室生寺五重塔 ― 屋外に立つ塔でもっとも小さい平安初期の塔婆
室生寺五重塔は、奈良県宇陀市室生にある平安時代初期の塔婆で、明治30年(1897年)に重要文化財、昭和26年(1951年)に国宝に指定された。
本堂(灌頂堂)の背後、急な石段を上がった台上に立つ。3間5重の塔婆で、屋根は檜皮葺。高さは約16メートルで、宇陀市は野外に立つ五重塔としてもっとも小さいとしている。文化庁の詳細解説はこれを「高さ一五メートル余の檜皮葺の小塔」と記しており、資料によって数値に幅がある。
文化庁によれば、室生寺五重塔は様式と手法から平安時代初期までに建てられたものと認められ、寺の創建後まもない造営と考えられている。室生寺の境内で最も古い建造物である。
小さいことが価値になる理由
五重塔は本来、権力の規模を示す建物である。室生寺五重塔はその逆を行く。初重の一辺は3間しかなく、石段を上がった参拝者の目の高さから相輪の先までがひと続きに見える。
それでいて構造は省略されていない。文化庁は組物を「正規の三手先」と記す。三手先は軒を深く持ち出すための最も本格的な組み方で、大伽藍の塔と同じ形式が、この寸法の中に収められている。縮小模型ではなく、小さく造られた本物の塔だということが、この一点でわかる。
宇陀市の解説は細部の古さを挙げる。斗と肘木の丈が高く、斗の含みが少ない。軒は地垂木が丸く飛檐垂木が角で、その割付けの数が四方で一定でない。整いすぎていないところに、平安初期という年代が出ている。
指定の経過は文化庁のデータベースにあり、重要文化財としての指定年月日は明治30年(1897年)12月28日、国宝としての指定年月日は昭和26年(1951年)6月9日である。
室生寺五重塔の見どころ
最上部の相輪を見てほしい。通常、五重塔の相輪は九輪の上に水煙という透かし彫りの装飾を立てる。室生寺五重塔にはそれがない。宇陀市によれば、水煙を付けず、代わりに宝瓶と宝蓋を載せている。文化庁も「相輪はほかに類例のない意匠をもっている」と記す。塔を見慣れた人ほど、この一点で足が止まる。
もう一つは、この塔が一度大破しているという事実である。東京文化財研究所の記録によれば、平成10年(1998年)9月の台風7号で境内の樹木が倒れ、室生寺五重塔は北西の角が初層から五層目にかけて損壊した。修復工事が完成し、平成12年(2000年)10月21日から3日間にわたって落慶法要が行われている。
いま見上げても、被災した北西の角と他の三面の区別はつかない。檜皮葺の屋根も丹塗りの柱も一様に見える。倒木が心柱を直撃せず、塔に傾きが生じなかったことが復旧を可能にしたと伝えられる。
季節では石楠花が塔と組み合わせやすい。奈良県観光公式サイトによれば、仁王門周辺から鎧坂、五重塔にかけて約3,000株が植えられており、4月中旬から5月中旬に花をつける。
室生寺五重塔の見学方法
室生寺五重塔は屋外に立ち、入山料の範囲で自由に近づける。内部は非公開で、塔身に立ち入ることはできない。基壇の周囲を歩いて四方から見るのが、この塔の通常の見方になる。
撮影は可能である。奈良県は仏像の撮影を禁止する一方、境内の建築物と植物、景観については制限を設けていない。
撮る位置は二つある。石段の下から見上げると屋根の重なりが詰まって見え、塔が実際より大きく写る。台上に上がって水平に構えると、逓減率の小ささ、つまり上の層がさほど小さくならない室生寺五重塔の特徴が出る。相輪の宝瓶を写したいなら、望遠側で真下から狙うことになる。
ここから左手の石段を登れば奥の院に至る。境内への行き方、拝観時間、入山料は室生寺のページにまとめてある。
Q&A
- 室生寺五重塔の高さはどのくらいですか?
- 約16メートルです。宇陀市は「高さ16m余」とし、野外に立つ五重塔としてもっとも小さいとしています。文化庁の詳細解説は「一五メートル余」と記しており、資料によって数値に幅があります。
- 室生寺五重塔はいつ建てられたのですか?
- 建立年を記した資料はありません。文化庁は様式と手法から平安時代初期までの建立と認めており、寺の創建後まもない造営と考えています。室生寺の境内で最も古い建造物です。
- 室生寺五重塔の相輪はどこが珍しいのですか?
- 水煙がありません。宇陀市によれば、水煙を付けず宝瓶と宝蓋を載せています。文化庁も類例のない意匠と記しています。
- 室生寺五重塔は台風で壊れたと聞きましたが、今はどうなっていますか?
- 修復済みです。平成10年(1998年)9月の台風7号による倒木で北西の角が初層から五層目まで損壊しましたが、修復工事が完成し、平成12年(2000年)10月21日から3日間の落慶法要が行われました。
- 室生寺五重塔の内部に入れますか。写真は撮れますか?
- 内部は非公開で立ち入れません。外観の撮影は可能です。仏像の撮影は禁止されているため、堂内へカメラを向けないよう注意してください。
基本データ
| 名称 | 室生寺五重塔 |
|---|---|
| 所在地 | 奈良県宇陀市室生区室生 |
| 指定区分 | 国宝・重要文化財 |
| 指定年 | 昭和26年(1951年)国宝指定、明治30年(1897年)重要文化財指定 |
| 員数 | 1基 |
| 寸法 | 3間5重の塔婆、高さ約16メートル |
| 所有者 | 室生寺 |
| 公開状況 | 屋外に立ち通常拝観で見学可、内部は非公開 |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース 室生寺五重塔
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/2762
- 宇陀市 国指定文化財
- https://www.city.uda.lg.jp/soshiki/41/1075.html
- 東京文化財研究所 美術界年史 室生寺五重塔修復工事完成
- https://www.tobunken.go.jp/materials/nenshi/7921.html
- 奈良県 室生寺ルート
- https://www.pref.nara.lg.jp/masumasu/2490.html
- 奈良県観光公式サイト あをによし なら旅ネット 室生寺
- https://yamatoji.nara-kankou.or.jp/01shaji/02tera/03east_area/muroji/
最終更新日: 2026.09.13