屋敷の奥に祀られた八幡社
武重本家酒造及び武重家住宅屋敷神は、長野県佐久市茂田井の旧中山道沿いにある造り酒屋・武重本家の屋敷の奥に祀られた昭和5年(1930年)の社で、平成12年(2000年)9月26日に国の登録有形文化財に登録された。木造平屋建、銅板葺、建築面積は8.6平方メートル。西蔵の北の奥、文庫蔵の北西に位置する。
八尺四方、およそ2.4メートル角の入母屋造、銅板葺の覆屋で、外部は腰を縦板張りとし、上部に連子を入れる。この覆屋の中に、鎌倉の八幡宮から分祀された一間社流造の八幡社を納め、前面に切妻造、銅板葺の拝殿を付ける。文化庁は、登録時の当主が誕生した際に造り替えられたと伝わると記す。
屋敷神とは、家の敷地の内に祀る守り神である。造り酒屋にとって酒造りの安全と家の繁栄を祈る対象であり、正面には文政10年(1827年)の石造鳥居が立つ。鳥居は社より百年以上古く、この場所に祀りが続いてきた時間の長さを示している。
登録の理由と価値
登録基準は「造形の規範となっているもの」である。覆屋に本社を納め、前に拝殿を付けるという構成は神社建築の基本形を小さく写したもので、屋敷の一角に一つの神社が凝縮されている。武重本家酒造及び武重家住宅屋敷神は、造り酒屋の屋敷構えを構成する一要素として、鳥居とともに登録された。
本社が鎌倉の八幡宮から分祀されたと伝わる点は、武重家の由緒と結びつく。武重家は武田家に仕えた武士を祖とし、江戸前期に茂田井に土着したと伝えられる。八幡神は武家の守護神であり、その分霊を屋敷に祀ることは家の来歴の表明でもある。
昭和5年(1930年)という年代は、屋敷の30棟の中では新しい部類に入る。当主の誕生を機に社を造り替えるという慣習が、昭和初期まで生きていたことを、この建物は記録している。
見どころ
屋敷神は屋敷の奥、西蔵の北にあって通りからは見えない。酒蔵開放などで敷地に入る機会があれば、文庫蔵の北西の方向に、銅板の屋根と縦板張りの小さな建物を探したい。石造の鳥居が目印になる。
覆屋の上部の連子から、中の本社をのぞくことができる。一間社流造は、正面一間の小さな社で、屋根の前面が長く流れて向拝を覆う形式である。武重本家酒造及び武重家住宅屋敷神の本社は覆屋に守られているため、流造の屋根の反りが風雨にさらされずに残っている。
拝殿は切妻造で、覆屋の前に付く。覆屋の入母屋と拝殿の切妻、二つの銅板葺の屋根が前後に重なる姿を、正面の鳥居越しに見るのがよい。銅板は年を経て緑青の色になり、白壁の蔵の間で一点だけ色を変える。
見学方法とアクセス
武重本家酒造及び武重家住宅屋敷神は屋敷の奥、西蔵の北にあり、旧中山道からは見えない。春分の日前後の酒蔵開放で敷地に入れた場合も、住まい側の奥にあるため見学できる範囲は年によって異なる。当日の案内に従い、社に近づく際は参拝の場所であることを心得たい。
武重本家酒造は稼働中の酒蔵であり、武重家の住まいでもある。建物の内部は通常公開されておらず、敷地に入れるのは事務所と売店の営業時間内、平日の午前8時から午後5時までに酒を買いに立ち寄る場合に限られる。土日祝日と年始、旧暦の盆は休みである。年に一度、春分の日前後(例年3月20日から21日ごろ)に酒蔵開放が開かれ、仕込蔵に入って試飲ができる。2026年の酒蔵開放では佐久平駅からチャーターバスの送迎が行われた。予約制の試飲会も企画され、蔵の案内が組み込まれることがある。日程は公式サイトで確認しておきたい。
最寄りはJR北陸新幹線の佐久平駅で、千曲バスの望月・芦田方面行きに乗り「茂田井入口」で降りると徒歩約2分。ただしバスは平日のみの運行なので、週末は佐久平駅からタクシーか車で約30分、距離にして約15キロを見込む。上信越自動車道の佐久インターチェンジ、湯の丸インターチェンジからも車で約30分である。公道からの撮影は自由だが、敷地内で撮る場合は行事のときにスタッフの案内に従いたい。
Q&A
- 武重本家酒造及び武重家住宅屋敷神はいつ建てられましたか。
- 昭和5年(1930年)の建築です。登録当時の当主が誕生した際に造り替えられたと伝わっています。
- 屋敷神には何が祀られていますか。
- 鎌倉の八幡宮から分祀されたと伝わる八幡社です。一間社流造の本社を、八尺四方の入母屋造銅板葺の覆屋に納め、前に切妻造の拝殿を付けています。
- 武重本家酒造及び武重家住宅屋敷神の鳥居はいつのものですか。
- 正面の石造鳥居は文政10年(1827年)のもので、社より百年以上古く、別に登録有形文化財に登録されています。
- 屋敷神は見学できますか。
- 屋敷の奥にあり、通りからは見えません。酒蔵開放の日に敷地へ入れた場合も、見学できる範囲は年によって異なります。
- なぜ登録有形文化財に登録されたのですか。
- 「造形の規範となっているもの」という基準で、平成12年(2000年)9月26日に登録されました。覆屋に本社を納め拝殿を付けた構成が、造り酒屋の屋敷構えを構成する要素として評価されています。
基本情報
| 名称 | 武重本家酒造及び武重家住宅屋敷神 |
|---|---|
| 所在地 | 長野県佐久市茂田井字東町2179 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 平成12年(2000年)9月26日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 木造平屋建、銅板葺、建築面積8.6平方メートル(覆屋八尺四方) |
| 所有者 | 文化庁データベースに記載なし(武重家の屋敷内) |
| 公開状況 | 非公開(稼働中の酒蔵兼私邸)。平日午前8時から午後5時に売店へ立ち入り可。春分の日前後の酒蔵開放で内部見学・試飲 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁) 武重本家酒造及び武重家住宅屋敷神
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00001796
- 佐久市ホームページ 茂田井間の宿
- https://www.city.saku.nagano.jp/kanko/kanko/spot/nakasendo/motaiainoshuku/motaiainoshuku.html
- 武重本家酒造株式会社 公式サイト
- https://takeshige-honke.jp/
- 信州たてしな観光協会 武重本家酒造株式会社
- https://shirakabakogen.jp/spot/takeshiga_honke_syuzo
最終更新日: 2026.09.10