遍路道の傍らに立つ鎌倉後期の塔
石手寺三重塔は、愛媛県松山市石手二丁目の石手寺境内に建つ鎌倉時代後期の塔で、明治40年(1907年)5月27日に国の重要文化財に指定された。二王門をくぐると、右手前方にこの塔が見えてくる。
石手寺は真言宗豊山派の寺院で、四国八十八ヶ所霊場の第51番札所にあたる。境内には国指定の建造物が七件そろっており、三重塔はその一つとして、中世からほぼ同じ位置関係を保ったまま残っている。
文化庁の国指定文化財等データベースは、この建物を三間三重塔婆、本瓦葺、員数1基と記録する。棟札1枚が附として指定に含まれる。高さは24.1メートル。三つの屋根の逓減が小刻みなため、石手寺三重塔は数字ほど高くは見えず、むしろ引き締まった印象を与える。
明治40年指定という早さ
指定年月日の早さは、この塔の評価を考えるうえで見落とせない。石手寺三重塔が国の保護下に入ったのは明治40年(1907年)で、本堂・鐘楼も同じ日に指定されている。愛媛県内でこれほど早く指定を受けた建造物は限られる。
評価の中心にあるのは、細部まで揺らがない和様の手法である。各重とも円柱の上に三手先の組物を置き、軒は三層すべて二軒、垂木は平行に密に並ぶ。中備には間斗束が入るが、初重だけは斗があって束を欠く。この一点の省略が、時代を測る手がかりになる。
初重の周囲には切目縁がめぐり、二重・三重には縁と高欄がつく。上へ向かって細るだけの輪郭ではなく、各層に水平の帯が入るのはそのためである。
地面に届かない心柱
相輪を見上げたら、そのまま視線を下ろしてほしい。九輪と水煙を支える心柱は棟から立ち上がり、三重・二重の中心を貫いて降りてくるが、そこで止まる。初重の四天柱の頂部に架けられた梁が、その心柱を受けているからである。心柱は心礎石まで達していない。
この構法は平安時代末期に始まり、鎌倉時代の塔に多く用いられた。理屈は単純で、下端を地面に固定しない柱は、風や揺れのときに軸部と一緒に動く。固定された柱のように軸部と抗い合わない。
初重の内部には、通常は見ることのできない彩色の世界がある。四天柱の奥側の柱間に来迎壁を設け、その前面に須弥壇を置いて釈迦三尊を祀る。内壁には真言宗八祖の図、来迎壁には曼荼羅が描かれ、四天柱と格天井にも彩色が施された。松山市と愛媛県の解説はいずれも褪色と剥離が進んでいることに触れている。七百年近い彩色に対する、率直な記述だろう。
基壇のまわりをゆっくり一周したい。北側は地面が上がっているので、二重の組物が目線に近づく。
拝観と行き方
石手寺の境内は午前8時から午後5時まで、休みなく開いている。境内を歩くのに拝観料はかからない。石手寺三重塔の内部は非公開で、彩色の残る初重にも立ち入れないため、鑑賞は外観からになる。撮影については、寺・松山市・愛媛県のいずれも境内での一律の制限を公表していない。ただし宝物館は扱いが別なので、受付でひとこと確認しておきたい。
宝物館の拝観料は大人200円、中学生・高校生150円、小学生100円。
道後温泉の電停からは石手川沿いに東へ徒歩約15分。松山市駅からのバスなら石手寺停留所が門前にあたる。駐車場は普通車およそ40台から50台分で、平日は1時間210円から。ここに記した見学情報は2026年9月3日に確認したもので、時間や法要日の最新の状況は石手寺(電話089-977-0870)で確かめられる。
Q&A
- 石手寺三重塔の内部は見学できますか。
- 内部は非公開です。釈迦三尊を祀る初重にも立ち入れません。外観は境内が開いている時間帯であれば、四方から自由に見ることができます。
- 石手寺三重塔の高さと建立年代は。
- 高さは24.1メートルです。国指定文化財等データベースは年代を鎌倉後期、西暦1275年から1332年の間としています。重要文化財の指定は明治40年(1907年)5月27日です。
- 石手寺三重塔の心柱はどうなっていますか。
- 九輪と水煙を支える心柱は三重・二重を貫いて降り、初重の四天柱の頂部に架けた梁で受けられています。心礎石には達しない、鎌倉時代の塔に多い構法です。
- 石手寺三重塔を見るのに拝観料は必要ですか。
- 境内は無料で、午前8時から午後5時まで無休で開いています。宝物館のみ別料金で、大人200円です。
- 道後温泉から石手寺三重塔へはどう行きますか。
- 道後温泉の電停から東へ徒歩約15分です。松山市駅からバスに乗り石手寺停留所で降りる方法もあります。駐車場は普通車40台から50台分、平日は1時間210円からです。
基本情報
| 名称 | 石手寺三重塔(いしてじさんじゅうのとう) |
|---|---|
| 所在地 | 愛媛県松山市石手二丁目 |
| 指定区分 | 重要文化財(建造物) |
| 指定年 | 明治40年(1907年)5月27日 |
| 員数 | 1基、附として棟札1枚 |
| 寸法 | 高さ24.1メートル、三間三重、本瓦葺 |
| 所有者 | 石手寺 |
| 公開状況 | 境内は午前8時から午後5時まで無休で公開、拝観無料。塔の内部は非公開 |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース「石手寺三重塔」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/3311
- 文化遺産オンライン「石手寺三重塔」
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/147008
- 松山市「石手寺三重塔 1棟、附 棟札1枚」
- https://www.city.matsuyama.ehime.jp/kanko/kankoguide/rekishibunka/bunkazai/kuni/isiteji_sannjuunotou.html
- 愛媛県「えひめの文化財(たから)石手寺三重塔」
- https://www.pref.ehime.jp/ehimenotakara/06.html
- 愛媛県公式観光サイト いよ観ネット「熊野山 石手寺」
- https://www.iyokannet.jp/spot/875
最終更新日: 2026.09.03