室生寺 ― 山に散らばる七件の国指定建造物
室生寺は、奈良県宇陀市室生にある真言宗室生寺派の大本山で、奈良時代末に室生竜穴神の神宮寺として創立された山岳寺院であり、延慶元年(1308年)建立の本堂をはじめ七件の建造物が国宝または重要文化財に指定されている。
文化庁の解説によれば、創立は宝亀末年から延暦初年、西暦780年から782年の頃とされる。寺地は室生川の北岸、室生山の山麓から中腹にかけて細長く延びる。堂塔は一つの平地にまとまらず、石段で結ばれた高さの違う六つの平坦地に分かれて建つ。室生寺を歩くとは、坂を登りながら建物を一つずつ拾っていくことにほかならない。
奈良県の解説によれば、奈良時代末に東宮(のちの桓武天皇)の病気平癒を願った興福寺の僧・賢憬(賢璟)が創建し、現在の伽藍の姿を整えたのは弟子の修円といわれる。その後いったん衰えたが、江戸時代の元禄年間に五代将軍徳川綱吉の生母・桂昌院の庇護を受けて立て直された。同じ真言宗でも高野山金剛峯寺が女人禁制であったのに対し、室生寺はこの頃から女性の参詣を受け入れている。「女人高野」の名はここから出た。読みは「むろうじ」。
境内の配置と歩く順序
室生寺の入口は、室生川に架かる朱塗りの太鼓橋である。橋を渡って右に折れ、表門の前を過ぎると受付があり、その先に仁王門が立つ。
仁王門をくぐると、自然石を積んだ幅の広い石段が正面に現れる。鎧坂と呼ばれる坂で、登り切った台上に金堂と弥勒堂が並ぶ。金堂は正面を南東に向けて斜面にせり出し、弥勒堂はその西南に東を向いて建つ。
さらに石段を上がると、次の平地に本堂(灌頂堂)がある。本堂の西方、少し離れた木立の中に五輪塔が置かれ、本堂の背後の石段を上がった台上に五重塔が立つ。室生寺の建造物のうち、参拝路から続けて見られるのはここまでである。
五重塔の左手から始まる長い石段は、奥の院へ向かう。登り切った小さな平地に御影堂と位牌堂があり、室生寺の巡拝はここで折り返す。残る納経塔は如意峰の上にあって、参拝路からは離れている。
国宝三棟と重要文化財四件
室生寺の建造物のうち、金堂・本堂(灌頂堂)・五重塔の三棟が国宝、弥勒堂・御影堂・五輪塔・納経塔の四件が重要文化財である。文化庁の国指定文化財等データベースは、国宝の三棟についても重要文化財としての指定年月日を併記しており、明治30年(1897年)から明治34年(1901年)にかけて先に指定を受け、昭和26年(1951年)と昭和27年(1952年)に国宝となった経過が読み取れる。
建てられた時期は七件でかなり離れている。五重塔と金堂が平安時代前期、納経塔が平安時代後期、弥勒堂が鎌倉時代前期、本堂(灌頂堂)が延慶元年(1308年)、御影堂と五輪塔が室町時代前期。八百年ほどの幅が、一つの境内に段違いに並んでいることになる。
建造物のほかにも、金堂の来迎壁に描かれた板絵著色伝帝釈天曼荼羅図、木造釈迦如来立像、木造十一面観音立像、木造釈迦如来坐像が国宝に指定されている。彫刻と工芸の重要文化財も多い。仏像の一部は令和2年(2020年)に開いた寳物殿へ移されている。
室生寺への交通
室生寺の最寄り駅は近畿日本鉄道大阪線の室生口大野駅である。奈良県の案内によれば、同駅から室生寺行きの奈良交通バスに乗り、終点で降りて徒歩5分で着く。
このバスは本数が少ない。奈良県は運行情報を必ず奈良交通の公式サイトで確かめるよう促している。列車の時刻だけを見て駅に着くと、次の便まで待つことになりかねない。
問い合わせ先は室生寺(電話0745-93-2003)。所在地は奈良県宇陀市室生78である。
拝観の時間と料金
室生寺の拝観時間は、4月1日から11月30日が午前8時30分から午後5時まで、12月1日から3月31日が午前9時から午後4時までとなっている。寳物殿は午前9時から午後4時30分まで、冬期は午前9時30分から午後3時30分までで、受付は午後3時に締め切られる。
入山料は中学生以上600円、小学生400円。30名以上の団体は中学生以上500円、小学生300円になる。寳物殿は別に400円が必要で、これは一律の額である。以上は奈良県観光公式サイトが公表している額で、最新の扱いは室生寺に確かめてほしい。
撮影については奈良県が明確に述べている。仏像を撮影することは禁止で、境内の建築物・植物・景観以外にカメラを向けてはならない。裏を返せば、堂塔の外観は撮ってよいということになる。
受付前と受付横のトイレにスロープがあり、多目的トイレが1か所ある。ただし室生寺の境内は石段で高さを稼ぐ造りで、車椅子の貸出はない。奥の院へは長い石段が続く。
季節と行事
室生寺は石楠花で知られる。4月中旬から5月中旬にかけて、仁王門の周辺から鎧坂、五重塔にかけての道の両側で約3,000株が花をつける。奈良県観光公式サイトによれば、この石楠花は昭和初期に信者の手で御杖村から移されたものと伝わる。
紅葉は11月中旬から12月上旬。県内の寺社では珍しく夜間のライトアップが行われる。花と紅葉の時期には、長谷寺と室生寺を結ぶ臨時バスが走る。
行事では、毎月21日の弘法大師御影供法要が定例で、この日は奥之院で弘法大師像が開帳される。
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース 室生寺金堂
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/2763
- 文化庁 国指定文化財等データベース 室生寺本堂(灌頂堂)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/2764
- 文化庁 国指定文化財等データベース 室生寺五重塔
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/2762
- 宇陀市 国指定文化財
- https://www.city.uda.lg.jp/soshiki/41/1075.html
- 奈良県 室生寺ルート
- https://www.pref.nara.lg.jp/masumasu/2490.html
- 奈良県観光公式サイト あをによし なら旅ネット 室生寺
- https://yamatoji.nara-kankou.or.jp/01shaji/02tera/03east_area/muroji/
最終更新日: 2026.09.13
基本情報
| 名称 | 室生寺 |
|---|---|
| 所在地 | 奈良県宇陀市室生区室生 |
| 所有者 | 室生寺 |
| 指定 | 国宝 3件・重要文化財 4件 |
| 座標 | 34.53823, 136.04034 |