旧後藤家住宅とは
旧後藤家住宅(きゅうごとうけじゅうたく)は、岩手県奥州市江刺岩谷堂の向山公園に移築保存されている江戸時代中期の農家で、元禄8年(1695年)ごろの建築と考えられ、昭和40年(1965年)5月29日に国の重要文化財に指定された。文化庁の指定名称は「旧後藤家住宅(旧所在 岩手県江刺市広瀬)」で、括弧内はもとの所在地を示している。
建物はもともと江刺の広瀬地区にあった。奥州市によると、昭和41年(1966年)から昭和42年(1967年)にかけての修理にあわせて現在地へ移され、建てられた当初の姿に戻された。かつて屋敷に付いていた長屋門は、このとき復原されていない。現在の所有者は奥州市である。
規模は桁行21.5m、梁間10.5mで、奥州市の資料では面積232.9㎡とされる。一重の寄棟造で、屋根は茅葺である。移築先の向山公園は岩谷堂の市街地に近い眺めのよい高台で、その園内に保存されている。
旧後藤家住宅が重要文化財に指定された理由
文化庁の解説は、旧後藤家住宅を東北地方で特に古い民家とし、とりわけ土間の構造が古い形式を保っている点を挙げる。奥州市はさらに具体的に、建物の半分ほどを占める広い土間で柱が二重に立ち、上屋と下屋とで構造上の役割が分かれていることを、ほかに例の少ない特徴として紹介している。
建築年代を押さえる手がかりは、解体修理のときに見つかった。掘立柱の穴の底から笹塔婆の断片が出てきて、そこに元禄8年(1695年)の年紀が記されていたのである。奥州市はこれを根拠に、建物をそのころの建築と考えている。文化庁のデータベースは時代を「江戸中期」、奥州市の別の資料は「江戸時代前期頃」と表現しているが、どちらも17世紀末の元禄年間を指していると読める。
もう1つの評価は、仙台藩領に広まった「直家(すごや)」の典型であることだ。岩手県の民家は、北部の旧南部藩領に多い、母屋と馬屋をL字に組んだ曲家と、南部の旧伊達藩領に多い、一直線の長方形の直家とに大きく分けられる。旧後藤家住宅は、その直家の古い姿をよく伝える1棟とされている。
旧後藤家住宅の見どころ
中に入ったら、まず土間の柱に注目したい。奥州市の説明では、土間の柱は二重に立ち、上屋と下屋とで構造上の役割が分かれている。内側の柱の列と外側の柱の列を見比べながら土間を歩くと、屋根の中心部と外まわりの差し掛け部分とを別々の柱で受ける古い組み方が実感できる。
土間は建物のほぼ半分を占める。農作業や炊事、冬場の仕事場として使われた空間で、今の住宅の感覚からすると驚くほど広い。床の張られた居室側と見比べると、作業の場にどれほどの面積を割いていたかがよく分かる。
外に出たら、建物の長い側を正面から眺めたい。桁行21.5mの長辺に茅の屋根がまっすぐ続く姿は、L字形の曲家とは明らかに違う。直家という呼び名の意味が、この位置からいちばんよく分かる。
旧後藤家住宅の見学方法
奥州市によると、旧後藤家住宅は3月20日から11月15日までの平日に、予約制で公開されている。公開時間は10時〜12時と13時〜17時で、料金は無料である。土日祝日や冬期の公開の案内はないため、訪問日が決まったら早めに奥州市へ問い合わせて予約したい。市のページには、問い合わせ先として歴史遺産課(電話0197-34-1315)が示されている。撮影の可否は公的な案内では確認できないので、予約の際に確かめておくとよい。
旧後藤家住宅のある向山公園へは、東北新幹線の水沢江刺駅から車で約15分である。公共交通での行き方は市の案内に示されていないため、車かタクシーの利用を前提に計画するとよい。
Q&A
- 旧後藤家住宅はいつ建てられ、いつ重要文化財に指定されましたか?
- 解体修理で見つかった笹塔婆の断片に元禄8年(1695年)の銘があり、そのころの建築と考えられています。昭和40年(1965年)5月29日に国の重要文化財に指定されました。
- 旧後藤家住宅の名称に「旧所在 岩手県江刺市広瀬」とあるのはなぜですか?
- もとは江刺の広瀬地区に建っていたためです。昭和41年(1966年)から昭和42年(1967年)にかけての修理で、現在の向山公園へ移築されました。
- 旧後藤家住宅の「直家(すごや)」とはどういう家ですか?
- 母屋を一直線の長方形にまとめた農家の形式で、旧伊達藩(仙台藩)領に多く見られます。旧南部藩領に多いL字形の曲家と対比されます。
- 旧後藤家住宅は見学できますか?料金はかかりますか?
- 3月20日から11月15日までの平日に予約制で公開されています。公開時間は10時〜12時と13時〜17時で、料金は無料です。
- 旧後藤家住宅へはどう行けばよいですか?
- 奥州市江刺岩谷堂の向山公園内にあり、東北新幹線の水沢江刺駅から車で約15分です。
基本情報
| 名称 | 旧後藤家住宅(旧所在 岩手県江刺市広瀬) |
|---|---|
| 所在地 | 岩手県奥州市江刺区岩谷堂字向山1番地(向山公園内) |
| 指定区分 | 重要文化財 |
| 指定年 | 昭和40年(1965年) |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 桁行21.5m、梁間10.5m(奥州市資料では桁行21.54m、梁間10.53m、面積232.9㎡) |
| 所有者 | 奥州市 |
| 公開状況 | 3月20日〜11月15日の平日に予約制で公開(10時〜12時、13時〜17時、無料) |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁):旧後藤家住宅(旧所在 岩手県江刺市広瀬)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/105
- 奥州市:旧後藤家住宅(江刺)
- https://www.city.oshu.iwate.jp/kanko/osusume/4/3/3155.html
- 奥州市:国指定・県指定有形文化財(建造物)解説資料(PDF)
- https://www.city.oshu.iwate.jp/material/files/group/79/1yuukeibunkazai.pdf
- 奥州市:文化財
- https://www.city.oshu.iwate.jp/kanko_bunka_sports/rekishi_bunkazai/1/index.html
最終更新日: 2026.10.05