高辻通に北面する染料問屋の町家

旧武田家住宅主屋は、京都市下京区高辻通油小路東入永養寺町242-1にある明治前期建築の木造2階建町家で、平成26年(2014年)4月25日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。

高辻通に北面して建ち、大型町家に用いられる表屋造の形式をとる。通りに面した表屋と、その奥に建つ居住部を別棟として、あいだを庭でつなぐ構成である。この平面を選ぶのは、商いと家庭を分けて置きたい商家であることが多い。武田家は染料問屋を営んでいた。染織を産業の柱としてきた都市において、それは規模の大きな商売である。

通りに向いた顔は上下で性格が変わる。一階は出格子と平格子を組み合わせ、木の桟が細かく街路を仕切る。二階は一転して土塗の大壁とし、閉じた平滑な面に横長の窓を穿つ。建築面積131平方メートル。文化庁は年代を明治前期(1868〜1882年)、大正5年(1916年)改修と記録している。

二つの廻り階段と、それを刻んだ大工

京都に残る町家は多い。そのなかでこの家を際立たせているのは内部造作であり、証拠は居住部に入ってすぐの位置にある。

玄関庭から主屋へ上がると、正面に廻り階段が現れる。昇りながら向きを変えていく階段である。意匠の異なるもう一つの廻り階段が、別の場所にもう一箇所据えられている。一軒の町家に廻り階段が二つというのは贅沢に近い。通常の町家であれば、押入れの脇に急な直階段を一つ収めて済ませる。

この仕事は、舞鶴から呼び寄せた丹後大工の手によるという。日本海側、北へ80キロほどの地から来た職人たちである。明治から大正にかけて、彼らは宮大工と船大工の木造技術を和洋折衷の建築に応用し、カトリック宮津教会をはじめとする仕事を残した。曲線の扱いが船体の造作に由来する部分もあり、その系譜がこの階段には見てとれる。

もう一つの見せ場は一階最奥の浴室である。天井は八角形に穿たれる。壁面はタイルで覆われ、窓格子は室内から見た姿と庭側から見た姿が違って読めるように割られている。二階の欄間には菊の文様。文化庁の解説は、大正初期の居住部について、上下階とも八畳を主室とし、座敷飾に数寄屋風の手法を加えている点を挙げている。

見学できる範囲、できない範囲

個人の住宅であり、公開事業は行われていない。受付も開館時間もなく、一般の内部見学はできない。登録有形文化財の制度に公開の義務はなく、全国に約1万4千件ある登録建造物の大半は非公開のままである。

外観は事情が異なる。そして登録基準が実際に評価しているのは、その外観のほうだ。この建物に適用された基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」で、これは部屋の中身ではなく街路についての判断である。高辻通に立って一階の格子の割り付けを眺めることは、この文化財の正当な見方といえる。

なお、この家は京町家を扱う不動産会社・八清を通じて賃貸に出されたことがあり、住居用・事業用いずれの募集も行われた。入居状況は変わるため、店舗などとして開かれる可能性を期待する向きは、現在の募集情報を確認してほしい。

道路からの撮影に制限はない。玄関の内側や塀越しにレンズを向けるのは、ここでは控えるべきである。

行き方と、紛らわしい同名物件

地下鉄烏丸線四条駅から徒歩約9分、阪急京都線烏丸駅から約12分。市バスなら「西洞院仏光寺」下車で徒歩3分。仏光寺は歩いてすぐ、錦市場も20分圏内なので、四条より南の古い商業地区を歩く道筋に自然に組み込める位置である。

二点、区別しておきたいことがある。富山県高岡市の武田家住宅はまったく別の物件で、18世紀の茅葺農家住宅、昭和46年(1971年)に国の重要文化財に指定されている。京都の武田家とのつながりはない。もう一点、登録名にある「主屋」は表屋の奥に建つ居住部を指す語だが、登録そのものは一棟として建物全体を対象としている。

Q&A

Q旧武田家住宅主屋の内部は見学できますか。
Aできません。個人所有の住宅で公開事業はなく、開館時間や拝観の受付もありません。外観は高辻通から自由に見ることができます。
Q旧武田家住宅主屋はいつ建てられ、いつ登録されましたか。
A文化庁の記録では明治前期(1868〜1882年)の建築で、大正5年(1916年)に改修されています。国の登録有形文化財となったのは平成26年(2014年)4月25日、登録番号は26-0450です。
Q旧武田家住宅主屋の「表屋造」とはどのような形式ですか。
A通りに面した表屋と奥の居住部を別棟とし、あいだに庭を挟む大型町家の形式です。一つの敷地のなかで商いの場と家族の生活を分けることができます。
Q旧武田家住宅主屋へは電車でどう行けますか。
A地下鉄烏丸線四条駅から徒歩約9分、阪急京都線烏丸駅から約12分です。市バスの場合は「西洞院仏光寺」下車、徒歩3分。
Q旧武田家住宅主屋は富山県の武田家住宅と同じものですか。
A別の建物です。富山県高岡市の武田家住宅は18世紀の茅葺農家住宅で、昭和46年(1971年)に国の重要文化財に指定されています。姓が同じであるだけで関係はありません。

基本情報

名称旧武田家住宅主屋(きゅうたけだけじゅうたくしゅおく)
所在地京都府京都市下京区高辻通油小路東入永養寺町242-1
指定区分登録有形文化財(建造物) 登録番号 26-0450
指定年平成26年(2014年)4月25日登録(第77回)
員数1棟
寸法木造2階建、瓦葺、建築面積131平方メートル
所有者個人
公開状況非公開(外観のみ高辻通から見学可)

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁) — 旧武田家住宅主屋
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00009994
文化遺産オンライン — 旧武田家住宅主屋
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/232421
物件ファン — 高辻通の登録有形文化財を紹介する記事
https://bukkenfan.jp/e/8964999688646891689
八清 — 当該物件の賃貸情報
https://www.hachise.jp/rent/70591/
高岡市 — 武田家住宅(富山県にある別の重要文化財)
https://www.city.takaoka.toyama.jp/soshiki/kyoikuiinkai_bunkazaihogokatsuyoka/1/4/8/4201.html

最終更新日: 2026.08.08