旧陸軍省軍馬補充部六原支部官舎第一棟

岩手県胆沢郡金ケ崎町の静かな田園地帯に佇む旧陸軍省軍馬補充部六原支部官舎第一棟は、明治44年(1911年)頃に建てられた佐官級軍人のための洋風木造官舎です。かつて日本陸軍の軍馬育成・供給を担った六原支部の幹部が暮らしたこの建物は、2015年に改修を経て、2016年10月に「軍馬の郷六原資料館」として開館しました。明治末期の洋風建築の特色を色濃く残す貴重な建造物として、2017年5月に国登録有形文化財に登録されています。

歴史的背景

岩手県水沢地方と軍馬との関わりは古く、明治5年(1872年)の兵部省時代にはすでに軍馬を供給していた記録が残っています。明治29年(1896年)に陸軍が軍馬補充部を設置すると、相去村(現・金ケ崎町六原)の村長や胆沢郡会議員を歴任した獣医師・桑島重三郎の誘致活動により、明治31年(1898年)に六原支部が設置されました。

最盛期には約1,000頭もの馬が飼育され、軍馬は乗用馬・輓用馬(荷物を引く馬)・駄用馬(荷物を背負う馬)に分類されていました。支部長や支部員のための官舎は南北の道路沿いに土塁で区切られた9区画に配置され、そのうち明治44年建築の3棟が現存しています。大正14年(1925年)の軍縮に伴い六原支部は廃止され、広大な敷地はその後農場などを経て、現在の岩手県立農業大学校となっています。

文化財指定の理由

本建物は平成29年(2017年)5月2日、第二棟・第三棟とともに国登録有形文化財(建造物)に登録されました。指定の主な理由として、佐官級軍人のための旧陸軍官舎として現存例がきわめて少ないことが挙げられます。洋風下見板張りの外観を持ちながら、中廊下を挟んで東側に和室、西側に洋風の応接室を配するという和洋折衷の間取りは、明治期の建築文化を知る上で重要な資料です。また、玄関を二箇所設ける構成は軍馬への乗降を考慮したものと考えられており、軍馬補充部という特殊な施設ならではの建築的工夫が見られます。明治末期における洋風木造建築として「造形の規範になっている」と評価されています。

建築の見どころ

建物は木造平屋建、寄棟造鋼板葺で、建築面積は117平方メートルです。外観にはイギリス積みの煉瓦基礎、総下見板張りの外壁、上げ下げ窓にモールディング(装飾縁取り)の付いた額縁など、明治期の洋風建築の特徴が随所に見られます。とりわけ注目すべきは「六」の字をかたどった換気口グリルで、六原支部に固有のデザインとして他に類を見ません。

館内では、和洋が融合した独特の間取りを実際に体験できます。洋風応接室には当時の雰囲気を伝える展示が施され、和室部分では畳敷きの空間を見学できます。資料館としては、軍馬補充部時代の写真や資料、地域の歴史に関する展示品が並び、プロスキーヤー・三浦雄一郎氏に関する写真や、誘致に尽力した桑島重三郎に関する資料なども展示されています。

周辺情報

資料館のある六原地区周辺には、見どころのある施設が点在しています。岩手県立花きセンターでは広大な敷地に温室や花壇が整備され、四季折々の花を楽しめます。千貫石森林公園は自然散策やアウトドアレジャーの拠点として親しまれています。金ケ崎町は武家屋敷の町並みが残る城内諏訪小路地区でも知られ、歴史ある街並みの散策と合わせて訪れるのがおすすめです。

Q&A

Q軍馬の郷六原資料館とはどのような施設ですか?
A明治44年頃に旧陸軍が建てた佐官級軍人のための官舎(第一棟)を改修し、2016年10月に開館した資料館です。軍馬補充部時代の写真や資料、地域の歴史に関する展示を行っています。建物自体が国登録有形文化財に登録されています。
Q入館料はかかりますか?
A入館料は無料です。開館日は水・土・日曜日で、開館時間は午前10時から午後4時までです。年末および1月から3月は休館となりますのでご注意ください。
Qアクセス方法を教えてください。
AJR東北本線の金ケ崎駅から車で約10分です。直通の路線バスはありませんので、駅からはタクシーまたは車でのアクセスをおすすめします。
Qこの建物の建築的な特徴は何ですか?
Aイギリス積みの煉瓦基礎、洋風の下見板張り外壁、上げ下げ窓、モールディング付きの額縁など明治期の洋風建築の特徴を備えています。中廊下を挟んで和室と洋風応接室を配する和洋折衷の間取りや、「六」の字をかたどった換気口グリルは特に注目すべきポイントです。
Q他の2棟も見学できますか?
A第二棟・第三棟も国登録有形文化財として登録されており、近くに所在しています。主な展示施設は第一棟ですが、3棟すべての外観を見学することができます。第二棟・第三棟は第一棟に比べてやや簡素な構成の官舎です。

基本情報

名称 旧陸軍省軍馬補充部六原支部官舎第一棟(きゅうりくぐんしょうぐんばほじゅうぶろくはらしぶかんしゃだいいちとう)
施設名 軍馬の郷六原資料館
建築年 明治44年(1911年)頃 / 平成27年(2015年)改修
構造 木造平屋建、寄棟造鋼板葺、建築面積117㎡
文化財指定 国登録有形文化財(建造物) 登録日:平成29年(2017年)5月2日
所有者 岩手県
所在地 〒029-4503 岩手県胆沢郡金ケ崎町六原蟹子沢17-1
電話 0197-43-2077
開館時間 午前10時~午後4時(水・土・日曜日のみ開館)
休館日 月・火・木・金曜日、年末、1月~3月
観覧料 無料
アクセス JR東北本線 金ケ崎駅から車で約10分

参考文献

文化遺産オンライン – 旧陸軍省軍馬補充部六原支部官舎第一棟
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/285636
金ケ崎町役場 – 国登録有形文化財 軍馬の郷六原資料館
https://www.town.kanegasaki.iwate.jp/docs/2017122800027/
軍馬の郷六原資料館 – Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/軍馬の郷六原資料館
HORSE LAND IWATE – 軍馬の郷六原資料館
https://hl-iwate.com/news/1157/
いわての文化情報大事典 – 旧陸軍省軍馬補充部六原支部官舎第一棟
http://www.bunka.pref.iwate.jp/archive/hist570

最終更新日: 2026.04.10