和様とは
和様は、平安時代までに日本で成熟した建築様式である。中国から新たに伝わった禅宗様や大仏様と区別するために生まれた語で、それ以前からの伝統を指す。
他の様式と組み合わせて用いられる。東京都の椿山荘三重塔は室町末期の建立で、「和様を基調に各部に禅宗様を加味し、組物は三手先、軒は各層とも本繁平行垂木」と解説されている。全体を和様でまとめながら、部分に禅宗様を取り入れた構成である。
同じ境内で様式を使い分ける例もある。香川県の善通寺は重要文化財で、「伽藍の中央に建つ金堂は、一重、もこし付で、本格的な禅宗様仏殿の形式をもつ。五重塔は、高さ43メートル、和様を基調として、初重から伸びる心柱など古式を示す」と解説されている。金堂が禅宗様、五重塔が和様である。
神奈川県の英勝寺は寛永20年の建立で、「仏殿をはじめとする各建物は、禅宗様と和様を自由に組合せた江戸時代前期らしい意匠を持ち、屋根の弛みも軒の反りもつけない直線的な屋根形状で統一している」と解説されている。近世には両者を自在に混ぜることが一般化した。
三様式の関係
中世の建築様式は、和様、大仏様、禅宗様の三つで整理される。和様が在来のもの、他の二つが鎌倉時代に中国から伝わったものである。
細部で見分ける。禅宗様は詰組、花頭窓、桟唐戸を特徴とし、大仏様は挿肘木や皿斗付大斗を用いる。和様はこれらを持たず、長押で柱を固め、平行垂木を用いる。記録が「和様を基調に」と書くのは、こうした細部の大半が和様でありながら一部に別の様式が混じることを示している。
純粋な和様の建物は多くない。中世以降、三様式は互いに影響し合い、近世には英勝寺のように自由な組み合わせが一般化した。記事に書くときは、建物全体の様式なのか、細部にその要素が見られるのかを区別したい。
参考文献
- 文化庁 文化財の紹介 国宝・重要文化財(建造物)
- https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/kokuho_bunkazai.html
- 国指定文化財等データベース(文化庁)椿山荘三重塔/和様を基調に各部に禅宗様を加味
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003195
- 国指定文化財等データベース(文化庁)善通寺/金堂は禅宗様仏殿の形式、五重塔は和様を基調とする真言宗善通寺派の総本山
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/00004617
- 国指定文化財等データベース(文化庁)英勝寺/禅宗様と和様を自由に組合せた江戸時代前期らしい意匠
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/00004634
最終更新: 2026.09.03