今林家住宅とは

今林家住宅は、京都府宮津市字万町にある糸問屋今林家の屋敷で、江戸時代末期から明治期にかけて建てられた主屋・旧店舗と5棟の土蔵、あわせて7棟が平成14年(2002年)と平成21年(2009年)の2回に分けて登録有形文化財となった。通りに面して主屋と旧店舗が並び、主屋の東に米蔵、敷地の奥に糸蔵・旧生糸蔵・道具蔵・味噌蔵が建つ。

今林家は江戸時代に「かなや」を屋号とした商家で、丹後縮緬の原料となる生糸を扱った。屋敷はいまも個人の住まいとして使われている。宮津市の歴史紹介は、主屋と、生糸店を営んだ旧店舗をこの家の代表的な建物として挙げている。

京都府北部の日本遺産「300年を紡ぐ絹が織り成す丹後ちりめん回廊」では、今林家住宅は構成文化財のひとつに数えられている。

丹後縮緬と糸問屋「かなや」

江戸時代の丹後縮緬は、京都の問屋を経て「丹後絹物」の名で全国に流通した。京都には丹後の織物を一手に扱う問屋仲間があり、宮津藩側の生産者や荷主は、値段も売り先も自由に決められなかった。原料の生糸も京都西陣の生糸商から仕入れ、奥羽の産が使われていた。

この仕組みの外側で、全国から生糸を直接買い集める商人が宮津の城下町に現れる。今林家五代の仲蔵はその一人だった。安永6年(1777年)に生まれ、15歳で岩滝(現在の与謝野町)の山家屋に奉公に入り、文化13年(1816年)、41歳で独り立ちして糸問屋を開いた。

家業は糸問屋を柱に、縮緬の生産や北前船による廻船業へと広がった。地元のNPO法人天橋作事組の紹介は、倉庫業、米や砂糖の商い、酒造と醤油の製造も挙げ、今林家が宮津藩の町名主・御用商人として名字帯刀を許されていたと記す。

商いは大正3年(1914年)に閉じられた。その後も八代仲蔵が日韓の貿易会社の設立にかかわり、九代仲蔵は宮津町の助役や宮津銀行の頭取を務めた。大林組の設計部長として旧大阪市庁舎や中之島公会堂、旧加悦町役場の設計に携わった今林彦太郎も、この一族の出である。

万町の敷地と7棟の配置

万町(よろずまち)は、旧宮津城下の本町の南を東西に延びる町筋である。日本歴史地名大系によれば、弘化2年(1845年)の城下絵図では通りの東部が万町、西部が鍛冶屋町と書き分けられていた。

今林家住宅の敷地は、この通りの北側にある。主屋は切妻造・平入で通りに面し、その西に高塀をはさんで旧店舗が南を向いて並ぶ。米蔵は主屋の東で通りに接する。残る4棟は敷地の奥にあり、糸蔵は北西部で主屋に接し、旧生糸蔵は旧店舗の後方、道具蔵は北端、味噌蔵は北東の隅に建つ。糸蔵・米蔵・道具蔵・味噌蔵の4棟はいずれも東西に棟を通す。

規模の差は大きい。建築面積は主屋が261平方メートル、旧店舗80平方メートル、糸蔵44平方メートル、道具蔵39平方メートル、米蔵25平方メートル、旧生糸蔵22平方メートル、味噌蔵17平方メートルである。

年代は、旧生糸蔵が安政5年(1858年)、旧店舗が江戸末期、主屋が明治25年(1892年)で、4棟の蔵は明治期とされる。旧生糸蔵について文化庁のデータベースは西暦欄を1857年としており、和暦と1年ずれる。

登録の経緯と基準

登録は2回に分かれる。平成14年(2002年)8月21日に主屋・糸蔵・米蔵・道具蔵・味噌蔵の5棟が登録され、平成21年(2009年)1月8日に旧店舗と旧生糸蔵の2棟が加わった。あとから加わった2棟のほうが年代は古い。

  • 主屋(明治25年、大正期増築/登録番号26-0135)
  • 米蔵(明治期/登録番号26-0136)
  • 糸蔵(明治期/登録番号26-0137)
  • 道具蔵(明治期/登録番号26-0138)
  • 味噌蔵(明治期/登録番号26-0139)
  • 旧店舗(江戸末期、昭和27年頃・平成20年改修/登録番号26-0332)
  • 旧生糸蔵(安政5年、平成20年改修/登録番号26-0333)

登録の基準は棟によって3通りある。主屋・旧店舗・旧生糸蔵は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」、米蔵・道具蔵・味噌蔵は「再現することが容易でないもの」、糸蔵だけが「造形の規範となっているもの」である。

蔵には共通する特徴がある。文化庁の解説は、味噌蔵を含む4棟の蔵が軒の垂木を扇状に配すること、それが宮津市内の土蔵に点々と見られるつくりであることを記す。京都府国登録文化財所有者の会(京都登文会)の紹介はこれを隅扇垂木と呼び、宮津を中心に丹後で働いた大工の仕事がうかがえる地域の特徴としている。

見学とアクセス

今林家住宅は個人の住まいである。京都登文会の案内は公開状況を「要問合」とし、公開の対象を旧店舗と旧生糸蔵の2棟に限っている(2026年9月25日確認)。一方、天橋作事組の町家案内は内部非公開と記しており、二つの案内は一致しない。内部の見学を望む場合は、登文会の案内にある連絡先へ事前に問い合わせてほしい。公開日や料金の案内は見当たらない。

通りから見られるのは、主屋・旧店舗・米蔵の3棟の表側である。格子と卯建の並ぶ町家2棟と、海鼠壁の蔵が一続きになる正面は、通りの向かい側から眺めると全体がつかみやすい。ほかの4棟は敷地の奥にあり、外からはほとんど見えない。住まいなので、撮影は公道から外観にとどめ、門口には立ち入らないようにしたい。

最寄り駅は京都丹後鉄道の宮津駅で、歩いて15分ほどが目安になる。見学者向けの駐車場の案内は見当たらない。

参考文献

国指定文化財等データベース 今林家住宅主屋(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002945
国指定文化財等データベース 今林家住宅旧店舗(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00007510
国指定文化財等データベース 今林家住宅糸蔵(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002947
国指定文化財等データベース 今林家住宅旧生糸蔵(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00007511
国指定文化財等データベース 今林家住宅米蔵(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002946
国指定文化財等データベース 今林家住宅道具蔵(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002948
国指定文化財等データベース 今林家住宅味噌蔵(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002949
第103回 今林家と糸問屋(宮津市)
https://www.city.miyazu.kyoto.jp/site/citypro/5164.html
今林家住宅(京都府国登録文化財所有者の会)
https://www.kyoto-tobunkai.org/catalogue/51.html
宮津町家案内 今林家(NPO法人天橋作事組)
https://www.tenkyo-sakuji.jp/imabayashi.html
300年を紡ぐ絹が織り成す丹後ちりめん回廊 構成文化財(日本遺産ポータルサイト)
https://japan-heritage.bunka.go.jp/ja/stories/story043/culturalproperties/
今林家住宅(海の京都観光圏)
https://uminokyoto.jp/spot/detail.php?sid=254
万町(宮津城下)(コトバンク・日本歴史地名大系)
https://kotobank.jp/word/%E4%B8%87%E7%94%BA-3027019

最終更新日: 2026.09.25

基本情報

名称今林家住宅
所在地京都府宮津市字万町604-1
指定登録有形文化財 7件
座標35.53613, 135.19196