三手先とは

三手先は、組物を三段にせり出して軒を支える形式である。柱の上から軒先へ向かって、斗と肘木が三度ずつ前へ出る。持ち出しのある組物のなかで最も深く、そのぶん軒を大きく張り出せる。

塔に用いられる。東京都の椿山荘三重塔は室町末期の建立で大正14年に移築されたもので、「和様を基調に各部に禅宗様を加味し、組物は三手先、軒は各層とも本繁平行垂木」と解説されている。三重の各層すべてを三手先で支えている。

楼門にも用いられる。京都府の今宮神社楼門は大正15年の建築で、「三間一戸楼門、入母屋造銅板葺。下層は腰組を三手先とし、脚を伸ばした華麗な蟇股を配し、上層は尾垂木付三手先を組み、間斗束をおく」と解説されている。上下の層で三手先を二度使っている。

尾垂木は、組物のあいだから斜め前へ突き出して軒を支える材である。三手先のように深く持ち出す構成では、尾垂木を併用して荷重を受けることが多い。

組物の序列のなかで

組物は持ち出しの段数で呼び分けられる。柱の上に肘木を載せるだけの舟肘木、大斗の上に三つの斗を並べる三斗組、一段せり出す出組、二段の二手先と続き、三手先が最も深い。段数は建物の規模と格式に対応する。

詰組と組み合わせる例もある。香川県の正蓮寺鐘楼は明治43年の建築で、「切妻造…入母屋造本瓦葺の吹放し鐘楼で、布積基壇に反りのある角柱を内転びで立て、三段に通した貫で固める。組物は二重尾垂木付三手先の詰組、軒は二軒扇垂木である。均整のとれた禅宗様建築」と解説されている。柱の上だけでなく柱間にも三手先を詰めて並べた構成である。

現地では軒の下を見上げ、斗と肘木が何段せり出しているかを数えるとよい。柱の真上から軒先へ向かって三段の階段状になっていれば三手先である。深い軒は三手先の視覚的な結果でもある。

参考文献

文化庁 文化財の紹介 国宝・重要文化財(建造物)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/kokuho_bunkazai.html
国指定文化財等データベース(文化庁)椿山荘三重塔/和様を基調に各部に禅宗様を加味
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003195
国指定文化財等データベース(文化庁)今宮神社楼門/下層は腰組を三手先とし、上層は尾垂木付三手先を組む
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00012205
国指定文化財等データベース(文化庁)正蓮寺鐘楼/組物は二重尾垂木付三手先の詰組、軒は二軒扇垂木
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00012834

最終更新: 2026.09.03