寶塔寺の入口に立つ室町中期の四脚門

寶塔寺の総門は、室町時代中期、おおよそ1393年から1466年の間に建てられた四脚門である。京都市の南、伏見区深草にある日蓮宗の寺院で、その正面入口にあたる門が、国の重要文化財に指定されている。すぐ北には伏見稲荷大社が広がり、朱の鳥居を目当てに歩く人の多くが、この門の前を通り過ぎていく。

四脚門という名は、その構造をそのまま指している。屋根を支える中央の親柱(本柱)二本に対し、前後にそれぞれ二本ずつ、計四本の控柱を添えた形式である。この四本の脚にあたる柱が名の由来で、寺社の正式な門に広く用いられた様式だった。屋根は切妻造で、平瓦と丸瓦を交互に葺く本瓦葺で仕上げられている。

五百年を超えて立ち続けてきた建物にしては、規模は小さく、構えも控えめである。境内へ向かう人の足を強く引き留めるわけではない。だからこそ、立ち止まって見上げる者にだけ、その古さがゆっくりと立ち現れる。

重要文化財に指定された理由

この門が重要文化財に指定されたのは、明治39年(1906年)4月14日のこと。明治期の文化財保護のなかでも早い時期の指定で、同じ境内の多宝塔も同日に指定を受けている。

評価の柱は二つある。一つは年代の古さ。寶塔寺は応仁元年(1467年)の応仁の乱でその伽藍の大部分を焼失し、再興が本格化するのは天正18年(1590年)、八世日銀の代を待たねばならなかった。総門は様式の上から室町中期に位置づけられており、永享10年(1438年)以前とされる多宝塔とともに、境内に残る最も古い部類の建築にあたる。なお多宝塔は京都市内に現存する最古の多宝塔とされる。

もう一つは形式そのものの価値である。室町中期に建てられた四脚門が、切妻の屋根と本瓦葺をとどめたまま残る例は、中世の寺院門がどのような比例で組まれていたかを知るうえで貴重な手がかりになる。隣接する本堂は慶長13年(1608年)の再建で、日蓮宗の本堂としては現存最古とされることが多い。総門・多宝塔・本堂と、建立年代の異なる建築が一つの境内に重なって残っている。

門の見どころ

くぐる前に、まず正面で足を止めたい。四本の控柱が中央の親柱に向かってわずかに内に傾く様子、瓦の棟の下にのぞく切妻の三角の妻面。組物は華やかさを抑えた簡素なつくりで、室町中期の寺院建築らしい落ち着いた手仕事がうかがえる。

次に、門の内側を見通してほしい。総門の先には、ゆるやかに上る石畳の参道が約百メートル続き、両側には塔頭が並ぶ。突き当たりに待つのは、まったく趣の異なるもう一つの門、正徳元年(1711年)に再建された朱塗りの仁王門で、天井板およそ二百五十枚の一枚ごとに牡丹が描かれている。古色を帯びた総門と、鮮やかな後世の門。この落差が、参拝の楽しみの一つになっている。

総門の外には、『源氏物語』にちなんだ小さな苑がある。寶塔寺の前身である真言系の極楽寺は『源氏物語』に名が見え、物語の人物がここに添えられている。かたわらには旧極楽寺の伽藍石が置かれ、日蓮宗の寺となる以前の長い歩みの、静かな痕跡となっている。

寺と周辺

寶塔寺は伏見稲荷大社の少し南に位置する。稲荷大社は日本でも有数の参拝者を集める場所だが、その朱の鳥居をくぐった人のうち、徒歩十数分の先に国指定の建築三棟を抱える静かな寺があると知る人は多くない。

門と参道の先も、ゆっくり歩くほど見どころが増える。多宝塔の下層の屋根には行基葺という珍しい瓦の葺き方が用いられている。本堂の背後には山腹へと石段が続き、寛文6年(1666年)に勧請された七面宮へと至る。参道沿いの塔頭は十六世紀末から十七世紀にかけて相次いで開かれており、この一本の坂道を上るだけで、いくつもの時代の建築を順にたどることになる。

境内の拝観は無料で、終日開かれている。伏見稲荷の散策に無理なく組み込める一棟といえる。実用的な情報は下の表にまとめた。

Q&A

Q門は見学できますか。拝観料はかかりますか。
A見学できます。総門は寶塔寺の正面入口にあたり、境内の拝観は無料です。境内は日中であれば自由に立ち入ることができ、寺務所の受付はおおむね9時から17時です。
Qアクセス方法を教えてください。
A京阪本線の龍谷大前深草駅から徒歩約10分、JR奈良線の稲荷駅からは徒歩約10〜15分です。京都駅からタクシーでおよそ20分ほどになります。
Q伏見稲荷大社から近いですか。
A近いです。寶塔寺は稲荷大社の少し南、徒歩十数分の距離にあり、深草界隈を歩く一度の外出で両方を無理なくまわれます。
Q四脚門とはどのような門ですか。
A屋根を支える中央の親柱二本に、前後二本ずつ計四本の控柱を添えた形式の門です。この四本の控柱が「脚」にあたり、名の由来になっています。寺社の正式な門に広く使われた様式です。
Q門のほかに見ておくとよいものは。
A永享10年(1438年)以前とされ京都市内最古とされる多宝塔と、慶長13年(1608年)再建の本堂は、いずれも重要文化財です。後世の朱塗りの仁王門は、牡丹を描いた天井とともに、古い総門との対比が見どころになります。

基本情報

名称寶塔寺四脚門(総門)
所在地京都府京都市伏見区深草宝塔寺山町
指定区分重要文化財(建造物)/明治39年(1906年)4月14日指定
時代室町時代中期(およそ1393〜1466年)
構造・形式四脚門、切妻造、本瓦葺/1棟
所有者寶塔寺
拝観無料・境内自由
アクセス京阪本線 龍谷大前深草駅から徒歩約10分/JR奈良線 稲荷駅から徒歩約10〜15分

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース(寶塔寺四脚門)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/1919
寶塔寺 公式サイト
https://houtouji.jp/
京都に乾杯 宝塔寺(七面山)
https://www.kyotonikanpai.com/spot/04_01_tofukuji_inari/hotoji.php
とっておきの京都プロジェクト 宝塔寺 七面宮
https://totteoki.kyoto.travel/48470/
京都通百科事典 宝塔寺
https://www.kyototuu.jp/Temple/HoutouJi.html

最終更新日: 2026.06.03