鉄鋼研究の拠点として建てられた鉄筋コンクリート造の建物

本多記念館(ほんだきねんかん)は、宮城県仙台市青葉区片平の東北大学片平キャンパスに建つ昭和16年(1941年)竣工の鉄筋コンクリート造建築で、令和3年(2021年)10月14日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。

名称は、金属材料研究所(金研)の創設者であり、東北帝国大学第6代総長を務めた本多光太郎に由来する。本多は大正6年(1917年)にKS鋼を開発した。当時の磁石鋼をはるかに上回る保磁力を備えた合金で、この成果によって日本の研究室が材料科学の国際的な最前線に立った。本多の在職25周年を記念して組織された記念会が、総工費47万円をもって本館を建設したと金属材料研究所は記録している。

建物は地上3階、地下1階。建築面積は689平方メートルで、現代の研究施設と比べれば決して大きくはない。しかし稼働をやめたことはなく、いまも事務室、会議室、技術相談室、宿泊施設として使われ、そこに二つの展示空間が併設されている。

外観と内部の意匠

外観に装飾的な要素はほとんどない。タイル貼の外壁に柱形を強調して立ち上げ、その間に矩形の窓を等間隔で並べる。飾らないことそのものが昭和16年という時点での選択だった。日本の官公庁・大学建築が、前世代の折衷的な様式主義から離れ、簡素で合理的な方向へ移りつつあった時期にあたる。

その抑制を破る要素が一つある。玄関の車寄せから前方へ大きく張り出したキャノピーで、離れた位置から見ても構成のなかで独立した動きとして目に入る。

内部に入ると素材が変わる。玄関ホールには大理石が張られ、その仕上げは楕円平面の階段室へ続く。踊り場で折り返す矩形の階段とは異なり、段が弧を描いて上がっていく。手すりに手を添えて登れば、その違いは体感としてすぐに分かる。

登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。文化庁の解説文は、明快な意匠が時代相を表している点を評価している。

平成6年(1994年)には内部壁面の補強と内装の改修が行われた。仙台市の観光情報サイトによれば、この工事に際して玄関ホールや階段周辺の大理石を保存する配慮がなされており、これらの面がいまも当初の質感をとどめている理由はそこにある。

見学の方法と片平キャンパス

片平キャンパスは市民に開かれている。敷地内は自由に歩くことができ、本多記念館の外観はいつでも予約なしに見られる。国立大学の開かれた構内に建つ建物であり、外観の撮影に制約はない。

一方、内部は現役の研究施設である。見学者を受け入れる部屋は二つある。本多光太郎が生前に使用した実験ノートや写真、遺品を収める本多記念室と、これに併設された資料展示室で、後者にはKS永久磁石鋼をはじめ金属材料研究所が開発し企業化された各種の新素材が常設展示されている。見学を希望する場合は、金属材料研究所の常設展示見学のページを確認したうえで事前に申し込むよう案内されている。

キャンパスそのものを歩く価値も大きい。片平の地は明治20年(1887年)の旧制第二高等中学校設置以来、130年余りにわたって高等教育の場であり続けてきた。同じ登録有形文化財となっている建物が構内に複数ある。旧東北帝国大学理学部生物学教室(現・本部棟)は令和3年に登録され、その1階には東北大学ギャラリー「ひすとりあ」が令和4年に開設された。開室は火曜と木曜の12時から16時、見学は無料で、キャンパスの登録有形文化財に関する展示も置かれている。本多の研究ノートや、大正11年(1922年)の講演旅行でアインシュタインが記した署名を収める東北大学史料館も同じ構内にある。

片平キャンパス地区は平成29年(2017年)、大学キャンパスとして初めて都市景観大賞都市空間部門特別賞を受けている。仙台駅からは徒歩でおよそ20分、地下鉄南北線を使えば五橋駅が近い。

Q&A

Q本多記念館の内部は見学できますか。
A片平キャンパスは開かれているため外観は自由に見られます。本多記念室と資料展示室については、金属材料研究所の常設展示見学ページを確認したうえでの事前申し込みが案内されています。事務室や会議室として日常的に使われている部分は公開されていません。
Q本多記念館の名称は誰にちなむものですか。
A金属材料研究所の創設者で、東北帝国大学第6代総長を務めた本多光太郎です。大正6年(1917年)にKS鋼を開発した人物で、その在職25周年を記念して組織された記念会が本館を建設しました。竣工は昭和16年(1941年)です。
Q本多記念館はどの指定区分にあたり、いつ登録されましたか。
A国の登録有形文化財(建造物)で、登録番号は04-0204です。令和3年(2021年)10月14日に「国土の歴史的景観に寄与しているもの」の基準により登録されました。重要文化財よりも保護の度合いが緩やかな区分です。
Q本多記念館の建築上の見どころはどこですか。
A柱形を強調したタイル貼の外壁と等間隔に並ぶ矩形窓、玄関車寄せから前方へ張り出す大きなキャノピー、そして大理石を張った玄関ホールから続く楕円平面の階段室です。平成6年の改修では、これらの大理石をあえて残す判断がとられました。
Q仙台駅から本多記念館へはどう行けばよいですか。
A仙台駅から西へ徒歩約20分で片平キャンパスに着きます。地下鉄南北線を利用する場合は五橋駅が最寄りで、そこから徒歩圏です。建物は青葉区片平二丁目1-5のキャンパス内にあります。

基本情報

名称本多記念館(ほんだきねんかん)
所在地宮城県仙台市青葉区片平二丁目1-5
指定区分国登録有形文化財(建造物) 登録番号 04-0204
指定年令和3年(2021年)10月14日 登録・告示
員数1棟
寸法鉄筋コンクリート造3階地下1階建、建築面積689平方メートル
所有者国立大学法人東北大学
公開状況キャンパスは開放され外観は自由に見学可。本多記念室・資料展示室は金属材料研究所への事前申し込みが必要

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「本多記念館」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013916
東北大学金属材料研究所「本多記念館・資料展示室・記念室」
https://www.imr.tohoku.ac.jp/ja/public/memorial-hall/
東北大学 登録有形文化財ガイドサイト
https://www.bureau.tohoku.ac.jp/somu/bunkazai/kenzobutsu/index.html
東北大学「片平キャンパスの変遷と歴史」
https://www.bureau.tohoku.ac.jp/somu/bunkazai/kenzobutsu/history/index.html
せんだい旅日和「東北大学金属材料研究所本多記念館」
https://www.sentabi.jp/spots/369

最終更新日: 2026.08.06