庭を見るために床を上げた書院

旧山寺常山家住宅書院は、長野県長野市松代町松代にある大正時代後期の木造建築で、平成26年(2014年)4月25日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。登録番号は20-0435、員数は1棟、所有者は長野市である。

敷地は象山(別名を竹山)の東麓、松代城下の南西端にあたる。書院は木造平屋建、瓦葺、建築面積95平方メートル。同じ敷地に建つ江戸末期の表門より床面を高くとってあり、庭園を見下ろす角度が意識されている。表門とは渡り廊下でつながっている。

平面は東西二列に計六室。庭に面する東列に座敷を並べ、東南の二面に縁を廻す。西列の北端にあたる一室は円窓を備えた茶室とする。座敷飾と茶室の意匠にそれぞれ工夫があり、開口の多い開放的な構成をとる。近代和風建築の秀作という評価は、この造作の質に対して与えられている。

年代をめぐる記述の違いと、登録の根拠

建築年代について、文化庁の国指定文化財等データベースは「大正後期」、西暦では1919年から1926年の間とする。一方、地元の観光案内では大正時代末期から昭和初期の建築と推定するものが多い。本稿は一次資料である文化庁データベースの記載に従っている。いずれにせよ、主屋を失ったあとの屋敷に新しく建てられた建物という位置づけは変わらない。

登録の基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。江戸末期の表門、大正後期の書院、昭和15年(1940年)の頌徳門という三棟が、それぞれ別の時代に建ちながら一つの屋敷地の景観をつくっている点が、この場所の評価につながっている。表門よりやや高い位置に置かれた配置は、背後にそびえる象山との釣り合いも計算に入れたものと見られている。

山寺家は松代藩の中級武士で知行160石。幕末に藩の寺社奉行や郡奉行を務めた山寺常山(1807〜1878)は、藩主真田幸貫を補佐し、藩士に兵学を講じた人物である。廃藩後は中央からの招きに応じず、長野に塾を開いて教育にあたった。書院はその常山の時代より後の建築だが、屋敷を継いだ家の暮らしと美意識を伝える建物として残された。

円窓と縁側、それに庭

建物の内部でまず目を引くのは、西列北端の茶室に開く円窓である。丸い開口は壁面の直線と対比され、外の緑を切り取る枠として働く。座敷側とは性格の異なる、小さく閉じた空間がここに用意されている。

東南に廻る縁からは庭の池が正面に見える。池には神田川から水が引き込まれ、松代の城下に張りめぐらされた泉水の水系につながっている。庭は「旧山寺常山氏庭園」として国の登録記念物(名勝地関係)にも登録されており、書院はその庭を見る場所として設計されている。床を高くとった理由は、縁に座ってみるとよく分かる。

書院は「対竹廬(たいちくろ)」と呼ばれると伝わる。敷地の背後に立つ象山が竹山とも呼ばれることを踏まえた名だが、この呼称は観光案内などの二次資料に見えるもので、文化庁データベースには記載がない。

見学は無料で、開場は9時から17時、11月から3月は16時30分まで。入場受付は閉場の30分前まで、12月29日から1月3日は休みとなる。邸内には無料休憩所があり、庭を眺めながら一息つける。JR長野駅善光寺口からアルピコ交通のバスで約30分、松代八十二銀行前下車、徒歩約15分。真田宝物館からも徒歩15分ほどである。写真撮影は個人で楽しむ範囲であれば自由に行えるが、撮影会など業務での利用には長野市教育委員会と指定管理者への申請が必要とされている。

Q&A

Q旧山寺常山家住宅書院は内部を見学できますか。料金は?
A山寺常山邸として一般公開されており、入場は無料です。開場は9時から17時(11月から3月は16時30分まで)で、入場受付は閉場の30分前まで。12月29日から1月3日は休みです。邸内には無料の休憩所も設けられています。
Q旧山寺常山家住宅書院はいつ建てられましたか。
A文化庁の国指定文化財等データベースは大正後期、西暦では1919年から1926年の間としています。地元の観光案内には大正末期から昭和初期とするものもあり、記述に幅があります。平成16年(2004年)に改修されました。
Q旧山寺常山家住宅書院はどのような間取りですか。
A東西二列に計六室を配し、庭に面する東列に座敷を並べて東南の二面に縁を廻します。西列の北端の一室は円窓を持つ茶室です。木造平屋建、瓦葺、建築面積は95平方メートルです。
Q旧山寺常山家住宅書院と庭園はどのような関係にありますか。
A書院は庭園への眺望を意識して表門より床面を高くとってあり、縁から池を見る構成になっています。庭は「旧山寺常山氏庭園」として国の登録記念物(名勝地関係)に登録されており、神田川から引いた水を池に湛えています。
Q旧山寺常山家住宅書院は「対竹廬」と呼ばれるのですか。
A信州松代観光協会の案内などでは書院を「対竹廬(たいちくろ)」と紹介しています。背後の象山が竹山とも呼ばれることにちなむ名と伝わりますが、文化庁のデータベースにこの呼称の記載はありません。

基本情報

名称旧山寺常山家住宅書院(きゅうやまでらじょうざんけじゅうたくしょいん)
所在地長野県長野市松代町松代字竹山町1493-1
指定区分登録有形文化財(建造物)/登録番号 20-0435
指定年平成26年(2014年)4月25日登録
員数1棟
寸法木造平屋建、瓦葺、建築面積95平方メートル(東西二列計六室)
所有者長野市
公開状況公開(山寺常山邸として無料開放。9時〜17時、11月〜3月は16時30分まで、入場は閉場30分前まで。12月29日〜1月3日休)

参考文献

国指定文化財等データベース ― 旧山寺常山家住宅書院(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00009941
山寺常山邸 ― 信州松代観光協会
https://www.matsushiro-kankou.com/spot/spot-615/
国登録文化財一覧 ― 長野市公式ホームページ
https://www.city.nagano.nagano.jp/n151100/contents/p002914.html
ながの百景93 山寺常山邸の庭園 ― 長野市公式ホームページ
https://www.city.nagano.nagano.jp/n205100/contents/p003241.html
山寺常山 ― コトバンク(デジタル版 日本人名大辞典+Plus)
https://kotobank.jp/word/山寺常山-1118019

最終更新日: 2026.08.04