七宝山持宝院本山寺 ― 讃岐平野の第70番札所

本山寺(もとやまじ)は、香川県三豊市豊中町本山にある高野山真言宗の寺院で、寺伝では大同2年(807年)に空海が開いたとされ、境内の本堂は正安2年(1300年)の建立で昭和30年(1955年)に国宝に指定された。正式には七宝山持宝院本山寺と号し、四国八十八ヶ所霊場の第70番札所にあたる。

本尊は馬頭観世音菩薩で、八十八ヶ所のうち馬頭観音を本尊とするのは本山寺だけとされる。本堂のそばに馬の像が控えているのはこのためである。境内はおよそ2万平方メートル。山の上ではなく平地に伽藍を広げる札所で、周囲の田畑越しに五重塔の先端が見えてくる。

国宝の本堂、重要文化財の二王門、そして江戸時代から明治時代にかけての7棟の登録有形文化財。時代の異なる建物がひとつの境内にまとまって残り、中世の仏堂と近世の復興整備を同じ視野で見比べられる点に、この寺の建築上の面白さがある。

長福寺から本山寺へ

寺伝によれば、平城天皇の勅願を受けた空海が大同2年に開き、当初は長福寺と称した。本堂を一夜ほどの短期間で建てたという伝説も残る。本山寺の名は地名に由来し、江戸時代後期、19世紀ごろにこの名で呼ばれるようになったとされる。

建物の年代を確かめる手がかりは、本堂の棟木と礎石にある。文化庁の解説によれば、棟木の銘には暦仁2年(1239年)、建長7年(1255年)、正応4年(1291年)の修理が記され、正安2年に改築されたとある。礎石の裏面にも正安2年の墨書が見つかり、現在の本堂がこの年の再建であることが確定した。その後も天文8年(1539年)、寛文3年(1663年)、文政元年から3年(1818年から1820年)と修理が続き、天保13年から14年(1842年から1843年)の解体修理では外観が江戸風に改められた。これを当初の姿へ戻したのが昭和30年の解体修理である。

天正年間には長宗我部氏の讃岐侵攻があった。四国八十八ヶ所霊場会の案内は、兵が本堂に踏み込んで住職を斬りつけたとき、脇仏の阿弥陀如来の右手から血が流れ落ち、驚いた軍勢が退いたため本堂は焼けなかったという伝承を紹介している。この阿弥陀如来は「太刀受けの弥陀」と呼ばれる。

本堂以外の堂宇は、多くが江戸時代の整備による。大日堂は室町時代の古材を使って18世紀中期に整えられ、十王堂が宝暦9年(1759年)、大師堂が寛政7年(1795年)、宝蔵が天保4年(1833年)に建った。文化庁は大師堂を、この境内の復興整備の実像を示す建物と評している。明治43年(1910年)には住職の頼富実毅(よりとみじっき)が五重塔を再建し、同じ年に本堂東側の石造冠木門が築かれた。大正3年(1914年)には八脚門の大門が移築されている。

国宝・重要文化財・登録有形文化財の内訳

本堂は大正13年(1924年)4月15日に旧制度のもとで国の保護対象となり、昭和30年(1955年)6月22日に国宝に指定された。桁行五間・梁間五間、一重、寄棟造、向拝三間、本瓦葺。文化庁は密教本堂の好例とし、内陣の厨子も優れていると評価している。

二王門は明治37年(1904年)8月29日に指定された重要文化財で、室町時代中期の三間一戸八脚門である。境内の南口にあたる。

平成26年(2014年)12月19日には、大師堂・十王堂・大日堂・宝蔵・鐘楼・大門・冠木門の7件が国の登録有形文化財に登録された。登録番号は37-0408から37-0414まで連続している。6件は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」として、石造の冠木門だけは「再現することが容易でないもの」として登録された。

このほか、室町時代末期の様式を残す鎮守堂が香川県指定有形文化財、明治の五重塔が三豊市指定有形文化財となっている。

境内の歩き方

正式な入口は南の二王門である。門をくぐると正面に本堂が構え、その手前の左右に2棟の堂が向かい合う。本堂の南東で西を向くのが大師堂、南西で東を向くのが十王堂で、参拝者は2棟のあいだを抜けて本堂へ進むことになる。本堂の西脇には一段高い基壇があり、南を向いて小さな宝形造の大日堂が建つ。地元では赤堂とも呼ばれる。

境内の南東部、乱石積の基壇に立つのが鐘楼。大師堂の南脇には境内東側の南寄りを固める八脚門の大門があり、本堂の東辺には花崗岩を組んだ冠木門が口を開ける。二王門・大門・冠木門と、この寺には門が3つある。どれが国の重要文化財かを混同しやすいので、南の二王門だけが重要文化財と覚えておくとよい。

宝蔵は本堂の北、本坊の東南に西を向いて建つ。本坊は寺の生活と寺務の区画にあたるため、参拝路からは少し離れている。

年中行事

四国八十八ヶ所霊場会の案内では、7月の土用の丑の日にきゅうり加持が行われる。5月の連休(5月3日から6日)と秋の連休には五重塔の特別見学会が開かれ、ふだん入れない塔の内部を見る機会になる。8月23日の夜にはとうろう流しがあり、毎月28日には護摩祈祷会が営まれる。

拝観とアクセス

境内に拝観料は設けられておらず、札所として日中は参拝者に開かれている。納経所の受付は四国八十八ヶ所霊場会の統一時間で午前8時から午後5時まで(令和6年(2024年)4月の改定後)。所在地は香川県三豊市豊中町本山甲1445、電話は0875-62-2007。宿坊はない。

鉄道ではJR予讃線の本山駅が最寄りで、三豊市の案内では駅から徒歩約20分。車の場合は高松自動車道のさぬき豊中インターチェンジから約5分で、国道11号を観音寺方面へ進み、本山橋北詰の交差点を右折して直進すると五重塔が見えてくる。駐車場は左手にあり、三豊市観光交流局によれば約30台分。

各棟の内部公開の有無や見どころは、それぞれのページにまとめてある。建物の外観は境内から見られるが、堂内の撮影や法要中の撮影は控え、現地の掲示に従いたい。

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)本山寺本堂
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/3305
国指定文化財等データベース(文化庁)本山寺二王門
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/3304
国指定文化財等データベース(文化庁)本山寺大師堂
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010368
国指定文化財等データベース(文化庁)本山寺冠木門
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010374
三豊市 四国八十八ヶ所霊場第70番札所本山寺
https://www.city.mitoyo.lg.jp/kakuka/seisaku/sangyo/14_1/2/2510.html
三豊市 文化財一覧(建造物)
https://www.city.mitoyo.lg.jp/kakuka/kyouikuiinkai/shogai/3_1/history_bunnkazai/13926.html
三豊市 文化財一覧(登録有形文化財)
https://www.city.mitoyo.lg.jp/kakuka/kyouikuiinkai/shogai/3_1/history_bunnkazai/13938.html
四国八十八ヶ所霊場会 七宝山持宝院本山寺
https://88shikokuhenro.jp/70motoyamaji/
三豊市観光交流局 四国霊場第70番札所本山寺
https://www.mitoyo-kanko.com/facility/motoyamaji/
全国観光資源台帳(日本交通公社)本山寺
https://tabi.jtb.or.jp/res/370034-

最終更新日: 2026.09.26

基本情報

名称本山寺
所在地香川県三豊市豊中町本山甲1445
所有者宗教法人本山寺
指定国宝 1件・重要文化財 1件・登録有形文化財 7件
座標34.13950, 133.69404