024年10月に一般公開が始まった。公開は日曜のみ、午前10時から午後4時までで、入場料は大人500円、高校・大学生200円、中学生以下は無料。 所在地は千葉県柏市鷲野谷、手賀沼南岸の台地上。JR常磐線我孫子駅から約5キロで、柏駅からの路線バスも利用できる。

Q&A

Q「星乃井」の銘板は何を意味しますか。
A星乃井は染谷家が営んだ酒の銘柄です。造酒の過去を直接名指す建物は、この井戸屋形だけです。
Qいつ建てられましたか。
A大正11年(1922年)です。
Qなぜ建築物ではなく工作物なのですか。
A壁で囲まれた室ではなく吹放ちの井戸覆いのため、工作物として登録されています。
Q井戸枠は何でできていますか。
A白タイルを張った煉瓦造で、伝統的な木の軸部の下に据えられた大正らしい素材です。
Q井戸のまわりを歩けますか。
A歩けます。四方が吹放ちなので、軸部を固める内転びの柱を間近に見られます。

基本情報

名称染谷家住宅井戸屋形(そめやけじゅうたくいどやかた)
所在地千葉県柏市鷲野谷字稲荷内24
指定区分登録有形文化財(工作物)
登録年月日2019年3月29日(登録番号 12-0287)
年代大正11年(1922年)
構造木造、銅板葺、面積12平方メートル
員数1棟
公開日曜のみ 10:00〜16:00/大人500円(最新情報は公式サイト参照)

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁) — 染谷家住宅井戸屋形
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00012709
染谷家住宅(建造物) — 柏市
https://www.city.kashiwa.lg.jp/bunka/about_kashiwa/culture/rekishi/shiteibunkazai/torokuyukei/someyake.html
染谷家住宅 公式サイト
https://someya-jiemon.com/

最終更新日: 2026.07.09