曹洞宗大本山の開創の地を受け継ぐ總持寺祖院

總持寺祖院は、石川県輪島市門前町門前にある曹洞宗の寺院で、元亨元年(1321年)に瑩山紹瑾が開いた諸嶽山總持寺の開創の地に建ち、境内の大祖堂・仏殿・山門など16棟が令和6年(2024年)12月9日に国の重要文化財に指定されている。ほかに香積台・禅悦廊・白山井戸の3件が、平成20年(2008年)3月7日に登録有形文化財に登録された。

正式な寺号は諸嶽山總持寺である。明治の大火のあと本山の機能が横浜市鶴見へ移り、能登に残った開創の地は「祖院」と呼ばれるようになった。寺の案内によれば山内の広さはおよそ2万坪におよぶ。どの建物も總持寺祖院という一つの寺の一部だが、指定と登録はそれぞれ別に行われているので、このサイトでは指定・登録の単位でページを分け、寺全体の歴史と伽藍の配置、拝観の案内をこのページにまとめた。

總持寺祖院の歩み:開創から明治の大火、祖院としての再興まで

寺の由緒によると、瑩山紹瑾が元亨元年(1321年)に總持寺を開くと、翌年の夏には瑩山に帰依した後醍醐天皇が綸旨を下し、總持寺を勅願所と定めた。寺勢はその後も伸び続け、全国の末寺は1万6千を超えたと寺は伝える。輪島市の紹介では、江戸時代に幕府から曹洞宗の大本山と認められ、加賀藩や地元の人々の厚い信仰に支えられて、寺の周りは門前町としてにぎわった。

転機は明治31年(1898年)4月13日の火災である。七堂伽藍の大部分が焼け、これを機に布教の中心は神奈川県横浜市鶴見へ移された。能登の旧地では祖廟として堂宇の再建が進み、焼け残った伝燈院・慈雲閣・経蔵に、大正から昭和初期の大祖堂・仏殿・山門などが加わって今の伽藍の形になった。文化庁の解説は、本山が移ったあとも同等の寺格を保ち、近世以来の規模と構成を受け継いだ伽藍である点を評価している。

平成19年(2007年)の能登半島地震でも總持寺祖院は大きな被害を受けた。修復を終えた寺と輪島市が完全復興を宣言したのは、開創700年にあたる令和3年(2021年)10月のことである。それから2年余りで、令和6年(2024年)1月1日の地震が再び伽藍を襲った。

總持寺祖院の伽藍の配置

参道の正面に立つ三樹松関は、享和3年(1803年)頃の高麗門である。その奥にそびえる山門は二階建ての二重門で、寺の案内では総欅造り、高さ17.4メートル、間口20メートルあり、2階正面に前田利為の筆になる「諸嶽山」の大きな額を掲げる。完成年は、寺が昭和7年(1932年)、文化庁のデータベースが昭和9年(1934年)としていて、記録が分かれる。

山門の先には大正2年(1913年)の仏殿が建ち、本尊の釈迦牟尼仏を祀る。同じ大正2年に建った大祖堂は、法堂と祖師堂を兼ねる總持寺に特有の堂で、正面に瑩山紹瑾、左右に道元と二祖の峨山を祀っている。これらの堂を回廊が結び、回廊のまわりには江戸時代の経蔵や白山社本殿が残る。境内で最も古い白山社本殿は、万治4年(1661年)の建築である。

登録有形文化財の3件について、文化庁の解説は次のように位置を記す。香積台は仏殿の西にある庫裏、禅悦廊は山門と香積台を南北につなぐ廊下、白山井戸は回廊の内側で大祖堂の正面の西寄りに建つ井戸屋である。瑩山紹瑾の霊廟である伝燈院御霊屋(文政5年・1822年)と、その傍らの放光堂(納骨堂)も同じ境内にある。

總持寺祖院の重要文化財と登録有形文化財

總持寺祖院の建造物のうち、令和6年(2024年)12月9日に重要文化財に指定されたのは次の16棟で、筋塀1棟が附として指定に含まれる。年代は文化庁の国指定文化財等データベースによる。

  • 大祖堂:大正2年(1913年)
  • 仏殿:大正2年(1913年)
  • 山門:昭和9年(1934年)
  • 鐘鼓楼及び回廊(鐘鼓楼):大正2年(1913年)頃
  • 鐘鼓楼及び回廊(回廊):大正13年(1924年)頃
  • 放光堂:文化6年(1809年)、明治44年(1911年)移築
  • 慧心廊:大正2年(1913年)頃
  • 玄風廊:大正13年(1924年)頃
  • 伝燈院御霊屋:文政5年(1822年)
  • 伝燈院唐門:大正2年(1913年)
  • 慈雲閣観音堂:文化8年(1811年)
  • 白山社本殿:万治4年(1661年)
  • 白山蔵:江戸時代後期頃、文政4年(1821年)移築
  • 経蔵:寛保3年(1743年)
  • 三樹松関:享和3年(1803年)頃
  • 裏門:文政6年(1823年)、明治後期から大正前期頃に移築

この指定は令和6年(2024年)10月18日の文化審議会の答申を経たもので、指定基準は「意匠的に優秀なもの」と「歴史的価値の高いもの」の2項目である。輪島市によれば、それまで石川県指定だった経蔵、輪島市指定だった慈雲閣と伝燈院、国の登録有形文化財だった大祖堂・仏殿・山門などが、このとき一括して重要文化財になった。

登録有形文化財として残るのは、香積台(昭和29年・1954年頃)、禅悦廊(大正期)、白山井戸(明治45年・1912年頃)の3件である。いずれも平成20年(2008年)3月7日の登録で、登録基準は3件とも「国土の歴史的景観に寄与しているもの」とされている。

令和6年能登半島地震の被害と總持寺祖院の復興計画

令和6年(2024年)1月1日の地震では、山門・大祖堂・仏殿をはじめ總持寺祖院の多くの建物が傷んだ。寺が同年1月29日に公表した被害状況には、禅悦廊が全壊、白山井戸と禅悦廊中門が倒壊と記され、大祖堂の裏山では大規模な地滑りが起きている。拝観は同年6月15日に安全な区域に限って再開され、拝観受付の修繕が済んだ令和7年(2025年)4月1日から通常の形に戻った。立ち入りを禁じた区域は今も残っている。

寺は令和6年10月18日に震災復興本部を置き、令和7年(2025年)2月から令和16年(2034年)3月まで、9年余りをかけて修理を進める計画を示した。復興本部が発足した時点の計画では、重要文化財の16棟は概算約31億円で3期に分けて修理し、登録有形文化財の3件は概算約4億円で、香積台を令和10年(2028年)4月から、禅悦廊と白山井戸を令和14年(2032年)4月から修理する。倒壊した禅悦廊と白山井戸は、令和6年7月から12月にかけて解体され、番号を付けた部材が格納庫に納められている。

總持寺祖院の拝観時間と拝観料

總持寺祖院の拝観時間は午前8時から午後5時までで、12月21日から3月20日までの冬期は午前9時から午後4時までに短くなる。元日(1月1日)だけはこの時間とは別の扱いになる。拝観料は個人の場合、大人500円、高校生と中学生400円、小学生200円で、30人以上の団体には割引がある。料金は令和8年(2026年)4月1日現在のもので、2026年10月に寺の公式サイトで確認した。

僧侶による案内付きの拝観は有料の予約制で、石川県観光連盟の「いしかわ文化観光スペシャルガイド」による案内も選べる。坐禅体験と精進料理は予約で受け付けているが、宿泊を伴う参禅拝宿は地震の影響で当面休止している。修理が続く建物のまわりは立ち入りが制限されているので、建物ごとの見学の可否はそれぞれのページに書いた。

總持寺祖院への行き方と駐車場

公共交通で向かう場合、寺が案内するのは金沢駅から北陸鉄道の能登方面特急・急行バスに乗る経路である。のと鉄道の穴水駅からも路線バスがあり、所要時間は寺の案内では約20分、石川県の観光公式サイトでは35分ほどとされている。能登空港からは車で約30分かかり、予約制の乗合タクシー「ふるさとタクシー」(1,800円)が走っている。自家用車なら、のと里山海道の穴水インターチェンジから約25分である。

寺によれば、令和7年(2025年)5月時点で總持寺祖院の周辺には5か所の駐車場がある。門前総合支所前は乗用車4台分しかなく、總持寺通り商店街の中にある堀端復興広場(徒歩5分)や禅の里広場(徒歩8分)が使いやすい。商店街の道は幅が狭いので、歩く人に気を配りながら進みたい。

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁):總持寺祖院 大祖堂
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/00005607
国指定文化財等データベース(文化庁):總持寺祖院 山門
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/00005609
国指定文化財等データベース(文化庁):總持寺祖院 白山社本殿
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/00005618
国指定文化財等データベース(文化庁):總持寺祖院香積台
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00006827
国指定文化財等データベース(文化庁):總持寺祖院禅悦廊
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00006831
国指定文化財等データベース(文化庁):總持寺祖院白山井戸
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00006830
輪島市:大本山總持寺祖院が、国の【重要文化財】に指定されました
https://www.city.wajima.ishikawa.jp/article/2024101000026/
大本山總持寺祖院:祖院について
https://noto-soin.jp/about/
大本山總持寺祖院:境内のご案内
https://noto-soin.jp/visit/keidai/
大本山總持寺祖院:各種料金
https://noto-soin.jp/fee/
大本山總持寺祖院:交通案内
https://noto-soin.jp/access/
大本山總持寺祖院:總持寺祖院『重要文化財』の指定について
https://noto-soin.jp/news/81/
大本山總持寺祖院:能登半島地震における被害の状況について
https://noto-soin.jp/news/71/
大本山總持寺祖院:拝観の再開について
https://noto-soin.jp/news/76/
大本山總持寺祖院:拝観受付再開しました
https://noto-soin.jp/news/82/
大本山總持寺祖院:總持寺祖院周辺駐車場案内
https://noto-soin.jp/news/83/
大本山總持寺祖院:冬期間における拝観時間について
https://noto-soin.jp/news/86/
大本山總持寺祖院:【震災復興本部だより】復興に向けての歩み①
https://noto-soin.jp/news/90/
大本山總持寺祖院:定期観光バス「能登路」期間限定運行決定!
https://noto-soin.jp/news/95/
大本山總持寺祖院:English
https://noto-soin.jp/en/
ほっと石川旅ねっと(石川県観光公式サイト):大本山總持寺祖院の見所を紹介! 駐車場・アクセス方法も解説
https://www.hot-ishikawa.jp/blog/detail_449.html

最終更新日: 2026.10.04

基本情報

名称總持寺祖院
所在地石川県輪島市門前町門前
所有者宗教法人大本山總持寺祖院
指定重要文化財 1件・登録有形文化財 3件
座標37.28647, 136.77008