室生寺納経塔 ― 如意峰の上に立つ石造二重塔
室生寺納経塔は、奈良県宇陀市室生にある平安時代後期の石造二重塔で、昭和36年(1961年)3月23日に重要文化財に指定された。
宇陀市の解説によれば、この塔は如意峰の上に建つ。同市は、そこが弘法大師の唐から請来した如意宝珠を埋めたと伝える精進峰であると記す。境内の堂宇が並ぶ斜面とは別の高みに、単独で置かれている。
石材は流紋岩質溶結凝灰岩。壇正積の基壇の上に立ち、軸石と笠石は別の石から造られている。文化庁は構造を単に「石造二重塔」と記録するが、宇陀市はもとは三重塔であったと思われるとしている。上の一重が失われた姿で伝わっている可能性がある。
塔の中と下から出たもの
室生寺納経塔という名の由来は、その中身にある。宇陀市によれば、塔身は中空で、内部に経筒が納められている。経を書写して筒に収め、塔に納めるという平安時代後期に広まった作善のあり方が、そのままこの塔の造りになっている。
塔の下からは、琥珀玉、舎利容器、和銅開珎、煕寧元宝が発見されている。和銅開珎は和銅元年(708年)に鋳造が始まった日本の銭貨、煕寧元宝は中国北宋の銭貨である。日本の古い銭と大陸から渡ってきた銭が同じ場所に納められていたことになる。
宇陀市は室生寺納経塔について、平安時代の製作と推定されるものの、類例がほとんどない遺構だと述べている。石造の塔で、経筒を納める中空の構造をもち、埋納品を伴い、しかも山の頂に置かれる。この組み合わせを備えた例が他に乏しいというのが、重要文化財に指定された理由である。
建造物としての指定でありながら、実際には経塚に近い性格をもつ。室生寺納経塔は、建築と埋納遺構のあいだに立つ物件だといえる。
室生寺納経塔をどう理解するか
室生寺の他の指定建造物は、参拝者が前に立って見上げることを前提に建てられている。室生寺納経塔はそうではない。人が集まる場所ではなく、山の高みに置かれ、納めるという行為そのものが目的だった。
塔の形もそれに応じている。軸石と笠石を別の石で造り、それを積み上げる。木造塔のように部材を組んで支えるのではなく、重ねることで立たせる。壇正積の基壇は、その荷重を受けるために整えられている。
流紋岩質溶結凝灰岩は、火山灰が高温のまま堆積して固まった石で、加工しやすく風化にも比較的強い。奈良から三重にかけての地域で石造物によく使われる石材である。室生寺納経塔がこの石で造られていることは、地元の石を用いた造営であったことを示している。
室生寺納経塔の見学方法
室生寺納経塔は、参拝者が通常たどる順路には含まれない。宇陀市が記すとおり如意峰の上にあり、金堂から本堂、五重塔、奥の院へと続く石段の道からは離れている。見学を希望する場合は、立ち入りの可否をあらかじめ室生寺(電話0745-93-2003)に確認してほしい。
現地で実物を確かめられないぶん、室生寺納経塔については資料で補うことになる。文化庁の国指定文化財等データベースには構造と指定の記録があり、宇陀市の国指定文化財のページには石材、基壇、埋納品まで踏み込んだ解説が載っている。境内へ行く前に読んでおくと、如意峰の方角を見上げたときに何がそこにあるのかが分かる。
撮影について、奈良県は仏像の撮影を禁じ、境内の建築物・植物・景観以外にカメラを向けないよう求めている。この規定は境内全体に及ぶ。
境内への行き方、拝観時間、入山料は室生寺のページにまとめてある。
Q&A
- 室生寺納経塔は見学できますか?
- 通常の拝観順路には含まれていません。宇陀市によれば如意峰の上にあり、堂宇の並ぶ石段の道からは離れています。立ち入りの可否は室生寺に確認してください。
- 室生寺納経塔はどんな構造ですか?
- 流紋岩質溶結凝灰岩による石造二重塔です。壇正積の基壇に立ち、軸石と笠石は別の石から造られています。宇陀市はもとは三重塔であったと思われるとしています。
- 室生寺納経塔という名前はどこから来ているのですか?
- 塔身が中空で、内部に経筒を納めていることによります。経を書写して筒に収め塔に納める作善が、そのまま構造になっています。
- 室生寺納経塔からは何が出土していますか?
- 塔の下から琥珀玉、舎利容器、和銅開珎、煕寧元宝が発見されています。和銅開珎は708年に鋳造が始まった日本の銭貨、煕寧元宝は中国北宋の銭貨です。
- 室生寺納経塔はなぜ重要文化財なのですか?
- 宇陀市は、平安時代の製作と推定されるものの類例がほとんどない遺構だと述べています。石造の二重塔で経筒を納める中空構造をもち、埋納品を伴うという組み合わせが希少です。昭和36年(1961年)に指定されました。
基本データ
| 名称 | 室生寺納経塔 |
|---|---|
| 所在地 | 奈良県宇陀市室生区室生 |
| 指定区分 | 重要文化財 |
| 指定年 | 昭和36年(1961年)重要文化財指定 |
| 員数 | 1基 |
| 寸法 | 石造2重塔、壇正積基壇付(高さは公表されていない) |
| 所有者 | 室生寺 |
| 公開状況 | 如意峰の上にあり通常の拝観順路に含まれない |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース 室生寺納経塔
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/2766
- 宇陀市 国指定文化財
- https://www.city.uda.lg.jp/soshiki/41/1075.html
- 奈良県 室生寺ルート
- https://www.pref.nara.lg.jp/masumasu/2490.html
- 奈良県観光公式サイト あをによし なら旅ネット 室生寺
- https://yamatoji.nara-kankou.or.jp/01shaji/02tera/03east_area/muroji/
最終更新日: 2026.09.13