旧慈門院塀重門とは

旧慈門院塀重門(陶原家住宅塀重門)は、奈良県桜井市大字多武峰に建つ江戸末期の門で、令和2年(2020年)4月3日に登録有形文化財となった。旧慈門院(陶原家住宅)の5件のうち、建築物ではなく工作物として扱われているのはこの門だけである。

建設は1830年から1868年の間と見られる。位置は表門の北面と客殿の間で、前庭と東の主庭を画す。形式は腕木門、間口1.7メートル、左右に袖塀が付く。屋根は勾配が緩やかな切妻造檜皮葺で、瓦を葺く他の4件と葺き方が異なる。

塀重門とは、塀の線上に開く小さな門を指す。屋敷の外と内を分ける表門とは役割が違い、旧慈門院塀重門が分けているのは敷地のなかの二つの庭である。

旧慈門院塀重門が登録された理由

旧慈門院塀重門は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」という基準で登録された。文化庁は、この門が主庭からの景色を華やかに整えていると記している。評価されているのは通行の機能ではなく、庭に向けて見せる面のつくりである。

間口1.7メートルという小ささにもかかわらず、装飾は屋敷のなかで最も濃い。屋根に檜皮葺を用いている点も、他の4件が瓦葺であることを考えると際立つ。檜皮は手間も費用もかかる材で、そこに充てられたということは、この門が屋敷のなかで見せ場として扱われていたことを示す。

工作物としての登録である点も押さえておきたい。居住や収蔵といった用途をもたず、庭を画すための構築物として建てられている。旧慈門院塀重門は、機能ではなく構えによって評価された一件である。

旧慈門院塀重門の見どころ

扉の蟇股に麒麟が彫られている。麒麟は中国由来の瑞獣で、社寺の彫刻には現れるが、屋敷のなかの小門に据えられる例は多くない。間口1.7メートルの門に、この一点が置かれている。

扉そのものも見どころで、桟唐戸に花格子を入れる。桟唐戸は框と桟で組んだ扉、花格子は花の形を透かした格子で、光を通しながら視線をやわらげる。閉じていても向こうの庭の気配が届く扉ということになる。

構造は腕木門である。礎盤の上に円柱を立て、腕木で軒を受ける。西の正面側では腕木の先端を拳鼻とし、東側は控柱で受ける。正面と背面で受け方を変えているため、旧慈門院塀重門は西から見たときに最も整った姿になる。

屋根の勾配が緩やかなことも、この門の印象を決めている。急勾配の屋根は重く見え、緩い屋根は水平に広がって見える。檜皮の柔らかい面と緩い勾配が組み合わさり、庭に向かって軽い構えになる。

旧慈門院塀重門の見学

旧慈門院塀重門は個人の所有で、敷地は公開されていない。この門は前庭と主庭の境に建つ敷地内部の門であるから、屋敷に立ち入らなければ見ることができない。公開日や特別公開の記載は、文化庁のデータベースにも桜井市の文化財のページにもない。

麒麟の蟇股、花格子入の桟唐戸、拳鼻とした腕木といった細部は、文化庁の国指定文化財等データベースに写真と解説がある。旧慈門院塀重門の意匠を確かめるには、そちらが最も確実な手段になる。

屋敷地への行き方と、旧慈門院(陶原家住宅)全体の見学条件は、グループのページにまとめてある。

よくある質問

Q旧慈門院塀重門は見学できますか。
Aできません。敷地内部に建つ門で、敷地そのものが個人の私有地として非公開です。公開日の設定もありません。
Q旧慈門院塀重門の「塀重門」とはどんな門ですか。
A塀の線上に開く小さな門です。旧慈門院塀重門の場合は屋敷の外と内ではなく、前庭と東の主庭を分けています。
Q旧慈門院塀重門の蟇股には何が彫られていますか。
A麒麟です。中国由来の瑞獣で、社寺の彫刻に用いられる題材が、間口1.7メートルの小門に据えられています。
Q旧慈門院塀重門の屋根はなぜ檜皮葺なのですか。
A理由を記した一次資料は確認できていません。ただし屋敷の他の4件が瓦葺であるなか、この門だけが檜皮葺であることは、庭に向けた見せ場として扱われていたことを示しています。
Q旧慈門院塀重門はなぜ工作物として登録されているのですか。
A居住や収蔵の用途をもたず、庭を画すための構築物だからです。屋敷の5件のうち、工作物はこの門だけです。

基本データ

名称旧慈門院塀重門(陶原家住宅塀重門)
所在地奈良県桜井市大字多武峰316
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年令和2年(2020年)4月3日登録
員数1棟
寸法木造平屋建、檜皮葺、間口1.7メートル、左右袖塀付
所有者個人(文化庁データベースでは非公表)
公開状況非公開。内部・敷地とも公開されていない

参考文献

国指定文化財等データベース 旧慈門院塀重門(陶原家住宅塀重門)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013312
文化庁 文化審議会の答申(登録有形文化財(建造物)の登録)について(令和元年(2019年)11月15日)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/pdf/91972801_02.pdf

最終更新日: 2026.09.14