鈴屋遺蹟保存会の建物とは
鈴屋遺蹟保存会(すずのやいせきほぞんかい)の旧事務所・倉庫・正門・塀は、三重県松阪市殿町の松坂城跡に明治42年(1909年)に建てられた4件の建物と工作物で、平成19年(2007年)7月31日にそろって登録有形文化財となった。
鈴屋遺蹟保存会は、国学者本居宣長(1730〜1801)の旧宅や遺品を守り伝えるために生まれた団体で、いまは公益財団法人として本居宣長記念館を運営している。4件は、宣長の旧宅を城跡へ移した工事と同時に、保存会の拠点として整えられた。
名称の「鈴屋」は「すずや」ではなく「すずのや」と読む。宣長が旧宅2階の書斎に付けた名で、のちには旧宅そのものもこの名で呼ばれるようになった。
旧宅の移築と保存会の歩み
本居宣長記念館がまとめた鈴屋遺蹟保存会の沿革によれば、保存の動きが大きく進んだのは明治38年(1905年)である。この年、宣長に従三位が追贈され、旧宅の保存にあてる下賜金500円が届いた。翌明治39年(1906年)、松阪町議会は殿町1537番地の町有地を、文庫の建設と旧宅の移転のために保存会へ50年間無償で貸すと決めた。城跡のうち隠居丸と呼ばれた区画である。
明治42年(1909年)、旧宅は魚町からこの地へ移され、あわせて事務所・倉庫・正門・塀が建てられた。松阪市によると、設計の実務を担ったのは神宮司庁営繕事務嘱託の奥野栄蔵で、名古屋高等工業学校教授の土屋純一がそれを指導・監督した。旧宅の移転、事務所まわりの建設、庭園の整備を合わせた事業費は15,500円余りだった。
鈴屋遺蹟保存会は昭和17年(1942年)に財団法人となった。昭和45年(1970年)に本居宣長記念館が開館すると、旧事務所などは郷土史料の展示室や松阪市史の編纂室に使われ、昭和63年(1988年)からは茶席「桜松閣(おうしょうかく)」として使われている。
4件の登録
鈴屋遺蹟保存会の4件は、第55回の登録として平成19年(2007年)7月31日に登録有形文化財となった。登録番号は24-0063から24-0066までの連番である。文化庁のデータベースによる規模と登録の基準は次のとおり。
- 旧事務所:木造平屋建、瓦葺、建築面積117平方メートル。基準は「造形の規範となっているもの」
- 倉庫:土蔵造2階建、瓦葺、建築面積20平方メートル、渡廊下付。基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」
- 正門:木造、瓦葺、間口2.7メートル、左右潜戸付。基準は倉庫と同じ
- 塀:木造、瓦葺、総延長11メートル。基準は倉庫と同じ
松阪市は、旧事務所の唐破風の玄関と正門に、鎌倉時代初めの大仏様の細部を下敷きにした力強い意匠が使われていることを特色に挙げる。記念館の沿革には、事務所には当初、煉瓦造平屋の洋風案もあったが、入母屋造・平入で唐破風の玄関を付けた和風案が選ばれたとある。
敷地の配置
鈴屋遺蹟保存会の4件は、隠居丸跡の南東寄りにまとまって建つ。中心になるのは旧事務所で、南東を正面にしている。
正門は旧事務所の南東、敷地の北東の正面に立つ。倉庫は旧事務所の南西にあり、北東を向いて、渡廊下で旧事務所とつながる。塀は旧事務所の南西面から南西へ延びて本居宣長旧宅に届き、正面の広場から敷地の内側を隠している。
旧宅を移した工事で同時に建てられたため、4件はどれも旧宅との位置関係で置き場所が決まっている。旧宅の側へ抜ける出入口は、塀のいちばん旧宅寄りの1間に設けられている。
見学と行き方
鈴屋遺蹟保存会の4件は、本居宣長記念館と本居宣長旧宅の見学区域の中にある。記念館の開館時間は午前9時から午後5時までで、最終入館は午後4時30分。休館日は月曜日(祝日の場合はその翌平日)と年末年始である。入館料は記念館と旧宅の共通で、大人400円、大学生など300円、小学4年生から高校生までは200円。支払いは現金のみとなっている(2026年10月確認)。
松阪市観光協会は令和4年(2022年)の催しの案内で、桜松閣(旧事務所)の前の庭園には通常、記念館との共通券で入ると説明していた。同じ案内では、桜松閣は外から見学する形で内部には入れないとしている。現在の内部公開の有無は、記念館の受付で確かめたい。
鈴屋遺蹟保存会の建物がある松坂城跡へは、JR・近鉄の松阪駅から徒歩で約15分。バスなら「松阪市役所」から徒歩5分、車は伊勢自動車道の松阪インターから約10分である。建物ごとの見どころと見え方は、それぞれのページにまとめた。
参考文献
- 国指定文化財等データベース 鈴屋遺蹟保存会旧事務所(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005977
- 国指定文化財等データベース 鈴屋遺蹟保存会倉庫(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005978
- 国指定文化財等データベース 鈴屋遺蹟保存会正門(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005979
- 国指定文化財等データベース 鈴屋遺蹟保存会塀(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005980
- 鈴屋遺蹟保存会旧事務所、鈴屋遺蹟保存会倉庫、鈴屋遺蹟保存会正門、鈴屋遺蹟保存会塀(松阪市)
- https://www.city.matsusaka.mie.jp/site/culture-info/suzunoyaisekihozonkai-kyujimusyo.html
- 鈴屋遺蹟保存会の歩み(本居宣長記念館)
- https://www.norinagakinenkan.com/pages/45/
- 来館案内(本居宣長記念館)
- https://www.norinagakinenkan.com/pages/3/
- 本居宣長コース「国学の道」(松阪市)
- https://www.city.matsusaka.mie.jp/site/kanko/kokugakunomiti.html
- 本居宣長旧宅(鈴屋)(観光三重)
- https://www.kankomie.or.jp/spot/1853
- 桜松閣(国有形登録文化財)デジタルライトアップ(松阪市観光協会)
- https://www.matsusaka-kanko.com/blog/2022/12/03/%E6%A1%9C%E6%9D%BE%E9%96%A3%EF%BC%88%E5%9B%BD%E6%9C%89%E5%BD%A2%E7%99%BB%E9%8C%B2%E6%96%87%E5%8C%96%E8%B2%A1%EF%BC%89%E3%83%87%E3%82%B8%E3%82%BF%E3%83%AB%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%88%E3%82%A2%E3%83%83-2/
最終更新日: 2026.10.02
基本情報
| 名称 | 鈴屋遺蹟保存会 |
|---|---|
| 所在地 | 三重県松阪市殿町1537 |
| 所有者 | 財団法人鈴屋遺蹟保存会 |
| 指定 | 登録有形文化財 4件 |
| 座標 | 34.57539, 136.52619 |