現存最古の鉄筋コンクリート造機関車庫

梅小路機関車庫(うめこうじきかんしゃこ)は、京都府京都市下京区歓喜寺町に建つ大正3年(1914年)11月竣工の扇形機関車庫で、平成16年(2004年)12月10日に国の重要文化財(建造物)に指定された。

JR京都駅から西へおよそ1.5キロ。わが国に現存する鉄筋コンクリート造の機関車庫としては最も古い。前面の転車台を中心に20本の引込線が放射状に延び、建物はほぼ東西方向へ扇形の弧を描く。建築面積は3870.57平方メートル。指定の範囲には建物本体に加えて、電動天井走行クレーンと引込線が含まれている。

建設は、京都駅の旅客と貨物の増加にともなって実施された京都停車場改良工事の一環だった。大正2年(1913年)12月に起工し、11か月後の翌年11月に竣工している。この起工・竣工年月は、鉄道院西部鉄道管理局が大正6年(1917年)に刊行した『京都停車場改良工事紀要』による。施工は大林組が担当した。

設計者については資料の性格を押さえておく必要がある。設計体制を正確に記した文書は見つかっていない。『鉄道建築ニュース』昭和27年(1952年)34号に収められた鉄道関係者の座談会記事は、京都駅本屋の設計を担当した鉄道院技師の渡辺節が設計にあたり、平面計画については技師の石田太郎、構造については技師の大井上前雄の指導を受けたとしている。文化庁の解説もこの経緯を出典を添えて紹介している。

建築の構成を読む

構造には「アンネビック式」(Hennebique system)が用いられた。梁・柱・床版を一体に打設するフランス発の初期の鉄筋コンクリート工法である。大正3年の日本ではまだ新しい技術であり、これを産業建築にこの規模で適用したこと自体が挑戦だった。

立面は構造そのままの明解な構成をとる。柱と梁を見せ、大梁を扇の形に沿って放射状に配する。正面の開口部には欄間を設け、側面と背面には縦長の窓を並べる。屋根は陸屋根でアスファルトルーフィング仕上、外壁はモルタル吹付、床は基本的にアスファルト仕上である。

内部は機能によって三つに分かれる。

器械場は、正面4.6メートル、背面8.1メートル、側面23.4メートルの台形平面を横に七つ連ねた形をとる。機関車の底部を点検するための灰坑が放射状に等間隔で七基、西側の床には修理用の円弧平面のドロップピットが一基据えられている。この区画の背部では屋根が一段高くなり、スパン15.6メートル、高さ12.2メートルの大架構が組まれる。ここに架けられているのが、大正4年(1915年)月島機械製造の電動天井走行クレーンである。

器械場の背面に張り出す職場は、側面22.8メートル、背面24.0メートルの矩形平面。ほぼ中央にもう一基の円弧平面のドロップピットを設け、南東隅には鉄製扉を付けた事務室を配する。

機関車駐留場には残る13線が収まる。東側10線は西側3線より奥行きを深くとっており、大型機関車の駐留に対応させたものである。東側の妻壁を見ると、コンクリートではなく煉瓦で築かれている。将来の増築に備えた仕様だが、その増築は行われなかった。

指定基準は「技術的に優秀なもの」と「歴史的価値の高いもの」の二つ。大規模な架構と合理的な平面計画が機関車修理などの効率的な作業を可能にし、大正から昭和にかけて全国的な鉄道輸送力の増強を支える一翼を担った点が評価されている。

見学の実際

この規模の重要文化財としては珍しく、建物はいまも使われている。平成28年(2016年)4月29日に開館した京都鉄道博物館の一部で、同館は昭和47年(1972年)以来この地にあった梅小路蒸気機関車館を拡張してリニューアルしたものである。庫内には明治から昭和にかけて活躍した蒸気機関車20両が並ぶ。

庫内へは博物館の入館券で入れる。別途の予約は不要である。前面の転車台はいまも回る。SLスチーム号が一日の最終便を終えると、客車を切り離し、溜まった石炭の燃え殻を落とし、翌日に備えて石炭と水を積み込む。この作業のあと、機関車は転車台に乗って方向を変え、庫内へ入っていく。狙うなら夕方である。

本館2階の連絡デッキからは、扇形の全体を見下ろし、その向こうに京都市街を望む構図が得られる。地上からだと同じ建物がまったく違って見える。並んだ機関車の正面が壁のように連なる。

職員の案内で開館前の庫内に入り、スチーム号の準備作業を見学するバックヤードツアーも設定されている。定員があり事前予約制である。館内の撮影は可能である。

アクセスは容易だ。嵯峨野線の梅小路京都西駅が最寄りで、京都駅からは一駅。京都駅から歩く場合は梅小路公園を抜けて20分ほどである。明治37年(1904年)建築で日本最古級の木造駅舎とされる旧二条駅舎(京都市指定有形文化財)がこの地に移築され、現在はミュージアムショップを兼ねている。

Q&A

Q梅小路機関車庫の内部には入れますか。
A入れます。梅小路機関車庫は京都鉄道博物館の一部で、通常の入館券で庫内まで見学でき、別途の予約は必要ありません。庫内には蒸気機関車20両が展示されています。開館前の庫内に入る職員案内のバックヤードツアーもあり、こちらは定員制の事前予約となります。
Q梅小路機関車庫はなぜ重要文化財に指定されたのですか。
Aわが国に現存する最古の鉄筋コンクリート造機関車庫であることが最大の理由です。平成16年12月10日に「技術的に優秀なもの」「歴史的価値の高いもの」の二つの基準で指定されました。大規模な架構と合理的な平面計画が、大正・昭和期の鉄道輸送力増強を支えた点も評価されています。
Q梅小路機関車庫はいつ、誰によって建てられたのですか。
A京都停車場改良工事の一環として大正2年12月に起工し、大正3年11月に竣工しました。設計は鉄道院西部鉄道管理局、施工は大林組です。昭和27年の『鉄道建築ニュース』に載る座談会記事は、鉄道院技師の渡辺節が設計を担当したと伝えています。
Q梅小路機関車庫の転車台はいつ見るのがよいですか。
A夕方、SLスチーム号が最終便を終えたあとです。客車を切り離し、燃え殻を落とし、翌日分の石炭と水を積み込んだ機関車が、転車台に乗って方向転換してから庫内へ入ります。全体を見渡すなら本館2階の連絡デッキが適しています。
Q京都駅から梅小路機関車庫へはどう行けばよいですか。
A嵯峨野線で一駅、梅小路京都西駅が最寄りです。京都駅から歩く場合は梅小路公園を抜けて約20分。機関車庫は京都駅の西およそ1.5キロ、下京区歓喜寺町3番地にあります。

基本情報

名称梅小路機関車庫(うめこうじきかんしゃこ)
所在地京都府京都市下京区歓喜寺町3番地
指定区分国指定重要文化財(建造物) 指定番号 02459 種別:近代/産業・交通・土木
指定年平成16年(2004年)12月10日
員数1棟(附指定あり)
寸法鉄筋コンクリート造扇形車庫、建築面積3870.57平方メートル。電動天井走行クレーンおよび引込線を含む。引込線は全20線
所有者西日本旅客鉄道株式会社
公開状況京都鉄道博物館の一部として公開。入館券で庫内の見学が可能、撮影も可

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「梅小路機関車庫」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/00003895
京都鉄道博物館「扇形車庫」
https://www.kyotorailwaymuseum.jp/sp/floor-map/roundhouse-platform/
京都鉄道博物館「見る!」
https://www.kyotorailwaymuseum.jp/enjoying/watching/
京都観光Navi「京都鉄道博物館バックヤードツアー」
https://ja.kyoto.travel/event/single.php?event_id=5103
ConCom「土木遺産を訪ねて File 35 梅小路機関車庫/京都府京都市」
https://concom.jp/contents/heritage/vol35.html

最終更新日: 2026.08.06