肝煎の家

旧鈴木家住宅(肝煎りの家)は、岩手県遠野市附馬牛町上附馬牛にある江戸時代末期建築の茅葺農家住宅で、平成18年(2006年)10月18日に国の登録有形文化財に登録された。平成6年(1994年)に遠野ふるさと村の敷地東方へ移築されている。

肝煎(きもいり)とは、南部藩における村役人の呼称である。他地域でいう庄屋にあたり、年貢の取りまとめや争いごとの裁定を担い、百姓と藩の間に立った。その身分が建物に書き込まれている。建築面積380平方メートルは村内最大で、東北の曲り屋としても大きな部類に入る。

桁行十二間、梁間六間

主屋部分は桁行12間、梁間6間。現代の単位でおよそ22メートル×11メートルになる。そこから土間と馬屋部分が前方へ突き出して、曲り屋のL字を描く。木造平屋建、寄棟造、茅葺。

肝煎の格が読めるのは座敷の並びである。床の間付きの10畳の奥座敷が15畳の座敷に続き、その先に8畳の中間が取られる。この規模の座敷を三室つなげるのは、家族の生活空間の話ではない。村の公務を処理し、巡見の役人を迎え、証人としての格式が必要な儀礼を行う場所だった。

同じ村内に数分歩けば普通の農家がある。見比べると差は歴然としている。多くの曲り屋は常居の奥にささやかな座敷を一室置く程度で、三室を並べ、最も奥に床の間を設ける例はまれである。

登録基準は「造形の規範となっているもの」。文化庁の解説は、東北地方でも規模の大きな曲り屋民家であると記している。

同じ屋根の下の馬

土間から入ると、左手にすぐ馬屋がある。家の作業空間と直結した位置で、これは意図された配置だった。南部藩では馬が軍馬として、のちには駄載や耕作の力として育てられ、農家の格は馬の数でも測られた。茅葺の下で飼うことは、冬の保温と出産時の看視を意味した。

遠野ふるさと村は今も馬を飼っている。馬屋は空ではない。白雪という名の白い牝馬が村の看板娘で、ポニーも園路を歩いている。本来その空間のために建てられた場所に馬がいると、間取りの読み方が変わってくる。

村は8.8ヘクタールの敷地に山里の集落を再現している。移築された農家は7棟、水車小屋があり、未舗装の園路と田畑が続く。近隣の建物の年代は幅広い。宝暦12年(1762年)の「こびるの家」、文化9年(1812年)の「弥十郎どん」、江戸末期の「川前別家」、明治中期の「大工どん」。「まぶりっと」と呼ばれる守り人が各戸に入り、縄ないや餅つきの体験を指導する(要事前予約)。

冬には「遠野どべっこ祭り」が開かれる。どべっことは遠野の言葉でどぶろくのこと。曲り家の囲炉裏端がそのまま会場になる。

訪問の計画

遠野ふるさと村の営業は3月から10月が9時から17時(入村受付16時まで)、11月から2月が9時から16時(受付15時まで)。12月30日から1月3日、および1月から3月中旬の毎週水曜日が休村日である。入村料は近年、一般750円、小中高生400円と案内されており、以前の公表額から改定されている。訪問前の確認をおすすめする。電話は0198-64-2300。

内部の見学と撮影は可能で、ペットの同伴も認められている。建物の間は土の道なので、脱ぎ履きしやすい靴が便利だ。

JR遠野駅からは約12キロ、車でおよそ25分。遠野インターチェンジからは約17分である。附馬牛線のバスに「ふるさと村」停留所があるが本数は少ない。駐車場は無料。民俗に関心のある方は、鍋倉公園近くの遠野市立博物館と組み合わせるとよい。昭和55年(1980年)開館、日本で最初の民俗専門博物館とされる施設である。

Q&A

Q旧鈴木家住宅(肝煎りの家)の「肝煎り」とは何を意味しますか。
A肝煎は南部藩における村役人の呼称で、他地域の庄屋にあたります。鈴木家がその役職を務めた家であったことを示す名です。
Q旧鈴木家住宅(肝煎りの家)の内部は見学できますか。
A見学できます。岩手県遠野市附馬牛町の遠野ふるさと村にあり、入村料を払えば移築された曲り家の内部に入ることができます。
Q旧鈴木家住宅(肝煎りの家)はどのくらいの規模ですか。
A建築面積380平方メートル、桁行12間・梁間6間です。遠野ふるさと村で最大の曲り家であり、東北地方の曲り屋民家としても大型の例にあたります。
Q旧鈴木家住宅(肝煎りの家)はいつ建てられ、いつ登録されたのですか。
A江戸時代末期、おおむね1830年代から1860年代の建築とされます。平成6年(1994年)に移築され、平成18年(2006年)10月18日に登録有形文化財となりました。
Q旧鈴木家住宅(肝煎りの家)を見学する際の営業時間と入村料を教えてください。
A遠野ふるさと村は3月〜10月が9時〜17時、11月〜2月が9時〜16時で、受付は1時間前までです。入村料は近年一般750円、小中高生400円と案内されています。事前にご確認ください。

基本情報

名称旧鈴木家住宅(肝煎りの家)(きゅうすずきけじゅうたく(きもいりのいえ))
所在地岩手県遠野市附馬牛町上附馬牛5-89-1(遠野ふるさと村内)
指定区分登録有形文化財(建造物) 登録番号03-0062
指定年平成18年(2006年)10月18日登録
員数1棟
寸法木造平屋建、寄棟造、茅葺、建築面積380平方メートル/桁行12間・梁間6間
所有者文化庁データベースに記載なし
公開状況遠野ふるさと村の入村料により見学可。営業時間は季節により変動

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005730
文化遺産オンライン
https://bunka.nii.ac.jp/index.php/heritages/detail/141498
遠野ふるさと村 公式サイト
https://www.tono-furusato.jp/about
遠野時間(遠野市観光情報サイト)
https://tonojikan.jp/tourism/tono-furusatomura/

最終更新日: 2026.08.06