家の米を納めた蔵

前蔵は主屋の前方に西面して建つ。明治26年(1893年)の建立で、もと米蔵と伝わる。大規模な農業を営み、酒造や質屋も兼ねた家にあって、米の蓄えは食料であると同時に資本でもあった。それを納める蔵は、屋敷の生業を支える装置の一部であった。

木造二階建、切妻造桟瓦葺で、正面に下屋を通し、南寄りに戸口を設ける。

指定の理由と価値

前蔵は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」として登録されている。その価値は、ほぼ一括して残る農家の屋敷構えの一要素である点にある。主屋・長屋門・二棟の蔵・稲荷社・風呂場・肥料小屋・井戸屋形がそろって名主宅の姿を保つ例は多くない。

外壁は真壁造の漆喰塗で、腰は海鼠壁とする。方形の平瓦を斜めに張り、目地を白漆喰で盛り上げた仕上げである。二階東面の中央に窓を穿ち、内部は上下階とも板敷で、上に和小屋を組む。

訪ねて見るべきところ

注目すべきは腰の海鼠壁である。黒い瓦の上に白い格子が盛り上がるこの仕上げは装飾だけではない。壁の裾を跳ね返る雨や地面からの湿気から守る役をもち、その幾何学は、長く使い、見せるために建てられた蔵であることを示す。敷地北端の肥料小屋の素朴な壁と比べれば、二つの附属屋の格の違いがよくわかる。

前に立つ主屋と対で見ると、屋敷が小屋の寄せ集めではなく、構成された一群として読める。約4,000坪、およそ1万3千平方メートルの敷地は、庭園・屋敷林・旧畑地をほぼ往時のまま保っている。

2020年から続いた保存修理を終え、2024年10月に一般公開が始まった。公開は日曜のみ、午前10時から午後4時までで、入場料は大人500円、高校・大学生200円、中学生以下は無料。 所在地は千葉県柏市鷲野谷、手賀沼南岸の台地上。JR常磐線我孫子駅から約5キロで、柏駅からの路線バスも利用できる。

Q&A

Q前蔵は何に使われましたか。
Aもと米蔵と伝わります。蓄えた米は食料であると同時に、家の資本でもありました。
Q海鼠壁とは何ですか。
A方形の瓦を斜めに張り、目地を白漆喰で盛り上げた仕上げです。壁裾を保護し、上質な蔵の目印となります。
Qいつ建てられましたか。
A明治26年(1893年)です。
Q敷地には蔵がいくつありますか。
A登録されているのは二棟で、この前蔵と、より古い慶応3年(1867年)の文庫蔵です。
Q敷地の広さはどれくらいですか。
A約4,000坪、およそ1万3千平方メートルで、庭園・屋敷林・旧畑地を保っています。

基本情報

名称染谷家住宅前蔵(そめやけじゅうたくまえぐら)
所在地千葉県柏市鷲野谷字稲荷内24
指定区分登録有形文化財(建造物)
登録年月日2019年3月29日(登録番号 12-0284)
年代明治26年(1893年)
構造木造2階建、瓦葺、建築面積46平方メートル
員数1棟
公開日曜のみ 10:00〜16:00/大人500円(最新情報は公式サイト参照)

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁) — 染谷家住宅前蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00012706
染谷家住宅(建造物) — 柏市
https://www.city.kashiwa.lg.jp/bunka/about_kashiwa/culture/rekishi/shiteibunkazai/torokuyukei/someyake.html
染谷家住宅 公式サイト
https://someya-jiemon.com/

最終更新日: 2026.07.09