顕彰碑のために建てられた小さな門
旧山寺常山家住宅頌徳門は、長野県長野市松代町松代にある昭和15年(1940年)建立の棟門で、平成26年(2014年)4月25日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。登録番号は20-0437、員数は1棟、所有者は長野市である。
屋敷地の北東端に、東を向いて建つ。間口は1.9メートル。木造で屋根は瓦葺、形式は切妻造桟瓦葺とし、左右に袖塀を付け、背面には控柱を立てる。文化庁のデータベースでは種別を「その他工作物」に分類しており、住むための建物ではなく、通り抜けるための構築物として登録されている。
この門が建てられた経緯は、屋敷の来歴と直結している。山寺家の主屋は大正時代の末までに失われた。その後、敷地の北側に山寺常山の頌徳碑が建てられ、碑に至る入口として昭和15年に設けられたのが頌徳門である。つまり、住まいの門ではなく、顕彰のための門として出発している。
棟門という形式と、登録の意味
棟門は、二本の主柱の上に直接棟を載せる簡潔な門の形式である。長屋門のように左右に部屋を持たず、袖塀と控柱で安定を確保する。同じ敷地の南寄りに建つ表門が桁行23メートルの長屋門であるのに対し、こちらは間口1.9メートル。規模の差は、両者が担う役割の違いをそのまま示している。
登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。昭和戦前期の構築物が登録されるのは、それ自体が城下町の通りの構成要素になっているからである。松代の街路に面して門が二つ並ぶ現在の光景は、江戸末期と昭和前期という百年ほど隔たった時代の産物が同居した結果として生まれている。
山寺常山(1807〜1878)は松代藩の中級武士の家に生まれ、藩主真田幸貫を補佐して寺社奉行や郡奉行を務めた。兵学を藩士に講じ、佐久間象山、鎌原桐山とともに松代三山と呼ばれた。廃藩後は中央政府の招きを受けずに長野で塾を開き、明治11年(1878年)に没している。没後、その事績を顕彰する動きが起こり、屋敷地に碑が置かれることになった。
敷地でこの門を探す
頌徳門は敷地の北東端にあり、表門から通りを北へ少し歩いた位置に開く。切妻の屋根は小ぶりで、桟瓦の並びも数えられるほどの規模しかない。背面に回ると控柱が見える。柱二本だけで棟を支える形式が、どのように倒れずに立っているのかが分かる部分である。
左右の袖塀は、門を独立した構築物として成り立たせるための装置でもある。塀が門の両側へ短く伸びることで、通りと敷地の境界が明確になり、門を通る動作に意味が生じる。
敷地には表門、書院、頌徳門の三棟と、神田川から水を引いた池のある庭園が残る。庭園は「旧山寺常山氏庭園」として国の登録記念物(名勝地関係)に登録されている。建物と庭園は平成16年(2004年)に整備され、現在は長野市が管理する公開施設として無料で開放されている。
開場は9時から17時、11月から3月は16時30分まで。入場受付は閉場の30分前まで、12月29日から1月3日は休みとなる。JR長野駅善光寺口からアルピコ交通のバスで約30分、松代八十二銀行前下車、徒歩約15分。専用駐車場はなく、象山東駐車場や市営駐車場を利用する。写真は個人で楽しむ範囲であれば自由に撮影できる。
Q&A
- 旧山寺常山家住宅頌徳門はなぜ建てられたのですか。
- 大正時代の末までに屋敷の主屋が失われたあと、敷地の北側に山寺常山の頌徳碑が建てられました。頌徳門はその碑へ至る入口として、昭和15年(1940年)に設けられたものです。
- 旧山寺常山家住宅頌徳門はどのような形式の門ですか。
- 間口1.9メートルの棟門です。二本の主柱の上に直接棟を載せる形式で、屋根は切妻造桟瓦葺。左右に袖塀を付け、背面に控柱を立てて安定させています。
- 旧山寺常山家住宅頌徳門は表門とどう違いますか。
- 表門は江戸末期の長屋門で桁行23メートル、建築面積109平方メートルの大規模なものです。頌徳門は昭和15年の棟門で間口1.9メートル。文化庁のデータベースでは頌徳門を「その他工作物」に分類しています。
- 旧山寺常山家住宅頌徳門は見学できますか。料金は?
- 山寺常山邸の敷地内にあり、無料で見学できます。開場は9時から17時(11月から3月は16時30分まで)、入場受付は閉場の30分前まで。12月29日から1月3日は休みです。
- 旧山寺常山家住宅頌徳門へのアクセスを教えてください。
- JR長野駅善光寺口からアルピコ交通のバスで約30分、松代八十二銀行前下車、徒歩約15分です。真田宝物館からも徒歩約15分。専用駐車場はないため、象山東駐車場や市営駐車場を利用します。
基本情報
| 名称 | 旧山寺常山家住宅頌徳門(きゅうやまでらじょうざんけじゅうたくしょうとくもん) |
|---|---|
| 所在地 | 長野県長野市松代町松代字竹山町1493-1 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物・その他工作物)/登録番号 20-0437 |
| 指定年 | 平成26年(2014年)4月25日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 木造、瓦葺、間口1.9メートル、左右袖塀付(切妻造桟瓦葺、背面に控柱) |
| 所有者 | 長野市 |
| 公開状況 | 公開(山寺常山邸として無料開放。9時〜17時、11月〜3月は16時30分まで、入場は閉場30分前まで。12月29日〜1月3日休) |
参考文献
- 国指定文化財等データベース ― 旧山寺常山家住宅頌徳門(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00009943
- 国登録文化財一覧 ― 長野市公式ホームページ
- https://www.city.nagano.nagano.jp/n151100/contents/p002914.html
- 山寺常山邸 ― 信州松代観光協会
- https://www.matsushiro-kankou.com/spot/spot-615/
- 山寺常山邸 ― 松代文化施設等管理事務所(真田宝物館)
- https://www.sanadahoumotsukan.com/facility_detail.php?n=8
- 山寺常山 ― コトバンク(デジタル版 日本人名大辞典+Plus)
- https://kotobank.jp/word/山寺常山-1118019
最終更新日: 2026.08.04