通りが見る顔

旅館薫楽荘の主屋にたどり着く前に、まずその塀に出会う。旅館の前面、通り沿いに設けられた塀は高さ約3.3メートル、延長は約12メートルにおよび、塀と主屋のあいだには庭が構えられている。主屋の正面にあたる位置には間口2.0メートルの門口が開き、前後に瓦庇をかけ、左右に引き分ける戸をたてる。背後の建物と同じく明治後期(1898〜1912年)のもので、中に入るかどうかにかかわらず、誰もが目にする部分である。

登録の理由と価値

門及び塀は登録有形文化財(建造物)として、平成23年(2011年)10月28日、第71回登録に加えられた。登録番号は24-0116、登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。主屋、蔵とともに、通りに向けた一連の構えとして三要素で登録されている。

塀は守るべき対象としては軽く見られがちだが、ここでは旅館の表の性格を定める役目を負っている。桑町はかつての遊興の地であり、街路に面する構えにはそれなりの品が求められた。その品を与えているのが、この門と塀である。

見どころ

塀はゆっくり眺めるほど応える。腰高までは竪板を張り、その上の小壁を黒漆喰で仕上げて、板の上に一本の濃い帯を引く。この黒い線が街路の縁を引き締めており、公的な解説はその趣を「粋」の一語で言い表している。

門口では、前後に瓦庇が張り出し、その下に引き分け戸が納まる。門越しには内側の小庭がのぞき、公の通りと私の旅館のあいだに一片の緑が挿し込まれる。構成は意図的で静かであり、茶屋や宿の並んだ町がかつて求めた街路の作法がそこにある。

Q&A

Q塀の寸法はどのくらいですか。
A延長は約12メートル、高さは約3.3メートルで、主屋正面に間口2.0メートルの門口が開く。
Q黒漆喰とは何ですか。
A黒く仕上げた漆喰である。ここでは塀の上部の小壁に用いられ、下の竪板の上に鋭く抑えた濃い線を通している。
Q門の戸はどのようなものですか。
A引き分け戸で、左右に引き開ける。門口に納まり、前後に張り出す瓦庇の下に立つ。
Q解説にある「粋」とはどういう意味ですか。
A洗練され、控えめな趣を指す語である。公的な解説は、黒漆喰の引き締まった線をこの語で言い表している。かつて遊興の地に面した建物にふさわしい。
Q門及び塀は見学できますか。
A見学できる。通りに面しており、外からは常時眺められる。背後の庭は営業中の旅館に属する。

基本情報

名称旅館薫楽荘門及び塀(りょかんくんらくそうもんおよびへい)
所在地三重県伊賀市上野桑町1474他
指定区分登録有形文化財(建造物)
登録年月日平成23年(2011年)10月28日/第71回/登録番号 24-0116
年代明治後期(1898〜1912年)
構造木造、瓦葺、延長約12メートル。塀の高さ約3.3メートル、門口の間口約2.0メートル
員数1棟
公開状況通りに面し、外観は常時見学可

参考文献

国指定文化財等データベース(旅館薫楽荘門及び塀)/文化庁
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00009026
文化遺産オンライン(旅館薫楽荘門及び塀)
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/237616
伊賀上野観光協会(旅館薫楽荘)
https://www.igaueno.net/?kaiin=528

最終更新日: 2026.07.11